|公開日 2017.6.24

【平11年 問8】の問題です。

【問 題】 同時履行の抗弁権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 宅地の売買契約における買主が、代金支払債務の弁済期の到来後も、その履行の提供をしない場合、売主は、当該宅地の引渡しと登記を拒むことができる。

 宅地の売買契約が解除された場合で、当事者の一方がその原状回復義務の履行を提供しないとき、その相手方は、自らの原状回復義務の履行を拒むことができる。

 建物の建築請負契約の請負人が、瑕疵(かし)修補義務に代わる損害賠償義務について、その履行の提供をしない場合、注文者は、当該請負契約に係る報酬の支払いを拒むことができる。

 金銭の消費貸借契約の貸主が、借主の借金に係る抵当権設定登記について、その抹消登記手続の履行を提供しない場合、借主は、当該借金の弁済を拒むことができる。


[解説&正解]
同時履行の抗弁権そのものに関する出題は大変少ないのですが、チョコチョコ顔を出しますので、基本事項だけは押さえておきましょう。

【選択肢1】
(同時履行の抗弁権に関しては)宅地の売買契約における買主が、代金支払債務の弁済期の到来後も、その履行の提供をしない場合、売主は、当該宅地の引渡しと登記を拒むことができる。

(解 説)
宅地・建物などの不動産売買契約では、買主の代金支払債務と、売主の不動産引渡し・登記移転義務とは、同時履行の関係に立ちます。
したがって、買主が代金支払の弁済期に履行の提供をしない以上、売主は、宅地の引渡しと登記を拒むことができます。
本肢は正しい記述です。

※ 売買契約などの双務契約で同時履行の抗弁権が認められている趣旨は、双務契約では当事者双方が同価値の債権債務を負っていますので、同時に履行させるのが公平だからです。

[テーマ] 売買契約と同時履行の抗弁権
[条 文] 533条

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【選択肢2】
(同時履行の抗弁権に関しては)宅地の売買契約が解除された場合で、当事者の一方がその原状回復義務の履行を提供しないとき、その相手方は、自らの原状回復義務の履行を拒むことができる。

(解 説)
契約が解除されると、その効果として、契約上の債権・債務ははじめにさかのぼって消滅し、契約をしなかった状態に戻ります(解除の遡及効)
そのため当事者双方は、互いに相手方を契約のなかった原状に戻す原状回復義務を負うこととなりますが、この原状回復義務は同時履行の関係に立ちます。

したがって、一方が原状回復義務の履行を提供しないときは、相手方も、自分の原状回復義務の履行を拒むことができます。
本肢は正しい記述です。

※ 債務不履行を理由に解除された場合でも、債務不履行をした者が先に原状回復義務を履行する必要はなく、双方の原状回復義務は同時履行の関係に立ちます。

[テーマ] 解除による原状回復義務と同時履行の抗弁権
[条 文] 546条

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【選択肢3】
(同時履行の抗弁権に関しては)建物の建築請負契約の請負人が、瑕疵(かし)修補義務に代わる損害賠償義務について、その履行の提供をしない場合、注文者は、当該請負契約に係る報酬の支払いを拒むことができる。

(解 説)
請負契約の目的物に瑕疵があるときは、注文者は、請負人に対し、瑕疵の修補を請求することができ、またそれに代えて損害賠償請求をすることができます。

この場合、請負人の損害賠償債務と注文者の報酬支払債務とは、同時履行の関係に立ちますから、請負人が履行の提供をしないときは、注文者も報酬の支払いを拒むことができます。
本肢は正しい記述です。

[テーマ] 瑕疵に代わる損害賠償請求権と報酬支払い
[条 文] 634条2項
[判 例] 最判平9.2.14

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【選択肢4】
(同時履行の抗弁権に関しては)金銭の消費貸借契約の貸主が、借主の借金に係る抵当権設定登記について、その抹消登記手続の履行を提供しない場合、借主は、当該借金の弁済を拒むことができる。

(解 説)
金銭債務の弁済は、その債務の担保のために設定された抵当権の抹消登記手続に対しては、先履行の関係にあり、同時履行の関係にはありません。
貸主が抵当権の抹消登記手続の履行を提供しない場合でも、借主は、先に弁済する必要があります。
本肢は誤った記述です。

[テーマ] 弁済と抵当権の抹消登記
[判 例] 最判昭57.1.19

以上より、正解は[4]

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[しっかり読んでおこう重要条文]

*546条(契約の解除と同時履行)
第533条の規定(同時履行の抗弁権)は、第545条の場合(解除の効果)について準用する。

*533条(同時履行の抗弁権)
双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。

*634条(請負人の担保責任)
1 仕事の目的物に瑕疵があるときは、注文者は、請負人に対し、相当の期間を定めて、その瑕疵の修補を請求することができる。ただし、瑕疵が重要でない場合において、その修補に過分の費用を要するときは、この限りでない。
2 注文者は、瑕疵の修補に代えて、またはその修補とともに、損害賠償の請求をすることができる。この場合においては、第533条(同時履行の抗弁権)の規定を準用する。



(この項終わり)