|公開日 2017.7.1|最終更新日 2018.5.17

今回のテーマは以下の4項目です。どれも出題の論点になるものです。
・成年被後見人の行為能力の内容
・被保佐人の行為能力の内容
・被補助人の行為能力の内容
・制限行為能力者の相手方の保護

成年被後見人の行為能力の内容

成年被後見人とは、精神上の障害のため事理を弁識する能力(意思能力)を欠く常況にある者で、後見開始の審判を受けた者をいいます。
保護者として成年後見人(法定代理人)がつけられます。

1 原 則

成年被後見人のした契約は、取り消すことができます。
契約のときに意思能力があったかどうかは問題ではなく、成年被後見人であるという理由だけで取り消すことができるのです。

また、成年後見人の同意があったかどうかは関係ありません。
たとえ事前の同意があっても、常に取り消すことができます。
なぜなら、成年被後見人は日常的に判断能力を欠く状態にあるため、事前に同意を与えて単独で契約をさせても本人保護にはならないからです。

成年被後見人の契約は、結局、成年後見人が代理して行うことになります。

注意すべき点をあげておきましょう。
 別荘の贈与(ただでもらえる)を受ける意思表示をした場合でも、この意思表示を取り消すことができます。

 遺言などの一身専属的な行為や婚姻・認知などの身分行為は、できるだけ本人の意思を尊重すべきですから(一時的に能力が回復したときには)成年被後見人単独の判断ですることができます。
成年後見人が代理して行うことはできません。

 取消しは、成年被後見人が単独ですることができます。
成年後見人の同意がない取消しだからといって、「取り消すことのできる取消し」とはならないのです。

2 例 外

ただし、日用品の購入など日常生活に関するものについては、例外的に成年被後見人が単独ですることができます。
成年被後見人であることを理由に取り消すことはできません。
日常生活をする分には、本人の利益を害することは少ないからです。

被保佐人の行為能力の内容

被保佐人とは、精神上の障害のため意思能力が著しく不十分である者について、保佐開始の審判を受けた者をいいます。
保護者として保佐人がつけられます。

1 原 則

被保佐人は、土地を売買するというような不動産その他重要な財産の取引行為などをするには、単独ではできず、保佐人の同意(または同意に代わる家庭裁判所の許可)が必要です。

同意(またはこれに代わる許可)を得ないでした行為は、取り消すことができます。

同意を必要とする主な行為は、次のとおりです。
① 土地・建物など不動産その他重要な財産に関する行為
② 相続の承認・放棄、遺産分割
③ 短期賃貸借を超える賃貸借契約
短期賃貸借というのは、貸借期間が、土地の場合は5年以内、建物は3年以内の賃貸借をいいます。
短期賃貸借を超える賃貸借をするときには、保佐人の同意が必要ですが、短期の場合は、単独ですることができます。
短い期間なら、単独で行っても不利益を受けることは少ないからです。
なお、利息や賃料の受領には、保佐人の同意は不要です。

注意すべき点をあげておきましょう。
 債務の承認をする場合には、保佐人の同意は必要ありません。
判例は、債務の承認は、すでに存在する相手方の権利を認めるにすぎず、あらたに債務を負うわけではないからとしています。
ただし、時効完成後の債務の承認は、借財と同視できるため、保佐人の同意が必要です。

2 例 外

ただし、成年被後見人と同じく、日用品の購入その他日常生活に関する契約は単独で行うことができます。

被補助人の行為能力の内容

被補助人とは、精神上の障害により意思能力が不十分である者について、補助開始の審判を受けた者をいいます。
軽度の痴呆・知的障害・精神障害等の状態にある者を保護の対象とする制度です。補助を受けるかどうかは本人の意思に任されている点が、後見や保佐と大きく違います。
保護者として補助人がつけられます。

補助開始の審判の際に、補助人に同意権を与えるのか、代理権を与えるのか、あるいはその双方を与えるのかの審判をすることになっています。

1 補助人の同意権

補助人の同意を必要とする行為は、保佐の場合の同意を要する行為の一部に限られます。たとえば、
・不動産その他重要な財産の取引行為
・短期賃貸借を超える賃貸借
・新築・改築・増築・大修繕の請負
などです。

同意(または同意に代わる家庭裁判所の許可)を得ないでした行為は取り消すことができます。

2 補助人の代理権

家庭裁判所は、被補助人のために、特定の法律行為について補助人に代理権を付与する旨の審判をすることができます。
この場合には、補助人が代理行為をしますから、代理権の対象となる行為に制限はありません。

制限行為能力者の相手方の保護

1 催告権

制限行為能力者の契約は「取り消すことができる」というのは、取り消してもいいし、取り消さなくてもいいということで、取り消されるまでは一応有効なものであり、取り消されるとはじめから無効とみなされます。

相手方は、せっかくの契約を取り消されるかもしれないという不安定な状態に置かれますから、こういう状態を脱することができるように催告権が与えられました。
取り消すのか取り消さないのかはっきりしてほしいと制限行為能力者側に促すのです。

催告を無視したら?
もしこの催告(1か月以上の期間)に対して、制限行為能力者側が確答をしなかった場合には、その契約を追認したものとみなされます。
追認というのは、取り消すことができる行為を確定的に有効とする意思表示です。

1か月以上の考慮期間が与えられたにもかかわらず、確答を放置した場合には、契約をそのまま存続させることとして、相手方を保護したのです。

2 詐術──制限行為能力者が行為能力者のふりをしたら?

たとえば、未成年者が身分証明書を偽造するなどして「自分は成年者である」と偽って、あたかも行為能力者であるかのように相手方を誤信させた場合には、もはや契約を取り消すことはできず取消権の消滅、契約は有効なものとして確定します。

詐術を用いて相手方を欺くような制限行為能力者を保護する必要はないのです。
むしろ、行為能力者だと信じて契約した相手方を保護する必要があるのです。

3 取消権の消滅時効

取り消すことができる契約も、いつまでも取り消せるわけではありません。
この取消権は、次のいずれかにより時効消滅します。
・追認できる時から5年間行使しない
・契約の時から20年間経過した
時間の経過によって確定的に有効としたのです。


(この項終わり)