|公開日 2017.6.17

【平成13年 問3】の問題です。

【問 題】 A所有の甲地は他の土地に囲まれて公道に通じない土地で、Aが所有していない回りの土地を通る通路を開設しなければ公道に出ることができない。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。

 Aは、公道に至るための他の土地の所有者に代償を支払えば、自己の意思のみによって通行の場所及び方法を定め、公道に至るための他の土地に通路を開設することができる。

 Bが、Aから甲地を譲り受けた場合には、Bは、所有権移転の登記を完了しないと、公道に至るための他の土地に通路を開設することができない。

 甲地が、A及びCの共有地の分割によって袋地となったときには、Aは、Cが所有する分割後の残余地にしか通路を開設することができない。

 甲地が、D所有の土地を分筆してAに売却した結果、袋地になった場合で、Dが、甲地の譲渡後、その残余地である乙地をEに売却したときには、Aは乙地に通路を開設することができない。


[解説&正解]
平成13年の民法は、[問1]が共有、[問3]が相隣関係という予想もしない出題でした。資格予備校や受験生の裏をかかれた感じですね。

【選択肢1】
(A所有の甲地は他の土地に囲まれて公道に通じない土地で、Aが所有していない回りの土地を通る通路を開設しなければ公道に出ることができない。この場合)Aは、公道に至るための他の土地の所有者に代償を支払えば、自己の意思のみによって通行の場所及び方法を定め、公道に至るための他の土地に通路を開設することができる。

(解 説)
Aは、代償を支払うからといって「自己の意思のみ」によって道路を開設することはできません。

他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行し、また必要があるときは通路を開設(自家用車が通れるようにするなど)することができます。
ただし、通行の場所・方法は、
① 通行権者に必要な範囲で、かつ、
② 他の土地のために最も損害の少ないもの
でなければなりません。
本肢は誤った記述です。

※ 相隣関係の趣旨は、隣近所が互いに平穏に生活できるよう配慮した規定ですから、道路関係で「自己の意思のみ」で決定すること自体、許容できせんね。

[テーマ] 土地の通行権および通路開設
[条 文] 210条、211条

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【選択肢2】
(A所有の甲地は他の土地に囲まれて公道に通じない土地で、Aが所有していない回りの土地を通る通路を開設しなければ公道に出ることができない。この場合)Bが、Aから甲地を譲り受けたときには、Bは、所有権移転の登記を完了しないと、公道に至るための他の土地に通路を開設することができない。

(解 説)
甲地を譲り受けたBは、所有権移転登記をしなくても、通路を開設できます。

相隣関係の規定は、隣り合う不動産相互の利用調整を目的とするものですから、不動産取引の安全保護を目的とする登記制度とは関係ありません。
公道に通じない土地の所有権を取得した者は、その登記がなくても、他の土地の所有者・利用権者に対して、通行権を主張し通路を開設することができます。
本肢は誤った記述です。

[テーマ] 通行権と登記

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【選択肢3】
(A所有の甲地は他の土地に囲まれて公道に通じない土地で、Aが所有していない回りの土地を通る通路を開設しなければ公道に出ることができない。この場合)甲地が、A及びCの共有地の分割によって袋地となったときには、Aは、Cが所有する分割後の残余地にしか通路を開設することができない。

(解 説)
共有地の分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者Aは、公道に出るため、他の分割者Cの残余地のみを通行し、通路を開設することができます。
正しい記述です。

※ この場合、AはCに償金を支払う必要はありません。

[テーマ] 分割により生じた土地
[条 文] 213条

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【選択肢4】
(A所有の甲地は他の土地に囲まれて公道に通じない土地で、Aが所有していない回りの土地を通る通路を開設しなければ公道に出ることができない。この場合)甲地が、D所有の土地を分筆してAに売却した結果、袋地になった場合で、Dが、甲地の譲渡後、その残余地である乙地をEに売却したときには、Aは乙地に通路を開設することができない。

(解 説)
残余地の乙地がEに売却されても、Aは、乙地に通路を開設することができます。

分筆や一部譲渡によって公道に通じない土地ができた場合、その所有者は、他の分割者または譲渡人の残余地のみを通行し、道路を開設できるのですが、これらの権利は、残余地が譲渡されるなど特定承継があった場合でも存続します。

相隣関係の規定は、対人的な関係を定めたものではなく、隣地間の利用調整を目的としたものですから、通行権・道路開設権も、土地に付着した物権的権利の性質を有しており、同時にまた、残余地自体に付着した物権的負担なのです。
本肢は誤った記述です。

[テーマ] 一部譲渡による通行権
[条 文] 213条

以上より、正解は[3]

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[しっかり読んでおこう重要条文]

*210条(公道に至るための他の土地の通行権)
1 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。

*211条(通行の場所・方法)
1 前条の場合には、通行の場所および方法は、同条の規定による通行権を有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
2 前条の規定による通行権を有する者は、必要があるときは、通路を開設することができる。

*213条(分割による通行権)
1 分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができる。この場合においては、償金を支払うことを要しない。
2 前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。



(この項終わり)