|公開日 2017.6.14

【平成11年 問7】の問題です。

【問 題】 Aが、A所有の1棟の賃貸マンションについてBに賃料の徴収と小修繕の契約の代理をさせていたところ、Bが、そのマンションの1戸をAに無断で、Aの代理人として賃借人Cに売却した。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。

 Aは、意外に高価に売れたのでCから代金を貰いたいという場合、直接Cに対して追認することができる。

 Cは、直接Aに対して追認するかどうか相当の期間内に返事をくれるよう催告をすることができるが、Cがこの催告をするには、代金を用意しておく必要がある。

 Aが追認しない場合でも、CがBに代理権があると信じ、そう信じることについて正当な理由があるとき、Cは、直接Aに対して所有権移転登記の請求をすることができる。

 Cは、Bの行為が表見代理に該当する場合であっても、Aに対し所有権移転登記の請求をしないで、Bに対しCの受けた損害の賠償を請求できる場合がある。


[解説&正解]
代理人が、基本代理権である「賃料徴収と小修繕契約」の範囲を越えて、権限外の「売買契約」を締結したという表見代理の問題です。
そもそも、どうして表見代理制度が認められるのか、その趣旨は何なのかを理解しておかなければなりません。ここでは、権限外の行為の表見代理が成立する要件、その効果、無権代理との関係。これらがキチンと理解できているか確認しておきましょう。


【選択肢1】
(Aが、A所有の1棟の賃貸マンションについてBに賃料の徴収と小修繕の契約の代理をさせていたところ、Bが、そのマンションの1戸をAに無断で、Aの代理人として賃借人Cに売却した。)このとき、Aは、意外に高価に売れたのでCから代金を貰いたいという場合、直接Cに対して追認することができる。

(解 説)
権限外の行為の表見代理も無権代理の一種ですから、本人はこれを追認することができます。権限外の行為であっても、「意外に高価に売れた」というように、必ずしも本人に不利益になるとは限らないからです。
この追認は、①表見代理人B、または、②直接相手方C、のいずれに対して行ってもかまいません。
本肢は正しい記述です。

[テーマ] 表見代理の追認
[条 文] 113条

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【選択肢2】
(Aが、A所有の1棟の賃貸マンションについてBに賃料の徴収と小修繕の契約の代理をさせていたところ、Bが、そのマンションの1戸をAに無断で、Aの代理人として賃借人Cに売却した。)このとき、Cは、直接Aに対して追認するかどうか相当の期間内に返事をくれるよう催告をすることができるが、Cがこの催告をするには、代金を用意しておく必要がある。

(解 説)
代理権を有しない者が他人の代理人として契約した場合、相手方Cは、本人に対して、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができますが、この催告をするときに、代金まで用意しておく必要はありません。

もともと売買のような双務契約では、相手方に履行の請求をするときには、請求する方も弁済の提供(すぐに弁済できる状態にしておく)をしなければならないのですが、催告は追認するかどうかの確答を催促する行為であって履行の請求ではありませんから、「代金を用意」して弁済の提供をする必要はないのです。
本肢は誤った記述です。

[テーマ] 催告と弁済の提供
[条 文] 114条、493条

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【選択肢3】
(Aが、A所有の1棟の賃貸マンションについてBに賃料の徴収と小修繕の契約の代理をさせていたところ、Bが、そのマンションの1戸をAに無断で、Aの代理人として賃借人Cに売却した。)このとき、Aが追認しない場合でも、CがBに代理権があると信じ、そう信じることについて正当な理由があるとき、Cは、直接Aに対して所有権移転登記の請求をすることができる。

(解 説)
代理人Bが権限外の行為をした場合でも、相手方Cが、Bに「代理権があると信じ、そう信じることについて正当な理由があるとき」、つまり代理権の範囲について善意無過失であるときは、Cは表見代理の成立を主張することができます。

この場合は、真実の代理行為としての効果が生じますから、AC間に売買契約が成立し、Cは、直接本人Aに対して所有権移転登記を請求することができるのです。
本肢は正しい記述です。

[テーマ] 権限外の行為の表見代理
[条 文] 110条

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【選択肢4】
(Aが、A所有の1棟の賃貸マンションについてBに賃料の徴収と小修繕の契約の代理をさせていたところ、Bが、そのマンションの1戸をAに無断で、Aの代理人として賃借人Cに売却した。)このとき、Cは、Bの行為が表見代理に該当する場合であっても、Aに対し所有権移転登記の請求をしないで、Bに対しCの受けた損害の賠償を請求できる場合がある。

(解 説)
代理人Bの行為が表見代理に該当する場合でも、相手方Cは、本人Aに所有権移転登記の請求をしないで、Bに損害賠償を請求できる場合があります。

表見代理も無権代理の一種ですから、表見代理の規定と無権代理の規定が競合的に適用され、表見代理が成立する場合でも、相手方は善意無過失であれば、自由に、①本人に表見代理を主張することもできるし、これを主張しないで、②無権代理人の責任(履行責任または損害賠償責任)を追及することもできるというのが判例です。
本肢は正しい記述です。

[テーマ] 表見代理と無権代理の関係
[判 例] 最判昭62.7.7

以上より、正解は[2]

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[しっかり読んでおこう重要条文]

*110条(権限外の行為の表見代理)
代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者(=相手方)が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるとき(=善意無過失のとき)は、本人は、その行為について責任を負う。

*113条(無権代理)
1 代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。
2 追認またはその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。

*114条(無権代理の相手方の催告権)
(代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約)の場合において、相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合、本人がその期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなす。



(この項終わり)