|公開日 2017.5.30

【平成22年 問1】の問題です。
本問は基本中の基本問題ですから、必ず正解する必要があります。
「特選民法過去問」でもとりあげています。

【問 題】 制限行為能力者に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

 土地を売却すると、土地の管理義務を免れることになるので、婚姻していない未成年者が土地を売却するに当たっては、その法定代理人の同意は必要ない。

 成年後見人が、成年被後見人に代わって、成年被後見人が居住している建物を売却するためには、家庭裁判所の許可が必要である。

 被保佐人については、不動産を売却する場合だけではなく、日用品を購入する場合も、保佐人の同意が必要である。

 被補助人が法律行為を行うためには、常に補助人の同意が必要である。


[解説&正解]

【選択肢1】 
土地を売却すると、土地の管理義務を免れることになるので、婚姻していない未成年者が土地を売却するに当たっては、その法定代理人の同意は必要ない。

(解 説)
未成年者の行為能力を問う問題です。
未成年者が法律行為をするには、保護者である法定代理人の同意を得なければなりません(5条1項)。
これが原則です。まずここをシッカリ押さえておきましょう。

そして例外として、「ただし、単に権利を得、または義務を免れる法律行為」については、同意を得ずに単独ですることができます(同条ただし書き)。
このような行為は未成年者には不利益とはならないので、とくに保護する必要はなく一人でやらせても問題はないわけです。

さて本肢では「土地を売却すると、土地の管理義務を免れることになる」といっていますから、あたかも例外行為の「義務を免れる法律行為」に該当するように思われますね。
はたして単純に「義務を免れる法律行為」といえるでしょうか。

たしかに土地を売却すると「土地の管理義務を免れることになる」のですが、しかし同時に、重要な土地所有権を失うことにもなるわけですから、単純に「義務を免れる法律行為」とはいえません。
つまり、未成年者が単独でできる法律行為ではないのです。

婚姻していない未成年者が「土地を売却する」などの法律行為をするには、原則どおり法定代理人の同意が必要ですから、「同意は必要ない」という記述は誤りです。

[テーマ] 未成年者の行為能力
[条 文] 5条1項

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【選択肢2】 
成年後見人が、成年被後見人に代わって、成年被後見人が居住している建物を売却するためには、家庭裁判所の許可が必要である。

(解 説)
成年被後見人は、精神上の障害により事理を弁識する能力(意思能力)を欠く常況にある者ですから、日用品の購入その他日常生活に関する行為を除いて、原則として単独で法律行為を行うことはできず、保護者である成年後見人が代理して行うことになります(859条1項)。

つまり成年被後見人が土地建物の売却や購入を行う場合などには、成年後見人が代理して行うわけです。

ただし成年後見人が代理して、「成年被後見人が居住している」建物または敷地について、売却や賃貸をしたり、抵当権の設定などの処分をする場合には、とくに家庭裁判所の許可が必要とされています(859条の3)。

これは、成年後見人が勝手なことをして、成年被後見人の居住の利益を侵害することがないようにするためなのです。
以上より、本肢は正しい記述です。

[テーマ] 成年被後見人の居住用不動産の処分
[条 文] 859条の3

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【選択肢3】 
被保佐人については、不動産を売却する場合だけではなく、日用品を購入する場合も、保佐人の同意が必要である。

(解 説)
被保佐人の行為能力を問う問題です。

被保佐人が「不動産を売却する」など一定の行為をする場合には、原則として保佐人の同意が必要とされます。
ただし成年被後見人と同じく、例外的に日用品の購入その他日常生活に関する行為については、保佐人の同意は不要で、単独ですることができます。
よって、誤りです。

[テーマ] 被保佐人の行為能力──保佐人の同意を要する行為
[条 文] 13条、9条ただし書

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【選択肢4】 
被補助人が法律行為を行うためには、常に補助人の同意が必要である。

(解 説)
被補助人の行為能力を問う問題です。

被補助人は、精神上の障害により事理を弁識する能力(意思能力)が「不十分」な者ですが、制限行為能力者の中では比較的判断能力が備わっています(15条1項)。

したがって、被補助人が法律行為をする場合でも「常に補助人の同意が必要である」わけではなく、「特定の法律行為」をする場合に限って、補助人の同意を得なければならない旨の審判が必要とされるのです。
同意が必要な行為は、家庭裁判所の審判で決まる特定の法律行為のみに限られますので、本肢の記述は誤りです。

[テーマ] 被補助人の行為能力──補助人の同意を要する旨の審判
[条 文] 17条1項

以上より、正解は[2]

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[しっかり読んでおこう重要条文]

*5条(未成年者の法律行為)
1 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。
ただし、単に権利を得、または義務を免れる法律行為については、この限りでない。
2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる

*13条(保佐人の同意を要する行為等)
1 被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第9条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
三 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
(1号~2号、4号以下略)

*9条(成年被後見人の法律行為)
成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。

*17条(補助人の同意を要する旨の審判等)
1 家庭裁判所は、一定の者または補助人あるいは補助監督人の請求により、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。

*859条(財産の管理および代表)
1 後見人は、被後見人の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為について被後見人を代表(代理)する

*859条の3(成年被後見人の居住用不動産の処分についての許可)
成年後見人は、成年被後見人に代わって、その居住の用に供する建物またはその敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除または抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。


(この項終わり)