|公開日 2017.7.24

[今回のテーマ]
■債権譲渡の対抗要件

1 対抗要件が必要だ

債権の譲渡を第三者に対抗するには対抗要件が必要です。
これは、物権変動が対抗要件(登記や引渡し)を必要とするのと同じです。

債権譲渡の場合の対抗要件は、通知または承諾です。
債権譲渡では、債務者と債務者以外の第三者が登場しますので、別々に分けて確認しておきましょう。

1 債務者に対する対抗要件

1 通知・承諾の必要
譲受人Cが債務者Bに対して債権を行使するためには、債権者AからBにその事実(債権がCに譲渡されたこと)を通知する必要があります。

 債権譲渡1

通知は、債権を失う譲渡人(旧債権者)がするからこそ信用があるわけですから、譲渡人がしなければならず、譲受人が通知をしても無効です。
したがって、債権者代位権により、譲受人Cが、Aに「代位して」通知することは許されません(大判昭5.10.10)。

しかし譲受人が、譲渡人の代理人として行ってもよいとされています(大判昭12.11.9)。
通知は、債権が譲渡されたという事実を知らせる行為であって意思表示ではありませんが、代理の場合は、譲渡人の意思を受けて行われるため問題はなく、実際にこの方法はよく用いられています。

Aからの通知がない場合でも、Bが承諾すれば、CはBに譲渡を対抗できます。

「承諾」というのは、「同意する」という意味ではなく、譲渡の事実を知ったことを表明するという意味です。「債権譲渡を知っている」ということで、債務者がそれを認めるかどうかは関係ありません。

通知または承諾がない以上、たまたま債務者が譲渡の事実を知っていても、Cは債権譲渡を対抗できず、したがって、Bに請求しても時効中断の効力は生じません。

2 通知の効力
通知のみがあった場合でも、譲受人は債務者に債権譲渡を主張できますが、債務者は、その通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができます。たとえば、

① 契約の取消しや解除によって債権が消滅していること
② 弁済によって債権の全部または一部が消滅していること
③ 同時履行の抗弁権を主張できること、などです。
④ 相殺については、場合を分けて確認しておきましょう。

通知後の反対債権取得
通知を受けた後に、債務者Bが譲渡人Aに対して債権(反対債権)を取得しても、この債権で譲受人Cに対抗できないのは当然です。

Cとしては、Aの債権がBの債権によって相殺されることがないものとして譲り受けているわけですから、後になってBが取得した反対債権によって相殺され、その結果、自分の債権が消滅したり、減額になったりしてはたまったものではありませんね。
これでは安心して債権取引はできません。

通知前の反対債権取得
通知がある前に、すでにBもAに対して債権を有していれば、事情が違ってきます。

Bの債権が、相殺適状(Aの債務の弁済期がきている)にあれば、Aの債権は相殺されるかもしれず、Cとしては、いわば「相殺が付着した債権」を譲り受けているわけです。
このように通知前に相殺適状が生じている場合は、Bは相殺をもってCに対抗することができます。

相殺適状になくても、通知後にBの反対債権の弁済期が先に到来すれば、Aの債権すなわちCの債権が弁済期未到来であっても、Bは相殺をもってCに対抗することができます。

2 異議をとどめない承諾の効力

債務者Bが、異議をとどめないで承諾した場合は、Aに対抗できた事由があっても、Cに対抗できません。異議をとどめない承諾に対する譲受人の信頼を保護するためです。
承諾に「公信力」を与えて譲受人を保護し、債権取引の安全性を図ろうとしたのですね。

したがって、契約の取消しや無効による債権の不成立とか、弁済その他の事由による消滅などがあっても、BはCに弁済しなければなりません。
ただし、「公信力」というからには、譲受人は善意であること、つまり「抗弁事由の存在を知らない」ことが必要です。
契約が取り消されたこととか、すでに一部弁済がなされていることなどを知らないことが必要なのです。判例も、悪意の譲受人には対抗できるとしています(最判昭52.4.8)。

異議をとどめない承諾の相手方は、AでもCでもどちらでもかまいません。

2 債務者以外の第三者に対する対抗要件

債務者以外の第三者に対しては、「確定日付のある証書」によって譲渡人の通知、または債務者の承諾がなされないと、対抗することができません。

1 「第三者」とは

物権変動の対抗要件における「第三者」と同じで、「通知の欠缺を主張する正当の利益を有する者」です。具体的には──

① 当該債権の二重譲受人
② 当該債権の差押債権者
③ 当該債権の質権者  などです。

一方、「第三者」でないのは、
① 譲渡債権の保証人
② 抵当物の第三取得者
③ 債務者の一般債権者  などです。

通知・承諾が「確定日付ある証書」でなされなくても、保証人等に対しては債権譲渡を対抗できるということです。

2 「確定日付のある証書」とは

Aが、Bに対する債権をCとDに相次いで譲渡しました。二重譲渡ですね。
CとDの優劣はどのように決めればいいでしょうか。

  確定日付のある証書

467条1項は、債権譲渡は、譲渡人から債務者への通知、または債務者の承諾がなければ、債務者その他の第三者(文言上、この第三者には深い意味はありません。「債務者」に意味があるのです)に対抗できないと定めていますので、この規定だけだと、通知・承諾の先後で優劣を決めることとなります。

したがって、Dへの譲渡が遅い場合でも、A・B・Dが通謀して、「Cへの譲渡通知よりも先に来た」ということにすれば、Cの債権譲受は効力を生じないことになります。
譲渡の日付を都合のいいように不正操作できるのです。

これでは安全に債権取引をすることはできません。
通知・承諾の「日付を動かせないようにする」必要があります。

そこで2項で、これらは「確定日付のある証書」でなされないと、第三者に対抗できないと定めたのです。

「確定日付のある証書」というのは、代表的なものでは「公正証書」や「内容証明郵便」などをいいます。

これらの証書は、公証人とか郵便局長など職業的規律に服する人が、客観的な第三者の立場で日付を記載するため、取引当事者の不正によって日付を勝手に操作することが不可能となり、日付が法律上の権利を左右する場面では、「決定的な証拠力」となるのです。

この結果、Cへの譲渡について確定日付ある証書で通知し、Dへの譲渡について確定日付ある証書によらないで(たとえば、メールで)通知すると、CがDに優先し、債務者もCを真の債権者と認めなければなりません。

判例に現れた例をみておきましょう。
ここは少しややこしいところですが、何度も読んでマスターするようにしてください。

① ともに確定日付ある証書による通知がされたら?

債権譲渡の通知は、意思表示と同じく到達によって効力を生じます。したがって、債権が二重譲渡され、ともに「確定日付のある証書」による通知があったときは、その優劣は、確定日付の先後ではなく、通知が債務者に到達した日時の先後によって決定されます(最判昭49.3.7)。

② 確定日付ある譲渡通知と差押命令との優劣は?

「差押命令」の送達と「確定日付による通知」は同じ効力を有するため、双方が債務者へ到達した場合、その優劣は、送達・通知の到達の先後によって決定されます。

たとえば、差押債権者Xの差押命令の「到達前」に、先に確定日付ある譲渡通知が債務者に届いていれば、債権譲渡が優先するため、債務者は、Xの取立てに応じる必要はありません(最判平5.3.30)。

  通知の到達

③ 確定日付ある譲渡通知が同時に到達したら?

債権が二重譲渡され、確定日付ある通知が同時に債務者に到達したときは、CとDは、債務者に対しそれぞれ債権全額の弁済を請求できます。債権金額の基準で按分した額ではありません。

つまり、一方から請求を受けた債務者は、他方に対する弁済その他の債務消滅事由が存在しない限り、弁済しなければならないのです(最判昭55.1.11)。

「確定日付証書による通知」と「差押命令」が、同時に到達したときも同じです。
譲受人Cと差押債権者Xは、ともに有効な対抗力を有することとなり、互いに優先を主張することはできません。

したがって、Cから請求を受けた債務者は、Xに対する弁済、供託その他の債権消滅事由がない限り、同順位のXが存在することを理由として、Cからの請求を拒むことはできないのです。

※ 対抗要件に関する判例のルール
① 確定日付ありの通知となしの通知では、ありが優先する。
② 両方とも確定日付ありのときは、日付ではなく、到達の先後で決する。

3 条文とポイントまとめ

1 条文の確認

■467条(指名債権の譲渡の対抗要件)
1 指名債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、または債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
2 通知または承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。

■468条(指名債権の譲渡における債務者の抗弁)
1 債務者が異議をとどめないで前条の承諾をしたときは、譲渡人に対抗することができた事由があっても、これをもって譲受人に対抗することができない。
この場合において、債務者がその債務を消滅させるために譲渡人に払い渡したものがあるときはこれを取り戻し、譲渡人に対して負担した債務があるときはこれを成立しないものとみなすことができる。
2 譲渡人が譲渡の通知をしたにとどまるときは、債務者は、その通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる。

2 ポイントまとめ

1 債権譲渡の場合の対抗要件は、通知または承諾。

2 通知は、譲受人が、譲渡人の代理人として行ってもよい。

3 通知後に、債務者が譲渡人に対して反対債権を取得しても、この債権で譲受人の債権と相殺することはできない。

4 債務者が異議をとどめない承諾をした場合は、譲渡人に対抗できた事由で譲受人に対抗できない。

5 第三者に対しては、確定日付のある証書による通知または承諾がないと、対抗できない。

6 確定日付ありの通知となしの通知では、確定日付ありが優先する。

7 ともに確定日付ありのときは、通知の到達の先後で決する。

8 差押命令の送達と確定日付による通知の双方が到達したときは、送達・通知の到達の先後によって決する。


(この項終わり)