|公開日 2023.05.01

【問 1】 AとBとの間で、5か月後に実施される試験(以下この問において「本件試験」という)にBが合格したときにはA所有の甲建物をBに贈与する旨を書面で約した(以下この問において「本件約定」という)。この場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 本件約定は、停止条件付贈与契約である。

 本件約定の後、Aの放火により甲建物が滅失し、その後にBが本件試験に合格した場合、AはBに対して損害賠償責任を負う。

 Bは、本件試験に合格したときは、本件約定の時点にさかのぼって甲建物の所有権を取得する。

 本件約定の時点でAに意思能力がなかった場合、Bは、本件試験に合格しても、本件約定に基づき甲建物の所有権を取得することはできない。(平成30年問3)

解説&正解
【1】[停止条件の意味]
 「A所有の甲建物をBに贈与する」というのは贈与契約で、「Bが合格したときには」という条件がついている。この条件の性質は、合格という事実が成就するまで、贈与契約の効力を停止している停止条件なので、本件約定は、まさに「停止条件付贈与契約」である。本肢は正しい。

【2】[条件付権利の侵害]*128条
 条件の成否未定の間であっても、条件成就によって生じる相手方の利益を侵害してはならないのは当然で、条件付権利の侵害は不法行為を構成する。
 つまり、Aの「放火により甲建物が滅失」した行為は、条件付権利を侵害した不法行為となるので、Aは、条件が成就したBに対して不法行為に基づく損害賠償責任を負わなければならない。本肢は正しい。

【3】[条件成就の効果]*127条1項
 停止条件付法律行為は、原則として、条件が成就した時から効力を生じるのであって、契約のはじめにさかのぼって効力を生じるという遡及効はない
 Bが「約定の時点にさかのぼって……所有権を取得する」ことはできないのである。
 本肢は誤り。

【4】[意思無能力者の契約]*3条の2
 法律行為(契約など)の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は無効である。
 贈与者Aは「約定の時点で意思能力がなかった」のであるから、この停止条件付贈与契約は、はじめから無効で効力を有しない。したがって、Bが試験に合格しても「本件約定に基づいて甲建物の所有権を取得することはできない」のである。本肢は正しい。

[正解] 3



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