|公開日 2023.05.01

【問 1】 遺産分割に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 被相続人は、遺言によって遺産分割を禁止することはできず、共同相続人は、遺産分割協議によって遺産の全部又は一部の分割をすることができる。

 共同相続人は、既に成立している遺産分割協議につき、その全部又は一部を全員の合意により解除した上、改めて遺産分割協議を成立させることができる。

 遺産に属する預貯金債権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割され、共同相続人は、その持分に応じて、単独で預貯金債権に関する権利を行使することができる。

 遺産の分割は、共同相続人の遺産分割協議が成立した時から効力を生ずるが、第三者の権利を害することはできない。(令和1年問6)

解説&正解
【1】[遺産分割の禁止]*908条
 被相続人は遺言で、①遺産分割の方法を定めたり、②これを定めることを第三者に委託したり、あるいは、③相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産分割を禁じることができる。
 「遺言によって遺産分割を禁止することはできず」との記述は、誤り。

【2】[分割協議の合意解除]*最判平2.9.27
 共同相続人は、既に成立している遺産分割協議について、その全部または一部を「全員の合意により解除」した上で、改めて遺産分割協議を成立させることができる。
 全員の合意に基づいて遺産分割協議をいったん解除し再度協議することに、民法上問題はない。本肢は正しい。

【3】[預貯金債権は共有]*最判平28.12.19
 遺産に属する「預貯金債権」などの金銭債権は、相続開始と同時に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割協議が成立するまでは相続人の共有に属する。「単独で預貯金債権に関する権利を行使すること」はできない。預貯金債権などの金銭債権は、遺産分割を経て取得することとなるのである。
 これは、被相続人の財産をできる限り幅広く共有とすることにより、共同相続人間の公平を図ったのである。本肢は誤り。

【4】[遺産分割の遡及効*909条
 遺産分割は、相続開始の時にさかのぼって効力を生じる。「遺産分割協議が成立した時から効力を生ずる」のではない。本肢は誤り。
 なお「第三者の権利を害することはできない」との記述は正しい。

[正解] 2



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