|公開日 2017.6.16

【平成12年 問2】の問題です。

【問 題】 Aは、BのCに対する金銭債務を担保するため、A所有の土地に抵当権を設定し、物上保証人となった。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。

 Aは、この金銭債務の消滅時効を援用することができる。

 Aが、Cに対し、この金銭債務が存在することを時効期間の経過前に承認した場合、当該債務の消滅時効の中断の効力が生じる。

 Bが、Cに対し、この金銭債務が存在することを時効期間の経過前に承認した場合、Aは、当該債務の消滅時効の中断の効力を否定することができない。

 CからAに対する不動産競売の申立てがされた場合、競売開始決定の正本がBに送達された時に、この金銭債務の消滅時効の中断の効力が生じる。


[解説&正解]
本問は、単純な時効中断の問題ではなく、物上保証人がからんでいるので、その分少しだけ難しくなっています。物上保証人は物権・債権を通じて出てきますので、ここで正確に理解しておきましょう。

物上保証人というのは、他人の債務のために自分の財産の上に抵当権などの物的担保を負担する者をいいます。
債務が弁済されないときは抵当権が実行され、自分の財産が競売されるという点で責任は負いますが、自分で債務を負担するものではありませんから(債務なき責任)、債権者は物上保証人に対して、訴えを起こしたり、その一般財産に対して執行することはできず、この点で普通の保証人とは異なります。

本問を図示するとこうなります。

消滅時効

【選択肢1】
(Aは、BのCに対する金銭債務を担保するため、A所有の土地に抵当権を設定し、物上保証人となった。)この場合、Aは、この金銭債務の消滅時効を援用することができる。

(解 説)
物上保証人Aは、Bの金銭債務の消滅時効を援用することができます。

時効を援用することができる援用権者は、時効により直接利益を受ける者およびその承継人です。
物上保証人Aは、Cの金銭債権の消滅時効が完成すれば抵当権の実行を免れることになるため、時効により直接利益を受ける者といえるのです。
したがって、正しい記述です。

[テーマ] 時効の援用権者──物上保証人
[判 例] 最判昭42.10.27

………………………………………

【選択肢2】
(Aは、BのCに対する金銭債務を担保するため、A所有の土地に抵当権を設定し、物上保証人となった。)この場合、Aが、Cに対し、この金銭債務が存在することを時効期間の経過前に承認した場合、当該債務の消滅時効の中断の効力が生じる。

(解 説)
物上保証人Aが、Bの金銭債務を承認しても、時効中断の効力は生じません。
判例は、もともと債務を負担しない物上保証人が債務を承認しても、中断事由としての『承認』にはならないとしています。

物上保証は自分で債務を負担するものではない、債務なき責任だということを思い出しましょう。
本肢は誤った記述です。

[テーマ] 物上保証人の債務承認
[条 文] 147条3号
[判 例] 最判昭62.9.3

………………………………………

【選択肢3】
(Aは、BのCに対する金銭債務を担保するため、A所有の土地に抵当権を設定し、物上保証人となった。)この場合、Bが、Cに対し、この金銭債務が存在することを時効期間の経過前に承認した場合、Aは、当該債務の消滅時効の中断の効力を否定することができない。

(解 説)
主たる債務者Bが債務を承認すれば、消滅時効は中断しますが、この場合、物上保証人Aも消滅時効の中断を認めなければなりません(中断の効力を否定することはできない)。

連帯債務のところで学習するのですが、主たる債務者に対する履行の請求『その他の事由』による時効の中断は、その保証人に対しても効力を生じますが、『その他の事由』には、債務者による債務承認(債務の存在を認めること)も含んでいるのです。
本肢は正しい記述です。

[テーマ] 主たる債務者の債務承認
[条 文] 457条1項
[判 例] 最判平7.3.10

………………………………………

【選択肢4】
(Aは、BのCに対する金銭債務を担保するため、A所有の土地に抵当権を設定し、物上保証人となった。)この場合、CからAに対する不動産競売の申立てがされた場合、競売開始決定の正本がBに送達された時に、この金銭債務の消滅時効の中断の効力が生じる。

(解 説)
ここは難しいですね。

判例は、物上保証人Aに対して不動産競売の申立てがなされた場合、Bの金銭債務の時効中断の効力は、民法155条が時効の利益を受ける者に対する通知を要求した趣旨から考えて、「競売開始決定の正本が(時効利益を受ける)Bに送達された時」に生じると解しています。

物上保証人に対する「不動産競売の申立て」がなされた時でもなく、「競売開始決定による差押え」の効力が生じた時でもなく、また債権者が競売の申立てをした時にさかのぼって時効中断の効力が生じるのでもありません。
本肢は正しい記述です。

[テーマ] 物上保証人に対する競売申立
[条 文] 155条
[判 例] 最判平8.7.12

以上より、正解は[2]

………………………………………

[しっかり読んでおこう重要条文]

*147条(時効の中断事由)
時効は、次に掲げる事由によって中断する。
一 請求
二 差押え、仮差押えまたは仮処分
三 承認

*155条(通知)
差押え、仮差押えおよび仮処分は、時効の利益を受ける者に対してしないときは、その者に通知をした後でなければ、時効の中断の効力を生じない。

*457条(主たる債務者について生じた事由の効力)
1 主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の中断は、保証人に対しても、その効力を生ずる。



(この項終わり)