|公開日 2017.5.29

【平成17年 問1】の問題です。

【問 題】 自己所有の土地を売却するAの売買契約の相手方に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 買主Bが被保佐人であり、保佐人の同意を得ずにAとの間で売買契約を締結した場合、当該売買契約は当初から無効である。

 買主Cが意思無能力者であった場合、Cは、Aとの間で締結した売買契約を取り消せば、当該契約を無効にできる。

 買主である団体Dが法律の規定に基づかずに成立した権利能力を有しない任意の団体であった場合、DがAとの間で売買契約を締結しても、当該土地の所有権はDに帰属しない。

 買主Eが婚姻している未成年者であり、当該婚姻がEの父母の一方の同意を得られないままになされたものである場合には、Eは未成年者であることを理由に当該売買契約を取り消すことができる。


[解説&正解]
Aが自分の土地を売る場合の相手方(買主)の行為能力に関する問題で、どのような買主かによって契約の効力に影響がでてきますので、その点の理解が問われています。

意思能力

【選択肢1】 
(自己所有の土地を売却するAの売買契約の買主について)、買主Bが被保佐人であり、保佐人の同意を得ずにAとの間で売買契約を締結した場合、当該売買契約は当初から無効である。

(解 説)
買主Bが被保佐人である場合で、保佐人の同意を得ずにAと土地の売買契約を締結したという問題です。

制限行為能力者である被保佐人は、土地や建物などの不動産を売買するというような重要な契約については単独ではできず、保護者である保佐人の同意が必要でしたね。
まず、ここをシッカリと押さえなければなりません。

そして、保佐人の同意を得ないで単独で(勝手に)契約したら、その契約を取り消すことができるというのが民法の規定です。
したがって、売買契約が「当初から無効である」という記述は誤りです。
取り消してはじめて無効となるのです。

「取り消すことができる」と「無効である」というのは、全く異なりますので注意してください。

[テーマ] 被保佐人の行為能力──不動産の取引行為
[条 文] 13条1項、4項

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【選択肢2】 
(自己所有の土地を売却するAの売買契約の買主について)、買主Cが意思無能力者であった場合、Cは、Aとの間で締結した売買契約を取り消せば、当該契約を無効にできる。

(解 説)
意思無能力者というのは、判断能力がまったくない状態の者をいいます。

意思無能力者の行った意思表示は、正常な判断能力に基づくものとはいえないので、その意思表示に法律上の効果を与える(有効とする)ことはできません。
わざわざ取消の意思表示をしなくても、はじめから無効なのです。

取り消してから無効になるのではないため、記述は誤りです。

[テーマ] 意思無能力者の意思表示
[判 例] 大判明38・5・11

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【選択肢3】 
(自己所有の土地を売却するAの売買契約の買主について)、買主である団体Dが法律の規定に基づかずに成立した権利能力を有しない任意の団体であった場合、DがAとの間で売買契約を締結しても、当該土地の所有権はDに帰属しない。

(解 説)
権利能力というのは、権利を取得したり、義務を負ったりすることのできる法的な資格のことですから、権利能力を有しない社団は、はじめから権利・義務の主体となる法的な資格がありません

したがって、そのような社団Dが土地の売買契約を締結しても、土地所有権がDに帰属することはありえないので、正しい記述です。

結局、権利能力なき社団の不動産については、社団を権利者とする登記をしたり、社団代表者の肩書を付した代表者個人名義の登記をすることは許されず、個人名義で登記するか、構成員全員の共有名義で登記するしかありません。

[テーマ] 権利能力なき社団
[条 文] 34条
[判 例] 最判昭47.6.2

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【選択肢4】 
(自己所有の土地を売却するAの売買契約の買主について)、買主Eが婚姻している未成年者であり、当該婚姻がEの父母の一方の同意を得られないままになされたものである場合には、Eは未成年者であることを理由に当該売買契約を取り消すことができる。

(解 説)
未成年者の婚姻には、父母の同意を必要とするのですが、その同意は、父母の一方だけで足ります。

したがって、未成年者Eの婚姻が「父母の一方の同意を得られないまま」であっても、Eは成年に達したものとみなされ、行為能力者として扱われます。
成年擬制ですね。

Eは、未成年者を理由に契約を取り消すことはできないのです。

[テーマ] 未成年者──婚姻による成年擬制
[条 文] 737条、753条

以上より、正解は[3]

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[しっかり読んでおこう重要条文]

*13条1項3号、4項(保佐人の同意を要する行為等)
1 被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない
三 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
4 保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意またはこれに代わる(家庭裁判所の)許可を得ないでしたものは、取り消すことができる

*34条(法人の能力)
法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。

*737条(未成年者の婚姻についての父母の同意)
1 未成年の子が婚姻をするには、父母の同意を得なければならない。
2 父母の一方が同意しないときは、他の一方の同意だけで足りる。

*753条(婚姻による成年擬制)
未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなす


(この項終わり)