|公開日 2017.7.15

[今回のテーマ]
ここは頻出テーマです。シッカリ押さえておきましょう。
■対抗要件としての登記
■登記がないと対抗できない第三者
■登記がなくても対抗できる第三者

1 登 記

土地・建物などの不動産の物権変動を公示する方法が、登記です。

登記とは、要するに、国が作成管理する「登記簿」に、物権変動の内容を記載することです。
登記事務は、法務局、地方法務局またはその支局、出張所(登記所)が扱っており、近年、登記事務等のオンライン化により、自宅等のパソコンで登記申請ができるようになりました(電子申請)。

わざわざ登記所に出かける必要はなくなったのです。
登記手続については「不動産登記法」に詳細が定められています。

1 対抗要件としての登記

前述したように、176条は「物権の設定および移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる」と定めていますので、所有権の移転・抵当権の設定などの「物権変動」は、単なる意思表示だけでその効力を生じ、とくに登記や引渡しなどの行為を必要としません。

「登記」や「引渡し」がなくても、物権変動は生じます。

Aが所有不動産をBに売れば、Bは登記をしないでも所有権を取得し、AおよびAの相続人に対して、登記なしに所有者であることを主張できます。
まず、この点をシッカリ押さえてください。

続いて177条は「不動産に関する物権の得喪および変更は、その登記をしなければ、第三者に対抗することができない」と定めています。

当事者の意思表示だけで生じた物権変動も、「登記がなければ第三者に対抗することができない」というわけです。

2 二重譲渡の例

最も典型的な不動産の「二重譲渡」について、対抗要件の意味を確認しておきましょう。

二重譲渡

Aの土地が、①A→B、②A→Cと二重に売買(二重譲渡)されたとします。

この場合、BもCも、土地所有権が「未登記」のままでは、互いに相手に対して所有権取得を対抗することができない状態にあり、結局は、先に対抗要件である登記を備えた方が、完全に(排他的に)所有権を取得することになります。

①まずBに譲渡され、②その後にCが譲り受けたとしても、Cが先に登記をしてしまえば、登記のないBに対して土地の所有権を主張できるのです。
契約の前後に左右されることはありません。
また、先に、Bに土地の「引渡し」があっても、対抗要件を備えたことにはなりません。

177条は、まさにこのことを規定しているのです。
176条は、意思表示だけで物権変動を生じると定めていますが、同時に177条で、登記という対抗要件を採用しているため、「登記がない以上は、完全に排他性のある物権変動は生じない」ことになるわけです。

不動産物権は、登記を備えてはじめて排他的に帰属するのです。

したがって、登記が残っているAも、完全な無権利者とはならないため、1度売った土地をもう1度売るというような「二重譲渡」が可能なのです。

2 登記がないと対抗できない第三者

物権変動は、その登記をしなければ第三者に対抗することができませんが、この「第三者」とはだれか、その範囲を明確にしておきましょう。

1 第三者の範囲

まずここで「第三者」というのは、物権変動の「当事者およびその包括承継人」以外の者をいいます。

当事者およびその包括承継人(たとえば相続人)は、そもそも「第三者」ではないために、これらの者に対しては、登記なくして当然に物権変動を主張できます。

Aの所有地が、A→Bへ譲渡され、Bが「未登記」の間に、Aの相続人Cが、「相続により所有権登記をした」という場合、Bは登記がなくても、土地所有権をCに対抗できます。
相続人Cは、被相続人Aの当事者としての地位(売主としての地位)を当然に承継しますが、これは当事者の交代であり「第三者」にはあたらないのです。

2 正当な利益を有する第三者

次に、「第三者」は「すべての第三者」ではなく、「登記の欠缺(けんけつ)を主張するについて正当な利益を有する第三者」に限ります。

「登記の欠缺を主張する」というのは、「あなたには登記がないから対抗力がない」と主張することです。

「正当な利益を有する第三者」に対しては、登記をしないと対抗できません。
反面からいえば、「正当な利益を有しない第三者」には、登記なしに対抗できるということです。

「正当な利益を有する第三者」の主なものは、次の1~3の者です。

1 物権の取得者
A所有の不動産について、Bが所有権を取得し、その登記をしないうちに、同じ不動産について、所有権・地上権・抵当権などの「物権を取得したC」が、第三者の典型です。

Cは、「Bの登記の欠缺(Bに登記がないこと)を主張するについて正当な利益を有する第三者」に該当し、登記のないBは、Cに対して所有権取得を対抗することはできません。

この場合、Cがその取得した所有権・地上権・抵当権などの物権について「登記をしていなくても」かまわないのです(登記をしていればその段階でCの勝ちですから)。
たとえCが未登記であっても、とにかくBが未登記であるかぎりは、Cに対して所有権を対抗することができないのです。

そして、Cが登記してしまえば、Cは完全な権利者となり、Bはもはや所有権を取得することができず、あるいは地上権・抵当権によって制限された所有権を取得できるにすぎないのです。

Bの取得した物権が、地上権・抵当権などの制限物権であるときも、やはり登記をしなければ──Cが登記をしない間でも──、Cに対して、これらの制限物権を主張できません。

2 賃借権者
上の例で、A所有の不動産について「賃借権を有するC」も、Bの「登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者」にあたります。

つまり、Cが賃借しているA所有の不動産を、Bが買った場合、Bは登記がなくては、Cが賃借権の対抗要件(賃借権の登記、建物の引渡しなど)を備えていない場合でも、自分の所有権取得をCに対抗することはできません。

また、A所有の不動産について、Bが所有権その他の物権を取得し、登記をしない間に、「その後」Cが賃借権を設定した場合でも、Cが先に賃借権の対抗要件を備えれば、Bは後から登記しても、賃借権の制限のある所有権を取得することになります。

3 借地権者
Aの所有地について、Cが対抗要件を備えた「借地権」を有する場合、Cは、土地所有権を取得したBからみて、登記がなくては対抗できない第三者にあたります。

つまり、Bが新しい土地所有権者として、借地人Cに借地契約上の権利(地代の請求や解約申入れなど)を主張するためには、土地所有権の登記を必要とするのです。

※ 建物所有を目的とする地上権または土地の賃借権を「借地権」といいますが、借地権は、借地権そのものの登記がなくても、借地上に借地権者が「登記された建物」を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができます(借地借家法10条)。

以上の場合に、第三者Cの善意・悪意は関係ありません。
Cが悪意であっても、Bは登記がなければ、Cに対抗できないのです。
これは、取引関係に立った第三者に対しては、主観的な善意・悪意に関係なく、登記がない限り対抗できないとすることが、不動産取引を簡明にするからです。

3 登記がなくても対抗できる第三者

次の1~5の者は「登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者」にはあたらず、177条の「第三者」から除外されます。

これらの者に対しては、登記がなくても対抗できます。
要するに、悪いヤツには登記なんて要らないよというわけです。

1 詐欺または強迫によって登記申請を妨げた第三者

たとえば、Bが、Aからその所有地を譲り受けて登記をしようとしているときに、詐欺または強迫によってBの登記申請を妨げたCは、後で自分がその土地を譲り受けて登記を備えたとしても、Bに登記がないこと(登記の欠缺)を主張できません。

2 他人のために登記の申請義務を負う第三者

同じ例で、Cが、Bの法定代理人である場合に、Bのために登記する義務を怠って、自分のために先に登記を備えたとしても、Bに登記がないことを主張できません。

3 背信的悪意者

さきほど、第三者の善意・悪意は関係ないといいましたが、重大な例外があります。それがいわゆる「背信的悪意者」です。

背信的悪意者というのは、たとえば「権利取得の方法が著しく信義に反する者」とか、「害意をもって取引関係に立った者」などをいいます。
要するに、保護に値しない悪質な奴です。

たとえば、Aの所有地を取得したBが、まだ所有権移転登記をしていないことに乗じ、Bに高値で売りつけ不当な利益を得る目的でAをそそのかし、A所有地を購入して移転登記を受けた場合のCがこれにあたります。

背信的悪意者Cは、登記の欠缺を主張する正当な利益を有しないので、Cに対しては、Bは、登記がなくても所有権を主張できます。

では、背信的悪意者からの「転得者」についてはどうでしょうか。

判例は、転得者自身が背信的悪意でないかぎり、177条の「第三者」にあたるとしています(最判平8.10.29)。

4 実質的無権利者

取引関係に立った外形はあるものの、実体上何ら「真実の権利」を有しない者です。
たとえば、A所有の不動産について、Bが「文書を偽造して」移転登記をし、これをさらに、Cに譲渡して移転登記をしたような場合です。

Cが、Bの登記を信頼したとしても、登記に公信力がない結果、Cは何らの権利を取得しない実質的無権利者です。
したがって、Cは、登記上所有権を有するような外観をしていますが、AはCに対して所有権を主張できます。
このような場合に、Aに「まず登記せよ」と要求すること自体が不可能です。

5 不法占拠者・不法行為者

正当な権原に基づかないで、不動産を占有する不法占拠者は、何の権利もないのですから、真の権利者は登記がなくても、自らの権利を主張できます。
たとえば、Aから建物を譲り受けて所有権を取得したBは、登記がなくても、建物を損壊したCに対して、不法行為に基づく損害賠償を請求することができます。

4 ポイントまとめ

1 ポイントまとめ

1 対抗要件としての登記
不動産に関する物権変動は、その登記をしなければ、第三者に対抗できない。

2 第三者
第三者とは、物権変動の「当事者およびその包括承継人」以外の者で、登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者をいう。

3 登記がなければ対抗できない第三者 = 正当な利益を有する第三者
① 物権を取得した者
② 賃借権者
③ 一般債権者(抵当権などの担保権をもたない債権者)
④ 借地権者

4 登記がなくても対抗できる第三者 = 正当な利益を有しない第三者
① 詐欺または強迫によって登記申請を妨げた第三者
② 他人のために登記の申請義務を負う第三者
③ 背信的悪意者
④ 実質的無権利者
⑤ 不法占拠者、不法行為者


(この項終わり)