|公開日 2017.6.18

【平成10年 問5】の問題です。

【問 題】 Aは、Bから借金をし、Bの債権を担保するためにA所有の土地及びその上の建物に抵当権を設定した。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。

 Bの抵当権の実行により、Cが建物、Dが土地を競落した場合、Dは、Cに対して土地の明渡しを請求することはできない。

 Aは、抵当権設定の登記をした後も建物をEに賃貸することができるが、Bに損害を及ぼすことなく期間3年以内の賃貸借でその登記があったとしても、Eは、建物の競落人に対して賃借権を対抗することができない。

 Bは、第三者Fから借金をした場合、Aに対する抵当権をもって、さらにFの債権のための担保とすることができる。

 Aから抵当権付きの土地及び建物を買い取ったGは、Bの抵当権の実行に対しては、自ら競落する以外にそれらの所有権を保持する方法はない。


[解説&正解]

【選択肢1】
(Aは、Bから借金をし、Bの債権を担保するためにA所有の土地及びその上の建物に抵当権を設定した。)このとき、Bの抵当権の実行により、Cが建物、Dが土地を競落した場合、Dは、Cに対して土地の明渡しを請求することはできない。

(解 説)
土地と建物に同時に抵当権が設定され(共同抵当)、競売の結果、土地と建物が別人の所有となった場合には、建物のために法定地上権が成立します。
つまり、建物の競落人Cは、建物のために法定地上権を有しますから、土地の競落人Dは、Cに対して土地の明渡しを請求することはできないのです。
本肢は正しい記述です。

※ 法定地上権はどういう趣旨の制度なのか、確認しておきましょう。

[テーマ] 法定地上権の成立
[条 文] 388条
[判 例] 最判昭37.9.4

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【選択肢2】
(Aは、Bから借金をし、Bの債権を担保するためにA所有の土地及びその上の建物に抵当権を設定した。)この場合、Aは、抵当権設定の登記をした後も建物をEに賃貸することができるが、Bに損害を及ぼすことなく期間3年以内の賃貸借でその登記があったとしても、Eは、建物の競落人に対して賃借権を対抗することができない。

(解 説)
正しい記述です。
抵当権設定登記後の抵当建物の賃借人は、期間3年以内の賃貸借で「その登記があった」としても、抵当建物の競落人に対して賃借権を対抗することはできません。

※ 期間3年以内の建物賃貸借(短期賃貸借)は、抵当権の競落人にも対抗できるとしていた短期賃貸借の保護制度は廃止され(平成15年)、177条の対抗要件の原則どおり、抵当権設定登記後の賃借権は、登記の有無、期間の長短に関係なく、抵当権者に対抗できなくなりました。
ただし新法では、建物賃借人に6ヵ月の明渡し猶予期間が認められています(395条1項)。

*本問は、この法改正前の平成10年の出題ですので、問題文を変更しました。

[テーマ] 抵当権設定後の短期賃貸借は保護されるか

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【選択肢3】
(Aは、Bから借金をし、Bの債権を担保するためにA所有の土地及びその上の建物に抵当権を設定した。)このとき、Bは、第三者Fから借金をした場合、Aに対する抵当権をもって、さらにFの債権のための担保とすることができる。

(解 説)
正しい記述です。
抵当権者Bは、第三者Fから借金をした場合、Fの債権のために自己の抵当権を担保とすることができます。これを転抵当といいます。

※ 転抵当というのは、抵当権とそれを担保する被担保債権を切り離して、抵当権の上に抵当権を設定するもので、抵当権者が、期限前に債権を回収するときの手段として利用されます。

[テーマ] 抵当権の処分──転抵当
[条 文] 376条1項

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【選択肢4】
(Aは、Bから借金をし、Bの債権を担保するためにA所有の土地及びその上の建物に抵当権を設定した。)この場合、Aから抵当権付きの土地及び建物を買い取ったGは、Bの抵当権の実行に対しては、自ら競落する以外にそれらの所有権を保持する方法はない。

(解 説)
抵当不動産の第三取得者Gが、その所有権を保全する方法には、
① 「自ら競落する」以外に、
② 代価弁済
③ 抵当権消滅請求
④ 弁済による法定代位、などがあります。
したがって、誤った記述です。

[テーマ] 第三取得者の所有権保持
[条 文] 378条、379条、500条

以上より、正解は[4]

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[しっかり読んでおこう重要条文]

*376条(抵当権の処分)
1 抵当権者は、その抵当権を他の債権の担保とし、または同一の債務者に対する他の債権者の利益のためにその抵当権若しくはその順位を譲渡し、あるいは放棄することができる。

*378条(代価弁済)
抵当不動産について所有権または地上権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済したときは、抵当権は、その第三者のために消滅する。

*379条(抵当権消滅請求)
抵当不動産の第三取得者は、383条に定める手続きにより、抵当権消滅請求をすることができる。

*388条(法定地上権)
土地およびその上に存する建物が同一の所有者に属する場合に、その土地または建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について地上権が設定されたものとみなす

*500条(弁済による法定代位)
弁済をするについて正当な利益を有する者は、弁済によって当然に債権者に代位する。



(この項終わり)