|公開日 2017.7.17

[今回のテーマ]
抵当権は担保物権の通有性がすべて集約された担保物権の代表で、最頻出テーマです。出題内容も豊富で、あらゆる角度から出題されています。
判例の蓄積もおびただしいものがあります。ジックリ攻めていきましょう。
■抵当権の性質とさまざまな機能

1 抵当権の意味と機能

1 意味と機能

抵当権というのは、債務者または第三者(物上保証人)のもとに不動産を置いて、債権の弁済がないときに、これを強制的に売買(競売)して、その代金の中から、他の債権者に優先して債権の弁済を受ける権利をいいます。

369条には「抵当権者は、債務者または第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する」と規定しています。

不動産の占有を移転しない、つまり債権者(抵当権者)のほうへ移動させないで債務者の手元にそのまま置いてその使用収益を認めるという点が質権と根本的に違いますので、この点を注意してください。

  抵当権の性質

2 抵当権の効力の及ぶ範囲

1 付加一体物
抵当権は、その目的である抵当不動産に付加して一体となっている物(付加一体物)に及びます(370条本文)。

付加一体物は、取りはずしが簡単であっても独立の存在を失って不動産所有権の内容になっていますから、付加した時期に関係なく、原則として抵当権の効力が及ぶのです。

たとえば、土地との関係では、石垣・敷石などは不動産所有権の内容になるため、抵当権設定後であっても抵当権の効力が及びます。

※ わが国では、土地と建物は別々の不動産として扱われますので、双方が付加して一体となっている(定着している)からといって、土地に抵当権が設定されれば、そのまま建物にも抵当権の効力が及ぶ、などということは絶対にありません。

2 従 物
たとえば、土地にすえられた石どうろう・庭石、建物に備えつけられた畳・建具(雨戸・障子など)の従物は、抵当権設定当時に存在したものには、抵当権の効力が及びます(最判平2.4.19)。

3 従たる権利
抵当不動産の従たる権利についても抵当権の効力が及びます。
たとえば、敷地の賃借人が所有建物に抵当権を設定したときは、その抵当権の効力は賃借権にも及びます(最判昭40.5.4)。

4 果 実
抵当権は、債務者のもとに抵当物を置いて、債務者の使用収益を認める権利ですから、そこから生じる果実(天然果実・法定果実)に抵当権が及ぶとしたのでは、使用収益の意味がなくなります。

果実に対しては、抵当権の効力は及ばないのが原則です。
しかし、被担保債権について不履行があったときは、その後に生じた果実には抵当権の効力が及ぶとされ、抵当権者も果実を取得することができます。

5 利 息
利息については、原則として、満期のきた最後の2年分についてだけ抵当権の効力が及びます。

抵当権は、債務者が抵当不動産を占有して、その使用収益を認める権利ですから、抵当権を設定した後も、別の抵当権者が現れる可能性があります。
2年という制限を置いたのは、こうした後順位抵当権者など他の債権者の利益も保護する必要があるからです。

したがって、その他の利害関係者がいないときには、この制限はなく、最後の2年分を超えて抵当権を行うことができます。

抵当権者が、債務不履行による損害賠償請求権を有する場合についても同様に、最後の2年分についてだけ効力が及びます。

3 物上代位性 ── 差押え

担保物権の通有性でも触れましたが、抵当権には物上代位性があります。
たとえば、すでに抵当権が設定してある抵当不動産を債務者が売却したことによって、売買代金を受けとる場合には、この売買代金に対して抵当権を行使することができるのです。

ただし、物上代位によって優先弁済を受けるためには、債務者が受領する売買代金の払渡し前に必ず差押えをする必要があります。

しかも、この差押えは、抵当権者自身が他の債権者に先立って最初にしなければなりません。

差押えが「払渡し前に限定されている」のは、抵当権は特定の物に対する権利ですから、代金を払い渡して債務者の一般財産に混入した場合にまで抵当権の効力を認めてしまっては、広く一般財産に対して優先権を承認することになってしまうからです。

なお、抵当権の物上代位性については、債務者が抵当不動産を賃貸したときの賃料にも及びますので、この点も注意しておいてください。

4 順位昇進の原則

先順位の抵当権が消滅したときは、後順位の抵当権の順位が当然に(当事者の意思とは無関係に自動的に)繰り上がります。
これを「順位昇進の原則」といいます。

一番抵当権の被担保債権が弁済されて一番抵当権が消滅すれば、二番抵当権が当然に一番抵当権に昇進することになります。

5 抵当権の順位の変更

順位の変更というのは、一番抵当を二番抵当に、二番抵当を一番抵当にすることで、各抵当権者の合意によってすることができます。

順位の変更は、債務者の利害には影響しないので(抵当権者の順位が入れ替わるだけです)、債務者の承諾は不要です。

しかし、利害関係者(差押債権者や転抵当権者)があるときは、その承諾を得なければなりません。

なお、順位の変更は、登記をしなければ効力を生じません。この場合の登記は、第三者への対抗要件ではなく、効力発生要件なのです。

6 抵当権に基づく妨害排除請求権

抵当物について毀損行為があると、債務の弁済期に関係なく、その担保価値は減少し、債権が担保されなくなります。

これは、抵当権そのものに対する侵害ですから、抵当権も物権である以上、当然に、物権的請求権としての「抵当権に基づく妨害排除請求」をすることができます。

2 条文とポイントまとめ

1 条文の確認

■369条(抵当権の内容)
抵当権者は、債務者または第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。

■370条(抵当権の効力の及ぶ範囲)
抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である抵当不動産に付加して一体となっている物に及ぶ。

■371条(果実)
抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ。

■373条(抵当権の順位)
同一の不動産について数個の抵当権が設定されたときは、その抵当権の順位は、登記の前後による。

■374条(抵当権の順位の変更)
1 抵当権の順位は、各抵当権者の合意によって変更することができる。ただし、利害関係を有する者があるときは、その承諾を得なければならない。
2 順位の変更は、その登記をしなければ、その効力を生じない

■375条(抵当権の被担保債権の範囲)
1 抵当権者は、利息その他の定期金を請求する権利を有するときは、その満期となった最後の2年分についてのみ、その抵当権を行使することができる。(以下略)

2 ポイントまとめ

1 抵当権設定当時に存在した従物には、抵当権の効力が及ぶ。

2 抵当不動産の従たる権利についても、抵当権の効力が及ぶ。

3 果実には、抵当権の効力は及ばないのが原則。
ただし、被担保債権の不履行があったときは、不履行後に生じた果実には及ぶ。

4 利息は、原則として、満期のきた最後の2年分についてだけ抵当権の効力が及ぶ。

5 物上代位によって優先弁済を受けるためには、債務者が受領する売買代金等の払渡し前に必ず差押えをしなければならない。

6 先順位の抵当権が消滅すれば、後順位の抵当権の順位が当然に繰り上がる。

7 抵当権の順位の変更には、債務者の承諾は不要。
この変更は、登記をしなければ効力を生じない。

8 抵当権が侵害されれば、抵当権に基づく妨害排除請求をすることができる。


(この項終わり)