|公開日 2017.06.14
|更新日 2018.10.23


【平成13年 問8】の問題です。

【問 題】 Aが、B所有の建物の売却(それに伴う保存行為を含む。)についてBから代理権を授与されている場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 Aが、Bの名を示さずCと売買契約を締結した場合には、Cが、売主はBであることを知っていても、売買契約はAC間で成立する。

 Aが、買主Dから虚偽の事実を告げられて売買契約をした場合でも、Bがその事情を知りつつAに対してDとの契約を指図したものであるときには、BからDに対する詐欺による取消はできない。

 Aが、買主を探索中、台風によって破損した建物の一部を、Bに無断で第三者に修繕させた場合、Bには、修繕代金を負担する義務はない。

 Aは、急病のためやむを得ない事情があっても、Bの承諾がなければ、さらにEを代理人として選任しBの代理をさせることはできない。


[解説&正解]
代理の一般原則に関する初歩的な問題です。
ここに取りあげたテーマ以外にも、自己契約、双方代理なども要注意です。

【選択肢1】 
〔Aが、B所有の建物の売却(それに伴う保存行為を含む。)についてBから代理権を授与されている場合において〕、Aが、Bの名を示さずCと売買契約を締結した場合には、Cが、売主はBであることを知っていても、売買契約はAC間で成立する。

(解 説)
代理では、代理であることが取引の相手方にわかるように、本人のためにすることを示さなければなりません。代理行為の効果が誰に帰属するかを明らかにするのです。
これを顕名主義といいます。

したがって、顕名のない意思表示は代理であることがわからないため、原則として代理人自身のための行為とみなされ、代理は成立しません。

ただし顕名がなくても、代理人が本人のためにすることを、相手方が、
① 知っている(悪意のとき)か、または、
② 知らなかったけれども知ることができたようなとき(善意だが過失があるとき=善意有過失)には、代理が成立します。

本肢のように、代理人Aが、本人Bの名を示さないで契約した場合でも、相手方Cが、売主はBであることを知っていれば(つまり、代理行為であることを知っていれば)、代理が成立し、契約は「AC間」ではなく、BC間で成立することになります。
したがって、本肢は誤った記述です。

[テーマ] 顕名主義とその効果
[条 文] 100条

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【選択肢2】 
〔Aが、B所有の建物の売却(それに伴う保存行為を含む。)についてBから代理権を授与されている場合において〕、Aが、買主Dから虚偽の事実を告げられて売買契約をした場合でも、Bがその事情を知りつつAに対してDとの契約を指図したものであるときには、BからDに対する詐欺による取消はできない。

(解 説)
代理人が詐欺された場合には、詐欺を理由とする取消権は本人が取得するので、本人がその代理行為を取り消すことができます。

しかし本肢のように、建物売却などの特定の法律行為を代理する場合において、代理人が本人の指図に従って代理行為をしたときには、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することはできません。
つまり、代理人Aが相手方Dに詐欺された事情を本人Bが知りつつ、Aに対して契約を指図したのであれば、本人Bは、Dに対し詐欺を理由とする取消しはできないのです。

代理人が欺されているという事情を、本人が知って指図しているのであれば、もはや詐欺されたとはいえず、取消権を与えて保護する必要はないからです。
本肢は正しい記述です。

[テーマ]
 本人が代理行為の瑕疵を知っていたら?
[条 文]
 101条2項

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【選択肢3】 
〔Aが、B所有の建物の売却(それに伴う保存行為を含む。)についてBから代理権を授与されている場合において〕、Aが、買主を探索中、台風によって破損した建物の一部を、Bに無断で第三者に修繕させた場合、Bには、修繕代金を負担する義務はない。

(解 説)
建物の修繕は保存行為に該当します。
代理人Aは、建物の「保存行為」についても代理権を与えられているため、たとえ本人Bに「無断で」修繕契約をしても、代理行為として有効に成立します。
したがって、Bには修繕代金を負担する義務が生じるので、本肢は誤った記述です。

[テーマ] 保存行為の代理
[条 文] 103条1号

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【選択肢4】 
〔Aが、B所有の建物の売却(それに伴う保存行為を含む。)についてBから代理権を授与されている場合において〕、Aは、急病のためやむを得ない事情があっても、Bの承諾がなければ、さらにEを代理人として選任しBの代理をさせることはできない。

(解 説)
代理人は、急病のように「やむを得ない事情」があれば、本人の承諾がなくても、第三者Eを復代理人として選任することができます。

もともと任意代理人は、本人がその人を信頼して選任するものですから、別の第三者を復代理人として選任することはできず、復任権が制限されているのです。これが原則です。

しかし例外的に、①本人の許諾を得たとき、または、②やむを得ない事由があるとき(急病など急迫な事情があって自ら代理行為ができないとき)に限って、復任権があります。
代理行為に支障を生じさせて本人の不利益にならないようにするためです。
本肢は誤った記述です。

※ これに反し、法定代理人は、本人の許可や特別の理由がなくても、自己の責任をもっていつでも自由に復代理人を選任できます。
法定代理人の復任権が制限されないのは、その権限が広範囲にわたり、辞任も容易ではなく、しかも本人の信任に基づいて代理人になったわけではないからです。

[テーマ] 任意代理人の復任権
[条 文] 104条

以上より、正解は[2]

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[しっかり読んでおこう重要条文]

*99条(代理行為の要件・効果)
1 代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる

*100条(本人のためにすることを示さない意思表示)
代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなす。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、または知ることができたときは、本人に対して直接にその効力を生ずる。

*101条(代理行為の瑕疵)
2 特定の法律行為を委託された場合において、代理人が本人の指図に従ってその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張できない。本人が過失によって知らなかった事情についても、同様とする。

*103条(権限の定めのない代理人の権限)
権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。
一 保存行為
二 代理の目的である物または権利の性質を変えない範囲内において、その利用または改良を目的とする行為

*104条(任意代理人の復任権)
委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、またはやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。


(この項終わり)