|公開日 2017.6.26

【平成9年 問9】の問題です。

【問 題】 Aは、その所有する土地について、第三者の立入り防止等の土地の管理を、当該管理を業としていないBに対して委託した。この場合、民法の規定によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。

 Bが無償で本件管理を受託している場合は、「善意な管理者の注意」ではなく、「自己の財産におけると同一の注意」をもって事務を処理すれば足りる。

 Bが無償で本件管理を受託している場合は、Bだけでなく、Aも、いつでも本件管理委託契約を解除することができる。

 Bが有償で本件管理を受託している場合で、Bの責めに帰することができない事由により本件管理委託契約が履行の半途で終了したときは、Bは、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。

 Bが有償で本件管理を受託している場合で、Bが死亡したときは、本件管理委託契約は終了し、Bの相続人は、当該契約の受託者たる地位を承継しない。


[解説&正解]
土地管理の委託は準委任ですが、準委任には委任の規定が全面的に準用されるという点に注意しましょう(656条)。
宅建業法の頻出事項である「媒介」は、この準委任に該当します。

【選択肢1】
(Aは、その所有する土地について、第三者の立入り防止等の土地の管理を、当該管理を業としていないBに対して委託したが)Bが無償で本件管理を受託している場合は、「善意な管理者の注意」ではなく、「自己の財産におけると同一の注意」をもって事務を処理すれば足りる。

(解 説)
委任は対価の関係ではなく、委任者・受任者双方の信頼関係を基礎としていますので、報酬の有無に関係なく、受託者Bは、委任の本旨に従い善良な管理者の注意をもって受託事務を処理する義務があります(善管注意義務)。

「自己の財産におけると同一の注意」では足りません。
本肢は誤った記述です。

※ 歴史的に、委任は、委任者と受任者の人間的な信頼関係を基礎として成立してきており、対価の関係で成立してきたものではないという背景があります。

[テーマ] 受託者の善管注意義務
[条 文] 644条

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【選択肢2】
(Aは、その所有する土地について、第三者の立入り防止等の土地の管理を、当該管理を業としていないBに対して委託したが)Bが無償で本件管理を受託している場合は、Bだけでなく、Aも、いつでも本件管理委託契約を解除することができる。

(解 説)
委任(委託)は、報酬の有無に関係なく、当事者双方からいつでも解除できます。
委任は、双方の信頼関係を基礎としていますから、相手方を信頼できなくなったときは、いつでも解消できるようにしたのです。
本肢は正しい記述です。

[テーマ] 当事者双方の解除権
[条 文] 651条1項

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【選択肢3】
(Aは、その所有する土地について、第三者の立入り防止等の土地の管理を、当該管理を業としていないBに対して委託したが)Bが有償で本件管理を受託している場合で、Bの責めに帰することができない事由により本件管理委託契約が履行の半途で終了したときは、Bは、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。

(解 説)
有償の場合に、受託者Bの責めに帰することができない事由によって、委託事務が履行の中途で終了したときは、Bは、すでにした履行の割合に応じて報酬を請求できます。

委託の報酬は、仕事の完成に対してではなく、事務処理の労務そのものに対して支払われるものだからです。
本肢は正しい記述です。

[テーマ] 割合的報酬請求権
[条 文] 648条3項

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【選択肢4】
(Aは、その所有する土地について、第三者の立入り防止等の土地の管理を、当該管理を業としていないBに対して委託したが)Bが有償で本件管理を受託している場合で、Bが死亡したときは、本件管理委託契約は終了し、Bの相続人は、当該契約の受託者たる地位を承継しない。

(解 説)
受託者が死亡すれば、有償・無償に関係なく、委託契約は終了します。
受託者の相続人が、受託者たる地位を承継することはありません(委任の一身専属性)。
委託は、当事者双方の個人的な信頼関係を基礎としていますので、相続には適さないのです。
本肢は正しい記述です。

[テーマ] 委託の一身専属性
[条 文] 653条1号

以上より、正解は[1]

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[しっかり読んでおこう重要条文]

*644条(受任者の注意義務)
受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。

*648条(受任者の報酬)
1 受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない。
3 委任が受任者の責めに帰することができない事由によって履行の中途で終了したときは、受任者は、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。

*651条(委任の解除)
1 委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。
2 当事者の一方が相手方に不利な時期に委任の解除をしたときは、その当事者の一方は、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。

*653条(委任の終了事由)
委任は、次に掲げる事由によって終了する。
一 委任者、または受任者の死亡
二 委任者、または受任者が破産手続開始の決定を受けたこと
三 受任者が後見開始の審判を受けたこと

*656条(準委任)
この節の規定(委任)は、法律行為でない事務の委託について準用する。



(この項終わり)