|公開日 2023.05.01

【問 1】 成年後見人が、成年被後見人を代理して行う次に掲げる法律行為のうち、民法の規定によれば、家庭裁判所の許可を得なければ代理して行うことができないものはどれか。

 成年被後見人が所有する乗用車の第三者への売却

 成年被後見人が所有する成年被後見人の居住の用に供する建物への第三者の抵当権の設定

 成年被後見人が所有するオフィスビルへの第三者の抵当権の設定

 成年被後見人が所有する倉庫についての第三者との賃貸借契約の解除(令和3年12月問3)

解説&正解
【問 1】[居住用不動産の処分]*859条の3
 成年被後見人の「財産上の行為」は、原則として成年後見人が代理して行う。
 ただし[選択肢2]のように、成年後見人が、成年被後見人に代わって、「成年被後見人の居住の用に供する建物」または敷地について、売却・賃貸借・抵当権の設定などをするには、家庭裁判所の許可が必要とされる(許可がなければ無効
 これは、成年後見人が勝手な処分をして、成年被後見人の居住の利益が侵害されないためである。
 [選択肢1・3・4]については、家庭裁判所の許可は不要である。

[正解] 2



【問 2】 制限行為能力者に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 成年後見人は、後見監督人がいる場合には、後見監督人の同意を得なければ、成年被後見人の法律行為を取り消すことができない。

 相続の放棄は相手方のない単独行為であるから、成年後見人が成年被後見人に代わってこれを行っても、利益相反行為となることはない。

 成年後見人は成年被後見人の法定代理人である一方、保佐人は被保佐人の行為に対する同意権と取消権を有するが、代理権が付与されることはない。

 令和4年4月1日からは、成年年齢が18歳となったため、18歳の者は、年齢を理由とする後見人の欠格事由に該当しない。(令和4年問3)

解説&正解
【1】[後見監督人の職務]*851条
 成年後見人は、後見監督人がいる場合でもその同意を得ることなく、成年被後見人の法律行為を取り消すことができる。後見監督人の職務は、主に成年後見人の事務を監督することであって、個々の取消しについていちいち同意を得る必要はない。本肢は誤り。

【2】[成年後見人による相続の放棄]
 成年後見人が成年被後見人に代わって相続放棄をすることは、利益相反行為となる場合がある。単独行為かどうかは無関係。本肢は誤り。

【3】[代理権を付与する旨の審判]
 家庭裁判所は、保佐人など一定の者の請求によって、被保佐人のために特定の法律行為について、保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができる(876条の4)。本肢は誤り。

【4】[後見人の欠格事由]*847条
 未成年者や破産者など、民法で定める一定の者は、後見人となることができない。
 そのため、18歳の成年者は、それだけでは「年齢を理由とする後見人の欠格事由に該当しない」。本肢は正しい。

[正解] 4



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