|公開日 2023.05.01

【問 1】 AがBから事業のために 1,000万円を借り入れている場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 AとBが婚姻した場合、AのBに対する借入金債務は混同により消滅する。

 AがCと養子縁組をした場合、CはAのBに対する借入金債務についてAと連帯してその責任を負う。

 Aが死亡し、相続人であるDとEにおいて、Aの唯一の資産である不動産をDが相続する旨の遺産分割協議が成立した場合、相続債務につき特に定めがなくても、Bに対する借入金返済債務のすべてをDが相続することになる。

 Aが死亡し、唯一の相続人であるFが相続の単純承認をすると、FがBに対する借入金債務の存在を知らなかったとしても、Fは当該借入金債務を相続する。
(平成23年問10)

解説&正解
【1】[婚姻と混同*520条/762条1項
 債権と債務が同一人に帰属したときは、債権を成立させる意味がないため混同によって債権は消滅する。しかし、婚姻したからといって当然に夫婦間に混同が生じるわけではない。
 夫婦の一方が婚姻前から有する財産(Bの 1,000万円の金銭債権)は特有財産とされており、A・Bの婚姻により、Aの借入金債務が消滅することはない。本肢は誤り。

【2】[養子縁組の効果]*809条
 養子は、養子縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得する。しかし、Cは縁組によって嫡出子の身分を取得したからといって、それだけで、養親Aの借入金債務について連帯責任を負うことはない。本肢は誤り。

【3】[債務の共同相続]*899条
 共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。つまり債務についても相続することになる。
 遺産分割協議により、Dが唯一の資産である不動産を相続した場合は、「相続債務につき特に定めがなくても」、Aの借入金返済債務は、DとEがその相続分に応じて負担するのである。本肢は誤り。

【4】[単純承認の効力]*920条
 相続人は、単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継する。
 したがって、Fは、借入金債務の存在の知・不知にかかわらず、つまり「知らなかったとしても」借入金債務を相続することとなる。本肢は正しい。

[正解] 4



【問 2】 Aが死亡し、相続人がBとCの2名であった場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 ①BがAの配偶者でCがAの子である場合と、②BとCがいずれもAの子である場合とでは、Bの法定相続分は①の方が大きい。

 Aの死亡後、いずれもAの子であるBとCとの間の遺産分割協議が成立しないうちにBが死亡したときは、Bに配偶者Dと子Eがいる場合であっても、Aの遺産分割についてはEが代襲相続人として分割協議を行う。

 遺産分割協議が成立するまでの間に遺産である不動産から賃料債権が生じていて、BとCがその相続分に応じて当該賃料債権を分割単独債権として確定的に取得している場合、遺産分割協議で当該不動産をBが取得することになっても、Cが既に取得した賃料債権につき清算する必要はない。

 Bが自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所に対して、相続によって得た財産の限度においてのみAの債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して相続を承認する限定承認をする旨を申述すれば、Cも限定承認をする旨を申述したとみなされる。 (平成29年問6)

解説&正解
【1】[相続分|配偶者と子]*900条1号
 ①配偶者Bと子Cが相続人のときは相続分はそれぞれ1/2だから、Bが1/2、Cも1/2 となる。
 ②子Bと子Cが相続人のときは相続分は均等だから、B1/2、C1/2 となる。
 以上より、Bの相続分は、①②ともに1/2であり、「①の方が大きい」は誤り。

【2】[代襲相続に該当する事由]
 相続人B・Cによる遺産分割協議が成立しないうちにBが死亡しても、その子Eが、Bを代襲相続することはない。代襲相続は、Bが、相続の開始以前に死亡したときなどに生じるからである。
 Eは、Bの「代襲相続人として」ではなく、Bの相続人として遺産分割協議を行うのである。本肢は誤り。

【3】[遺産分割の効力]*最判平17.9.8
 判例は「遺産である賃貸不動産により生じる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人が相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものであるから、後にされた遺産分割の影響を受けない」としている。
 Cが既に取得した賃料債権を清算する必要はないのである。本肢は正しい。

【4】[共同相続人の限定承認]*923条
 相続人が数人あるときは、限定承認は、その共同相続人全員の共同でなければすることができない。Bが家庭裁判所に限定承認を申述したからといって、Cが「限定承認をする旨を申述したとみなされる」ことはない。本肢は誤り。

[正解] 3



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