|公開日 2017.9.25

[今回のテーマ]
■請負契約の内容
■請負人の担保責任
■建物請負の担保責任

1 意 味

請負というのは、請負人が「仕事を完成する」ことを約束し、注文者がそれに対して「報酬を支払う」ことを約束することで効力を生じる契約です。

建設会社が注文を受けて住宅を建築するというのが典型例ですので、イメージしやすいでしょう。

注意しておきたいのは、請負は「仕事の完成」を目的とする契約であるということです。
「仕事の完成」そのものを目的としており、労務提供が目的ではありませんから、請負人がいくら労務に従事しても、仕事が完成しなければ債務を履行したことにはなりません。

そもそも請負は、完成した仕事に対して報酬を支払う契約ですから、請負人が仕事を完成しなければ、注文者に報酬を請求することはできないのです。

仕事が完成すればいいのですから、請負人は原則として、自由に履行補助者や下請負人を使うことができます。
ただし、履行補助者の行為に対しては責任を負わなければなりませんし、下請負人の故意・過失についても責任を負うこととなります。

以下、主要なポイントを整理しておきましょう。

2 完成建物の所有権の帰属

建物の建築のように、注文者が物の製作を注文したときは、請負人は完成した建物を引き渡す義務を負いますが、このとき、完成建物の所有権はどちらに帰属するのでしょうか。

【判例】は、原則として「材料」をだれが提供したかで判断しています。

1 注文者が提供した場合

注文者が、材料の全部または主要部分を提供したときは、建物所有権は建物完成と同時に注文者に帰属します。

したがって、請負人が保存登記をしても無効ですし、また、この保存登記を信頼して抵当権を設定しても、無効の登記となります。

なお、材料そのものではなく、材料の購入代金を渡した場合も同様です。

2 請負人が提供した場合

請負人が、材料の全部または主要部分を提供したときは、完成建物の所有権はまず請負人に帰属し、引渡しによって注文者に移転します。しかし、特約や特別な事情がある場合には、はじめから「注文者」に帰属します。

たとえば、
・完成前に、すでに請負代金の全額が支払われていたときとか、
・引渡しや請負代金完済前でも、明示または黙示の合意により、完成と同時に注文者が所有権を取得する場合などです。

3 請負人の担保責任

請負人の担保責任は、注文者の権利としてみれば、瑕疵修補請求権、損害賠償請求権、契約解除権の3つに分けることができます。

1 原 則

(1) 瑕疵修補請求権
注文者は、請負人に対し、相当の期間を定めて、その瑕疵を修補するよう請求することができます。しかし、瑕疵が重要ではなく、かつ、修補に過分の費用を要するときは、この請求権はありません。

(2) 損害賠償請求権
注文者は、瑕疵の修補に代えて、または、修補とともに損害賠償請求をすることができます。
なお、瑕疵修補が可能であっても、これを請求しないで、直ちに修補に代わる損害賠償を請求することもできます(最判昭54.3.20)。

なお、請負人の「損害賠償債務」と注文者の「報酬支払債務」とは、同時履行の関係に立ちますので、請負人が損害賠償をしないときは、注文者は報酬の支払いを拒むことができます(最判平9・2・14)。

(3) 契約解除権
瑕疵のために契約目的が達成できないときは、注文者は、契約を解除することができます。
しかし、建物などの「土地工作物」の請負は、どんな場合でも、瑕疵を理由に解除することはできません(635条)。

しかし、たとえば完成した建物に重大な瑕疵があり、これを建て替えざるを得ない場合には、注文者は、請負人に対し、建替費用相当額を損害として賠償請求することができます。
これによって、実質的には、契約を解除したのと同一の結果を得ることができるわけですが、
この点は、平成24年問5に「判決文問題」として出題されました(最判平14.9.24)。

2 例 外

次の2つの場合には、請負人の担保責任は排除され、または軽減されます。

(1)目的物の瑕疵が、注文者の提供した材料の性質または注文者の与えた指図によって生じたときは、請負人に担保責任はありません。

しかし、請負人が材料または指図の不適当なことを知りながら告げなかったときは、誠実義務を欠くものとして、担保責任を負います。

(2)当事者間で、担保責任を負わないとか軽減するなどの特約をしても有効です。

しかしこのような特約があっても、請負人が知りながら告げなかった事実については、請負人は担保責任を免れることはできません。

3 担保責任の存続期間

原則として1年です。
つまり、瑕疵修補、損害賠償請求、契約解除は、目的物を「引き渡した時」から1年以内にしなければなりません。

ただし、建物などの「土地工作物」については瑕疵の発見が難しいため、その分、期間が長くなっています。

① 普通工作物(木造住宅など)は、引渡し後5年間です。
② 石造・れんが造・コンクリート造等(堅固建物)の場合は、10年間です。

なお担保責任の存続期間は、10年を超えない範囲(消滅時効期間内)であれば、特約で「伸長」することができます。

4 注文者の義務

注文者は、請負人に対して報酬(請負代金)を支払う義務を負います。
報酬の支払時期は、特約のない限り、仕事の目的物の「引渡しと同時」ですが、引渡しを必要としない請負の場合は、仕事終了時です。

建物建築のように、完成後に引渡しを要する請負では、「引渡し」と「報酬支払い」とは同時履行の関係にあります。

5 請負の終了

請負は、仕事の完成・引渡しという契約目的達成のほかに、契約一般に共通する解除や担保責任に基づく解除によって終了しますが、次のように特別に法定された解除権の行使によっても終了します。

1 仕事完成前の注文者の解除権

注文者は、請負人が「仕事を完成しない間」であれば、いつでも請負人の損害を賠償して契約を解除することができます。

請負は、注文者の求めに応じて、請負人が一定の仕事を完成させるのが目的ですから、その後、何かの事情で、注文者がこの請負人には仕事を任せたくないと考えるようになったときには、ムリに継続させるよりも、むしろ損害を賠償させて、自由に解除できるようにしたほうが、双方にとって有益と考えられたのです。

2 注文者の破産による解除権

仕事完成前でも、注文者が破産手続開始の決定を受けたときは、請負人または破産管財人は、契約を解除することができます。
この場合には、請負人は、既にした仕事の報酬と費用について、破産財団の配当に加入することができます。

6 条文とポイントまとめ

1 ポイントまとめ

 報酬の支払時期
請負は、仕事の結果に対して報酬を支払う契約であるから、仕事完成義務が先履行義務と
なり、仕事が完成したときに支払う(後払いが原則)。
ただし、建物建築のような物の引渡しを要する請負では、注文者の「報酬支払義務」と請負人の「建物引渡義務」は、同時履行の関係に立つ。

 完成建物の所有権の帰属
・注文者が、材料の全部または主要部分を提供したときは、原則として、所有権は建物完成と同時に注文者に帰属する。
・請負人が、材料の主要部分を提供したときは、原則として、所有権は請負人がいったん取得し、引渡しによって注文者に移転する。

 請負人の担保責任
① 瑕疵修補請求
注文者は、請負人に対し、相当の期間を定めて、瑕疵修補を請求することができる。
② 損害賠償請求
注文者は、瑕疵の修補に代えて、または、修補とともに損害賠償請求ができる。
瑕疵修補が可能であっても、直ちに修補に代わる損害賠償を請求することもできる。
請負人の「損害賠償債務」と注文者の「報酬支払債務」とは、同時履行の関係に立つ。請負人が損害賠償をしないときは、注文者は報酬の支払いを拒むことができる。
③ 契約解除
契約目的が達成できない瑕疵があれば、注文者は、契約解除ができる。
建物などの「土地工作物」の請負は、瑕疵を理由に解除することはできない。

 担保責任の存続期間
① 原則として、目的物を「引き渡した時」から1年。
② 普通工作物(木造住宅など)は、引渡し後5年間。

 注文者の解除権
① 請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約を解除できる。
② 重大な瑕疵のために契約目的を達成できない場合、注文者は、契約を解除できる。
ただし、建物その他土地の工作物である場合は、瑕疵の程度に関係なく契約解除はできない。

2 条文の確認

■633条(請負報酬の支払時期)
報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に、支払わなければならない。
ただし、物の引渡しを要しないときは、第624条第1項の規定(仕事を完成した後の報酬支払)を準用する。

■634条(請負人の担保責任──瑕疵の修補)
1 仕事の目的物に瑕疵があるときは、注文者は、請負人に対し、相当の期間を定めて、その瑕疵の修補を請求することができる。ただし、瑕疵が重要でない場合において、その修補に過分の費用を要するときは、この限りでない。
2 注文者は、瑕疵の修補に代えて、またはその修補とともに、損害賠償の請求をすることができる。この場合においては、533条(同時履行の抗弁権)を準用する。

■635条(請負契約における解除制限)
仕事の目的物に瑕疵があり、そのために契約をした目的を達することができないときは、注文者は、契約の解除をすることができる。
ただし、建物その他の土地の工作物については、この限りでない(解除できない)。

■638条(担保責任の存続期間)
1 建物その他の土地の工作物の請負人は、その工作物または地盤の瑕疵について、引渡しの後5年間その担保の責任を負う。

■640条(担保責任を負わない旨の特約)
請負人は、担保責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実については、その責任を免れることができない。

■641条(注文者による契約の解除)
請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。



(この項終わり)