|公開日 2017.6.22

【平成6年 問9】の問題です。

【問 題】 Aは、BのCに対する1,000万円の債務について、保証人となる契約を、Cと締結した。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。

 CがAを保証人として指名したため、Aが保証人となった場合、Aが破産手続開始の決定を受けても、Cは、Bに対して保証人の変更を求めることはできない。

 BのCに対する債務が条件不成就のため成立しなかった場合、Aは、Cに対して保証債務を負わない。

 AC間の保証契約締結後、BC間の合意で債務が増額された場合、Aは、その増額部分についても、保証債務を負う。

 CがAに対して直接1,000万円の支払いを求めて来ても、BがCに600万円の債権を有しているときは、Aは、Bの債権による相殺を主張して400万円を支払えばよい。


[解説&正解]
保証債務に関する基本問題です。かならず正解するようにしましょう。

【選択肢1】
(Aは、BのCに対する1,000万円の債務について、保証人となる契約を、Cと締結した。この場合)CがAを保証人として指名したため、Aが保証人となったときは、Aが破産手続開始の決定を受けても、Cは、Bに対して保証人の変更を求めることはできない。

(解 説)
保証人となる資格にはとくに制限はなく、当事者間で自由に決めることができます。

しかし、法律や契約によって債務者が保証人を立てる義務を負う場合には、保証人は、
① 行為能力者であること
② 弁済資力を有すること
の2要件を備えなければならず、後で②の要件を欠いたときは、債権者は、債務者に対して保証人の変更を請求することができます。

しかし、債権者が保証人を指名した場合は、その保証人が破産手続開始の決定を受け弁済資力を失っても、債務者に対して保証人の変更を求めることはできません。
自ら指名したのですから、そのリスクを負うのは当然なのです。
本肢は正しい記述です。

※ ①の要件は、制限行為能力を理由に保証契約が取り消されることを防ぐためで、②は、保証債務が確実に弁済されるようにするためです。

[テーマ] 保証人の要件──債権者が指名した場合
[条 文] 450条

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【選択肢2】
(Aは、BのCに対する1,000万円の債務について、保証人となる契約を、Cと締結した。この場合)BのCに対する債務が条件不成就のため成立しなかったときは、Aは、Cに対して保証債務を負わない。

(解 説)
Bの主たる債務が、条件不成就のため成立しなかった場合には、Aの保証債務も成立しません。
保証債務は、主たる債務を担保することが目的ですから、必ず主たる債務の存在を前提としており、主たる債務が成立しなければ成立せず、主たる債務が消滅すれば消滅します。
これを保証債務の付従性といいます。
本肢は正しい記述です。

※ 同様に、主たる債務が錯誤を理由に無効だったり、詐欺を理由に取り消された場合にも、保証債務は成立しません。

[テーマ] 保証債務の付従性
[判 例] 大判大8.3.26

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【選択肢3】
(Aは、BのCに対する1,000万円の債務について、保証人となる契約を、Cと締結した。この場合)AC間の保証契約締結後、BC間の合意で債務が増額された場合、Aは、その増額部分についても、保証債務を負う。

(解 説)
保証契約の締結後に、債権者・債務者の「合意で債務が増額」されても、保証人は増額部分については保証債務を負いません。

もともと保証債務は、常に現在における主たる債務を担保するものですから、主たる債務の変更に応じてその内容を変更するのが原則です。
たとえば、主たる債務が損害賠償債務に変わったような場合など。

しかし、保証債務は、保証契約によってすでに定まっており、保証人の意思に基づかないで不利益を強いることは妥当ではありませんから、後で主たる債務の内容が加重されても、その効力は保証人には及びません。付従性もこの限りで制限されるのです。
本肢は誤った記述です。

[テーマ] 保証債務の範囲
[条 文] 448条

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【選択肢4】
(Aは、BのCに対する1,000万円の債務について、保証人となる契約を、Cと締結した。この場合)CがAに対して直接1,000万円の支払いを求めて来ても、BがCに600万円の債権を有しているときは、Aは、Bの債権による相殺を主張して400万円を支払えばよい。

(解 説)
保証人は、主たる債務者の有する債権による相殺をもって、債権者に対抗することができます。これは保証債務の付従性によるものです。

したがって保証人Aは、Bの反対債権600万円で相殺して、400万円だけ支払えばよいことになります。
正しい記述です。

※ 保証人が、主たる債務の有する同時履行の抗弁権を行使できることはもちろんで、買主の代金債務の保証人などに多い事例です。

[テーマ] 保証人の相殺援用
[条 文] 457条2項

以上より、正解は[3]

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[しっかり読んでおこう重要条文]

*448条(保証人の負担が主たる債務より重い場合)
保証人の負担が債務の目的または態様において主たる債務より重いときは、これを主たる債務の限度に減縮する。

*450条(保証人の要件)
1 債務者が保証人を立てる義務を負う場合には、その保証人は、次に掲げる要件を具備する者でなければならない。
一 行為能力者であること
二 弁済をする資力を有すること
2 保証人が前項第2号に掲げる要件を欠くに至ったときは、債権者は、同項各号に掲げる要件を具備する者をもってこれに代えることを請求することができる。
3 前二項の規定は、債権者が保証人を指名した場合には、適用しない。

*457条(保証人による相殺援用)
2 保証人は、主たる債務者の債権による相殺をもって債権者に対抗することができる。

[ワンランク・アップ]

相対的効力の原則と絶対的効力事由
連帯債務は、債務者同士が人間的な結びつき(家族、友人、知人など)によって連帯しているのですが、もともと債務者1人1人が独立に債務を負担するものですから、1人について生じた事由は当人だけに効力が生じ、他の債務者には効力を生じないというのが原則です。これを連帯債務の相対的効力といいます。
したがって、期限の猶予や債務の承認だけでなく、1人について法律行為の無効・取消しの原因があっても、他の債務者の債務には影響がありません。
たとえば、連帯債務者Aの錯誤により、AC間の契約が無効であっても、BC間では完全に有効な契約が成立します。

ただし、①請求 ②更改 ③相殺 ④免除 ⑤混同 ⑥時効の6事由については、例外的に他の連帯債務者にも効力が及びます(絶対的効力)
この原則と例外を正確に理解することが得点のポイントです。

(原則)相対的効力の原則
1人について生じた事由は、当人だけに効力を生じる。
①債務の承認 ②期限の猶予 ②取消し ③無効 など
(例外)絶対的効力事由
1人について生じた事由は、他の債務者にも効力を生じる。
①請求 ②更改 ③相殺 ④免除 ⑤混同 ⑥時効



(この項終わり)