|公開日 2017.5.30

【平成5年 問3】の問題です。

【問 題】 Aが、その所有地について、債権者Bの差押えを免れるため、Cと通謀して、登記名義をCに移転したところ、Cは、その土地をDに譲渡した。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。

 AC間の契約は無効であるから、Aは、Dが善意であっても、Dに対し所有権を主張することができる。

 Dが善意であっても、Bが善意であれば、Bは、Dに対し売買契約の無効を主張することができる。

 Dが善意であっても、Dが所有権移転の登記をしていないときは、Aは、Dに対し所有権を主張することができる。

 Dがその土地をEに譲渡した場合、Eは、Dの善意悪意にかかわらず、Eが善意であれば、Aに対し所有権を主張することができる。


[解説&正解]
Aが「Cと通謀して、登記名義をCに移転した」というのは虚偽表示ですから、AC間の契約は無効です。「通謀」とか「仮装譲渡」とあったら、ズバリ虚偽表示ですからね。

その後、善意の第三者Dが登場しました。
虚偽表示にかぎらず(詐欺や表見代理なども)、「本人」と「善意の第三者」は利害が対立するため大変問題となるところですから、試験にもよくでます。

問題文を図で示すとこうなります。

虚偽表示

虚偽表示ときたら、94条。
条文が思い浮かびましたか?

(94条)
1 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない

1項・2項とも非常に重要な条文で、これを覚えてないと話になりませんよ。
なお「債権者Bの差押えを免れるため」という虚偽表示の理由は関係ありません。

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【選択肢1】
(Aが、その所有地について、債権者Bの差押えを免れるため、Cと通謀して、登記名義をCに移転したところ、Cは、その土地をDに譲渡した。)この場合、AC間の契約は無効であるから、Aは、Dが善意であっても、Dに対し所有権を主張することができる。

(解 説)
虚偽表示による契約は、当事者AC間では無効ですが、善意の第三者Dに対する関係では、その無効を主張できません。
つまり、Aは、AC間の契約が無効であり登記名義人Cには所有権が移転していないということを、善意の第三者Dには主張できないのです。

こうして、虚偽表示に基づく登記により所有者らしい外観をしているCの土地を買った善意の第三者Dを保護したのです。これを取引の安全といいます。
結局のところ、Aは、Dの土地所有権取得を認めなくてはならないのです。
以上より、本肢は誤りです。

※ 結局、Aは土地を取り戻すことができませんから、Cに対して不法行為に基づく損害賠償請求をすることになります。

[テーマ] 虚偽表示と善意の第三者
[条 文] 94条2項

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【選択肢2】
(Aが、その所有地について、債権者Bの差押えを免れるため、Cと通謀して、登記名義をCに移転したところ、Cは、その土地をDに譲渡した。)この場合、Dが善意であっても、Bが善意であれば、Bは、Dに対し売買契約の無効を主張することができる。

(解 説)
判例は、善意の第三者Dに対しては、虚偽表示の当事者A・Cはもちろんのこと、他の第三者B(Aの債権者)も、虚偽表示による契約の無効を主張できないとしています。
本肢は誤りです。

[テーマ] 仮装譲渡人の債権者と善意の第三者
[判 例] 大判明37.12.26

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【選択肢3】
(Aが、その所有地について、債権者Bの差押えを免れるため、Cと通謀して、登記名義をCに移転したところ、Cは、その土地をDに譲渡した。)この場合、Dが善意であっても、Dが所有権移転の登記をしていないときは、Aは、Dに対し所有権を主張することができる。

(解 説)
虚偽表示による意思表示の無効は、善意の第三者には対抗できませんが、この場合、第三者には登記が必要か、というのがここでの問題です。
第三者Dは善意ですが、所有権の移転登記をしていません。

さて、「善意の第三者に対抗できない」という94条2項の趣旨は、当事者間の契約は、善意の第三者との関係では有効なものとして扱うということです。

つまり、善意の第三者Dとの関係では、所有権はA→C→Dへ有効に移転しており、したがって、Dは登記がなくても完全に所有権を取得します。
善意の第三者Dに登記は不要なのです。
以上より、本肢は誤り。

※ 虚偽表示の場合、Cの登記は、あたかもCに所有権があるかのような外形を表示しており、この「外形を信頼した善意の第三者」Dが保護されているのです。
もともと土地・建物などの不動産取引においては、虚偽の登記とは知らずに「真実の登記と信じて」取引しても保護されません。
これを「登記に公信力はない」といい、民法の大原則です。

ところが虚偽表示の場合には、善意の第三者を保護する94条2項の規定が、結果的に登記に公信力を与えたようになっており、取引上重要な機能を果たしています。

[テーマ] 善意の第三者が保護されるために登記を必要とするか
[判 例] 最判昭44.5.27

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【選択肢4】
(Aが、その所有地について、債権者Bの差押えを免れるため、Cと通謀して、登記名義をCに移転したところ、Cは、その土地をDに譲渡した。)この場合、Dがその土地をEに譲渡した場合、Eは、Dの善意悪意にかかわらず、Eが善意であれば、Aに対し所有権を主張することができる。

(解 説)
判例は、第三者からの転得者も、94条2項の『第三者』に含まれるとしており、善意であれば、善意の第三者として保護されるため、Aに対し所有権を主張することができます。

つまり、善意の転得者Eは、前主Dの善意・悪意にかかわらず、Aに対し所有権を主張することができるのです。
以上より、本肢は正しい記述です。

※ 判例は、善意の第三者からの転得者が悪意の場合でも、善意の第三者が介在した以上、善意者の地位を承継するから、虚偽表示による無効を対抗されることはなく保護されるとしています。取引の混乱を避けるためです。

[テーマ] 善意の転得者
[判 例] 最判昭45.7.24

以上より、正解は[4]

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[しっかり読んでおこう重要条文]

*94条(虚偽表示)
1 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない


(この項終わり)