|公開日 2017.7.24

[今回のテーマ]
■債権譲渡

1 債権譲渡の必要性

土地や建物を売買するのと同じように、債権を売買することができます。
代表的な例をあげましょう。

たとえば、AがBに1000万円を貸していて(金銭債権)、支払期日を6月末日とします。

Aは、4月25日に従業員に給料を支払うために早く現金を手に入れたいという場合に、この金銭債権をCに950万円で売る(譲渡する)ことによって、現金を手にすることができます。

  債権譲渡
      
今日では、債権譲渡は、このように「資金の早期流動化」のほかにも、Aの債権者Cが、Aの債権をもって弁済として譲り受けたり(債権回収手段)、Aが、Dから800万円の借金をしたいときに、1000万円の債権を担保に入れる(債権の担保化)などに利用されます。

債権譲渡は、契約自由の原則によって、原則として自由に行うことができます。

1 債権譲渡の意味

債権譲渡というのは、債権の同一性を変えることなく、契約によって債権を移転することです。債権者と譲受人(新債権者)との不要式の契約で、意思表示だけで効力が生じます。
ただ、債務者や第三者に対してその効力を主張するには、対抗要件を備えることが要求されます。

債権が譲渡されると、債権を担保している抵当権や保証債務も、別段の特約がない限り、当然に譲受人に移転します。
債権が同一性を有して移転しますから、これに付随した抗弁(同時履行の抗弁権とか期限の猶予など)や、債務者が譲渡人に対して有していた相殺権も債務者は譲受人に主張することができます。

なお、債権譲渡という場合の「債権」は、債権者が特定している「指名債権」のことをいいます。指名債権=債権と考えて問題ありません。
本試験でも、指名債権という用語で出題されたこともありました(平成19年問9)ので、念のため。

2 譲渡性──債権にはそもそも譲渡性がある

債権は財産として独立の価値をもっていますから、民法は、原則としてすべての債権に譲渡性を認めています。将来発生する債権の譲渡も認められます。

ただし、これには例外があって、
① 債権の性質上許されない場合や、
② 当事者が反対の意思表示をした場合には、譲渡は認められません。

1 性質による譲渡禁止
債権の性質上、債権者が変わると権利の行使に著しい差が生じますので、譲渡は認められません。有名な茶道家に茶道を教えてもらう債権とか、有名陶芸家に陶器を製作してもらう債権などです。先生が別人になってしまっては困りますよね。

2 特約による譲渡禁止
債権者と債務者で譲渡禁止の特約をしたときは、譲渡性はありません。
ただし、この特約は善意の第三者に対しては効力がありません。
「善意」というのは、譲渡禁止の特約があることを知らないという意味です(これまで何回も出てきましたね)。

債権が譲渡されたときに、債務者がその譲受人(第三者)に対して、その債権は「譲渡禁止の特約がある」と主張しても、譲受人が善意であれば譲渡を認めなければなりません。

知らないことについて「過失」があるときは、どうでしょうか。
判例は、譲渡禁止を「重過失」によって知らなかった第三者は、「悪意」と同視できるとして、譲渡によりその債権を取得することはできないとしています(最判昭48.7.19)。

3 譲渡の方法

債権は、債権譲渡契約によって譲渡されます。
この契約の当事者は、債権者Aと譲受人Cです。債務者Bは関与しません。

債権証書(借用書、郵便貯金通帳、銀行預金通帳など債権の存在を証明する書類)が作成されていても、債権証書の交付は譲渡契約の要件ではなく、契約はあくまでも当事者の意思表示だけで効力を生じます。

要するに、債権という財貨の譲渡であって、この点は所有権の譲渡(土地・建物の売買)と何ら変わらないのです。

  債権譲渡2

したがって、譲渡された債権がすでに消滅していたり、債務者が無資力になり債権が経済的に無価値になったときの譲渡人の担保責任も、売買における売主の担保責任と同じように扱うことになります。

すでに発生している既発生債権と将来の債権を「一括」して譲渡するという「集合債権」の譲渡やその予約も、債権が特定されていれば有効です(最判平13.11.22)。

2 条文

1 条文の確認

■466条(債権の譲渡性)
1 債権は、譲り渡すことができる。
ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。
2 前項の規定(債権の譲渡性)は、当事者が反対の意思を表示した場合には、適用しない。
ただし、その意思表示は、善意の第三者に対抗することができない。


(この項終わり)