|公開日 2017.6.27

【平成12年 問8】の問題。[特選民法過去問]でもとりあげています。

【問 題】 Aが、その過失によってB所有の建物を取り壊し、Bに対して不法行為による損害賠償債務を負担した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 Aの不法行為に関し、Bにも過失があった場合でも、Aから過失相殺の主張がなければ、裁判所は、賠償額の算定に当たって、賠償金額を減額することができない。

 不法行為がAの過失とCの過失による共同不法行為であった場合、Aの過失がCより軽微なときでも、Bは、Aに対して損害の全額について賠償を請求することができる。

 Bが、不法行為による損害と加害者を知った時から1年間、損害賠償請求権を行使しなければ、当該請求権は消滅時効により消滅する。

 Aの損害賠償債務は、BからAへ履行の請求があった時から履行遅滞となり、Bは、その時以後の遅延損害金を請求することができる。


[解説&正解]

【選択肢1】
(Aが、その過失によってB所有の建物を取り壊し、Bに対して不法行為による損害賠償債務を負担した。)このとき、Aの不法行為に関し、Bにも過失があった場合でも、Aから過失相殺の主張がなければ、裁判所は、賠償額の算定に当たって、賠償金額を減額することができない。

(解 説)
722条2項には「被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる」と規定されていますので、被害者Bにも過失があった場合、加害者Aから「過失相殺の主張」がなくても、裁判所はこれを考慮して(裁判所の自由裁量)、職権により賠償額を定めることができます。
つまり、賠償金額を減額することもできるわけです。
本肢は誤った記述です。

[テーマ] 過失相殺の主張がないとき
[条 文] 722条2項
[判 例] 最判昭34.11.26

………………………………………

【選択肢2】
(Aが、その過失によってB所有の建物を取り壊し、Bに対して不法行為による損害賠償債務を負担した場合において)不法行為がAの過失とCの過失による共同不法行為であった場合、Aの過失がCより軽微なときでも、Bは、Aに対して損害の全額について賠償を請求することができる。

(解 説)
共同不法行為の場合には、各不法行為者の過失の軽重に関係なく、各人が連帯して全損害を賠償する責任を負いますので、被害者Bは、Cより過失の軽微なAに対しても、損害全額について賠償請求することができます。
本肢は正しい記述です。

[テーマ] 共同不法行為責任の性質
[条 文] 719条1項

………………………………………

【選択肢3】
(Aが、その過失によってB所有の建物を取り壊し、Bに対して不法行為による損害賠償債務を負担した場合において)Bが、不法行為による損害と加害者を知った時から1年間、損害賠償請求権を行使しなければ、当該請求権は消滅時効により消滅する。

(解 説)
不法行為による損害賠償請求権は、被害者またはその法定代理人が、損害および加害者を知った時から3年間行使しないときは時効消滅しますので、「1年間」という記述が誤りです。

※ 不法行為の時から20年を経過したときも、同様。

[テーマ] 不法行為による損害賠償請求権の消滅時効
[条 文] 724条

………………………………………

【選択肢4】
(Aが、その過失によってB所有の建物を取り壊し、Bに対して不法行為による損害賠償債務を負担した場合に)Aの損害賠償債務は、BからAへ履行の請求があった時から履行遅滞となり、Bは、その時以後の遅延損害金を請求することができる。

(解 説)
不法行為に基づく損害賠償債務は、損害発生と同時に、つまり不法行為と同時に当然に履行遅滞となります。「履行の請求」があった時から履行遅滞となるのではありません。
被害者の利益を考慮しているのです。
したがって、被害者は、不法行為の成立時以後の遅延損害金も請求できることになります。
本肢は誤った記述です。

[テーマ] 不法行為債務の履行期限
[判 例] 最判昭37.9.4

以上より、正解は[2]

………………………………………

[しっかり読んでおこう重要条文]

*719条(共同不法行為者の責任)
1 数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。

*722条(過失相殺)
2 被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる

*724条(不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)
不法行為による損害賠償の請求権は、被害者(またはその法定代理人)が、損害および加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。
不法行為の時から20年を経過したときも、同様とする。



(この項終わり)