|公開日 2017.7.21

[今回のテーマ]
■債務不履行の3パターンと成立要件・効果
■消滅時効の起算点との違い

1 債務不履行の意味と3パターン

債務不履行というのは、期日が来ても代金を払わない、土地・建物を明け渡さない、他の者に売ってしまった、失火して家を燃やしてしまったというように、「債務者」が「故意または過失」(これらを帰責事由といいます)によって「債務の本旨に従った履行をしない」ことをいいます。

債務不履行には、履行遅滞、履行不能、不完全履行の3パターンがありますが、要するに「債務者の責任で契約目的が達成できない状態にある」ということですから、債権者がとりうる手段としては、あくまでも履行を強制してもいいし、さっさと契約を解除して損害賠償を請求してもいいのです。

この「契約解除」と「損害賠償請求」が重要で、本試験の常連です。

1 履行遅滞

履行遅滞は、履行ができるにもかかわらず履行期に履行しない場合をいいます。

ここでは「履行期」はいつか、「いつから遅滞となるのか」ということが問題となります。

1 確定期限があるとき
確定期限があるときは、その期限が到来した時から履行遅滞となります。

たとえば、債務の履行について「平成29年10月16日までに支払う」というように、確定期限があるときは、債務者は、その期限到来の時(平成29年10月17日午前零時)から当然に履行遅滞となります。

2 不確定期限があるとき
不確定期限があるときは、その期限到来を知った時から履行遅滞となります。

たとえば、債務の履行について「父親が死亡したら土地を売却する」というように、不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来したことを知った時から遅滞となります。

「知らない」ことに帰責事由ありとして履行遅滞にするのは、債務者にとってあまりに酷だからです。

(「死亡したら」というのは、「条件」ではなく「期限」だというのはおわかりですね。この違いは基本中の基本です)。

3 期限の定めがないとき
履行期限の定めがないときは、請求を受けた時から履行遅滞となります。

つまり、債権者から請求を受けた時から、債務者は履行遅滞となるわけです。
ただし、債務者が「同時履行の抗弁権」や「留置権」など、履行しなくてもいい正当な権利を有するときは履行遅滞とはなりません。

4 不法行為に基づく損害賠償債務の履行期と消滅時効
不法行為に基づく損害賠償債務は、期限の定めのない債務ですが、損害賠償の「請求の時」から遅滞になるのではなく、「不法行為の時」から当然に遅滞となります。

不法行為の被害者(債権者)はすぐに請求できる状態にあるわけではありませんので、請求を受けるまで加害者(債務者)が履行遅滞にならない(遅延賠償責任が生じない)というのでは、被害者に不利益となるからです(最判昭37.9.4)。

それでは、消滅時効はいつから進行するのでしょうか。
これには特別な規定(724条)があって、
1 被害者(またはその法定代理人)が損害および加害者を知った時から3年間行使しないとき、または、
2 不法行為の時から20年を経過したときに、
時効消滅します。

5 履行不能に基づく損害賠償請求権の消滅時効
本来の債務が履行不能になったときは、損害賠償を請求することになりますが、この損害賠償請求権の消滅時効は、いつから進行を開始するのでしょうか。

債務不履行があったことによる損害賠償請求権は、本来の「履行請求権」の内容の変更であって、双方は法的に同一性を有するとみることができますので、その消滅時効は、本来の債務の履行を請求できる時から進行します(最判平10.4.24)。

2 履行不能

はじめから履行が不能な行為を目的とする債権は「成立」することができませんが(これを原始的不能といいます)、いったん有効に成立した債権も、その履行が不能(後発的不能)になれば消滅することになります。

この履行不能が、債務者の責めに帰すべき事由による場合には、債権者は、履行に代わる損害賠償請求権を取得します。

履行を強制することは意味がありませんから、契約を解除して損害賠償請求をするのです。

売主が、同じ土地を第三者に二重に譲渡して登記または引渡しを終わったような場合は、履行不能となります(高く買ってくれる買主が見つかったんでこちらに売却したんですね)。

また、一部が不能となって、残部だけでは契約目的を達成できないときは全部不能と同一に扱われます。

債権成立後に履行不能となる、つまり後発的不能であるという点に注意してください。

ところで、履行遅滞中に履行不能になったらどうなるのでしょうか。
たとえば、履行期限を過ぎた時点で、地震や暴風雨にあって建物が全壊したというように、履行遅滞中に履行不能となった場合には、それが債務者の責めに帰することができない事由(不可抗力)によるものであっても、債務者は「履行不能」の責任を負うことになります。

すでに履行遅滞にあるのですから、その不能は、結局、債務者の責めに帰すべき事由によるものと考えられるからです。
履行期までに履行していれば、こんな目に遭わずに済んだわけですから。

3 不完全履行

債務者が一応債務を履行し、債権者もこれを受領したのですが、履行の内容が「債務の本旨に従った」ものではなく、その意味で不完全なものをいいます。

ただし、土地や建物のような「特定物」を目的とした場合には、不完全履行としてではなく、担保責任として扱われます。

たとえば、家屋の引渡しの場合には、その家屋を引き渡せば「債務の本旨に従った」履行はあったものとされて、基礎の一部がシロアリ被害で腐っていたなどの瑕疵(広い意味では不完全履行といえますが)があれば、瑕疵担保責任の問題として処理されます(570条)。

2 条文とポイントまとめ

1 条文の確認

■399条(債権の目的)
債権は、金銭に見積もることができないものであっても、その目的とすることができる。

■400条(特定物の引渡しの場合の注意義務)
債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。
※ 建物や土地は「特定物」です。

■412条(履行期と履行遅滞)
1 債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。
2 債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来したことを知った時から遅滞の責任を負う。
3 債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。

■413条(債権者の受領遅滞)
債権者が債務の履行を受けることを拒み、または受けることができないときは、その債権者は、履行の提供があった時から遅滞の責任を負う。

2 ポイントまとめ

債務不履行と消滅時効との違いは基本中の基本です。
「いつから履行遅滞になるか」「いつから消滅時効が進行するか」の違いを正確に押さえておきましょう。
 債務不履行



(この項終わり)