|公開日 2017.8.05

[今回のテーマ]
■解除の趣旨
■解除をめぐる諸問題
■解除の効果

1 解除の趣旨を知ろう

しっかりと約束をしたはずなのに、それが守られない。
何度催促しても、ウンともスンとも言ってこない。
こんなことは、私たちのふだんの生活でもしょっちゅうあることですね。

契約をする以上、それが破られたときにはどうするかを考えておかなければなりません。

すでに学習しましたが、期日が来ても代金を払わない、土地・建物を明け渡さないというように、債務者が故意または過失(帰責事由)によって「債務の本旨に従った履行をしない」ことを債務不履行といいましたね。

債務不履行には、①履行遅滞、②履行不能、③不完全履行の3タイプがあって、債務不履行の場合に債権者がとりうる手段としては、あくまでも履行を強制するか(①と③)、さっさと「契約を解除」して損害賠償を請求することもできました(①②③)。

債務不履行の場合には、この「契約解除」と「損害賠償請求」が重要で、損害賠償請求についてはすでに学習しました。

今回は、契約の解除について基本的なことを確認しておきましょう。

さて、契約の解除というのは、一方の当事者の意思表示によって、すでに有効に成立した契約の効力を解消させて、その契約がはじめから存在しなかったことにする制度をいいます。

たとえば不動産の売買契約をした売主が、期限になってもその不動産を引き渡さないときは、買主のとりうる手段は何でしょうか。

そうですね、買主としてはその履行を請求するとともに債務不履行(履行遅滞)を理由に損害賠償を請求できますし、あるいは強制履行の手段に訴えて履行を強制することも可能です。

しかしこれらの場合にも、買主は自分の代金債務を履行しなければなりません。ただ今後も、このような売主とやっていくのは相当やっかいなものです。

買主の立場に立って考えれば、むしろ契約を解除して債権・債務を消滅させ、新たな売主を探したほうがいい場合もあるのではないでしょうか。

このように、当事者の一方がその債務を履行しないときに、相手方を救済するための手段として法律上当然に認められているのが、解除(法定解除)なのです。

ことに民法は、解除すれば自分の債務は消滅するうえに、相手方から損害賠償を請求することもできますので、解除する者(解除権者)にとっては大変有利といえるでしょう。

解除には、民法上当然に認められた「法定解除」のほかに、当事者の契約によって、たとえば「一定の事由があったときは、この契約は将来やめにすることもできる」というように、解除権をあらかじめ留保しておいて、この解除権を行使する場合の「約定解除」があります。

ここでは、法定解除を中心にみておきましょう。

2 解除をめぐる諸問題

解除の要件のポイントは、債務不履行ですが、なかでも履行遅滞が重要です。

1 履行遅滞による契約解除

相手方が、期限が来ても履行しない履行遅滞にある場合には、まず相手方に対して相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がないときには契約を解除することができ、あわせて損害賠償の請求をすることができます。

ここで注意しなければならないのは、相手方が「履行遅滞」にあるということです。

履行期に履行しないからといって、それが直ちに「履行遅滞」になるとはいえない場合がありましたね。
前回の学習を覚えていますか?

ここで、「同時履行の抗弁権」が思い浮かんだ人は、しっかり勉強している人です。

たとえば売買契約のような双務契約の場合は、双方には同時履行の抗弁権がありますから、相手方が履行期に履行しないからといって、必ずしも「履行遅滞」にあるわけではありませんでしたね。

契約を解除するためには、相手方が「履行遅滞」にあることが必要ですが、そのためには、解除権者は自ら履行の提供(弁済の提供)をして、相手方の「同時履行の抗弁権」を消滅させる必要がありました。

2 催告期間が不相当に短いとき

さて、相手方が履行遅滞にあっても、直ちに契約を解除することはできず、かならず催告をすることが必要です。

民法としては、いったん有効に成立した契約ですからなるべく存続させたいわけで、また相手方にも最後のチャンスを与えるのが適切だと考えたのです。

ところで催告するにはしたのですが、催告期間が「不相当に短いとき」はどう考えるべきでしょうか。

改めて相当の期間を定めて催告をやり直すべきでしょうか、それとも、客観的にみて「相当の期間」を経過すればそのままで解除できるのでしょうか。なかなか難しいところですね。

判例は、催告期間が「不相当に短い」ときでも、その催告は有効であり、催告の時から起算して客観的に「相当の期間」を経過すれば、改めて催告しなくても解除できるとしています。
相手方はすでに履行遅滞にあるわけですから、非は相手方にあり再度の催告は不要とされるのです(最判昭44.4.15)。

3 解除権に条件はつけられる?

解除の意思表示に条件をつけることは、相手方の立場をひどく不安定にしますから、原則として許されません。

しかし、たとえば「催告期間内に履行がないときは、改めて解除の意思表示をしなくても、契約を解除する」というような条件であれば、すでに履行遅滞にある相手方をとくに不利益にするものではないため、催告期間内に履行がない場合には、改めて解除の意思表示をする必要はないとされています。

4 履行不能による契約解除

債務が履行不能になった場合には、催告することなく直ちに契約を解除することができます。
催告しても履行の可能性はないからですね。

解除権者はあわせて、①代金の返還、②受領時からの利息の支払い、③損害賠償の各請求をすることができます。

5 解除権の不可分性

買主AとBが共同して、Cと土地の売買契約を結んだ場合に、A・Bが代金を支払わないことを理由に売主Cがこの契約を解除するには、A・B両者に対して解除の意思表示をしなければなりません。
反対に、Cが履行しないために、買主が解除するときも、Aだけの意思表示では足りず、2人でする必要があります。

このように、当事者の一方または双方が数人あるときは、その全員から、また全員に対して、解除の意思表示をしなければならず、これを「解除権不可分の原則」といいます。

一部の者とだけ解除の効果を認めると、法律関係が複雑になるからです。

3 解除の効果

1 当事者間

当事者間の効力として、最も重要なのは次の2点です。

1 原状回復義務
解除があると、当事者は、相互の債務についてはじめから契約がなかった状態に戻す義務を負うことになります(原状回復義務)。

具体的にどうなるかは、まだ履行されていない債務(未履行債務)とすでに履行された債務(履行済み債務)では違ってきます。

未履行債務であればその債務は消滅し、互いに履行を請求することはできなくなりますし、履行済み債務であれば、その債務の履行として受けとったものや利益を互いに返還しなければなりません。

たとえば、売主は代金を、買主は目的物をそれぞれ相手方に返す必要があります。

なお互いの返還義務は、もとの契約が売買契約のような双務契約であるときには、同時履行の関係に立ちます。

また金銭を返還するときは、その受領時からの利息をつけなければなりません。解除されると、契約ははじめから存在しなかったことになり、受領の根拠を失うからです。

解除の時点からの利息ではありませんから、注意してください。

2 損害賠償義務
契約が解除されると、債権・債務ははじめから存在しなかったことになりますから、つきつめて考えると、債務不履行による損害賠償請求権も生じなかったはずです。

しかし民法は、解除権者を保護するために、解除の遡及効(そきゅうこう)に制限を加え、解除があっても損害賠償請求権を存続させたのです。

2 第三者との関係

545条1項は、「当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない」と定めて、「第三者」の権利を保護しています。

ここを読んで、「あれっ?」を思われた読者は、なかなかの鋭い法的センスの持ち主です。

そうですね、この第三者には「善意」が要求されていませんね。

たとえばAの不動産が、A→B→Cへ譲渡された場合ですが、

  契約の解除

実は解除の場合は、第三者Cの善意・悪意はあまり問題にならないのです。

というのも、Bに債務不履行の事実があるということを第三者Cが知っていても(悪意)、何ら責められるような落ち度はなく、また、債務不履行があるからといって当然に解除されるわけでもないからです。

ただ、第三者の善意・悪意が問題とされない代わりに、その第三者が保護されるには、解除権者よりも先に対抗要件(登記)を備える必要があります(大判大10.5.17)。

この場合の登記は、解除権者と対抗関係に立つからではなく、保護に値する第三者となるには、権利者としてなすべきことを全部終えていなければならないという発想なのです。

さて、第三者は、解除前と解除後に分けて考える必要があります。

1 解除前の第三者は解除の遡及効の問題である(545条1項)
BがCに売却した後になって、Aが、Bの債務不履行を理由にAB間の契約を解除した場合は、Aは、解除による所有権復帰を第三者Cに対抗できません。

契約が解除されると、契約は最初から存在しなかったのと同じ状態に戻るわけですから(解除の遡及効)、解除される前にすでに権利を取得していた第三者Cも、はじめから権利を取得しなかったこととなり、これではまったく責任がないのに権利を失ってしまいます。

これは第三者に気の毒ですから、解除をしても「第三者の権利を害することはできない」と定めて解除の遡及効を制限し、第三者を保護しているわけです。

2 解除後の第三者は177条の対抗問題である(177条)
Aの解除後に、第三者Cが現れた場合には、
 ① 解除によるB→Aの所有権復帰と、
 ② 解除後のB→Cへの所有権移転とは、
二重譲渡と同様に、その優劣は対抗要件(登記)で決まります。

Aが解除しても、解除による所有権復帰の登記をしなければ、解除後のCが先に登記を備えてしまえば、Cに所有権を対抗することはできません。
177条の原則どおり、先に登記をしたほうが勝つのです。

(1)と(2)の違いをしっかり確認しておいてください。

4 条文とポイントまとめ

1 条文の確認

条文はそのまま丸暗記するのではなく、「要点メモ」として活用するものですから、そのつもりで読むようにしてください。
解説を読んでいれば、条文は簡単に理解できるはずです。

■541条(履行遅滞による解除権)
当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。

■543条(履行不能による解除権)
履行の全部または一部が不能となったときは、債権者は、契約の解除をすることができる。
ただし、その債務の不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

■544条(解除権の不可分性)
1 当事者の一方が数人ある場合には、契約の解除は、その全員から、またはその全員に対してのみ、することができる。
2 前項の場合において、解除権が当事者のうちの1人について消滅したときは、他の者についても消滅する。

■545条(解除の効果)
1 当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない
2 前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。
3 解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。

■547条(催告による解除権の消滅)
解除権の行使について期間の定めがないときは、相手方は、解除権を有する者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に解除をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その期間内に解除の通知を受けないときは、解除権は消滅する。

2 ポイントまとめ

 契約の解除は、有効に成立した契約の効力を解消させて、その契約が「はじめから存在しなかった」ことにする意思表示をいう。

 履行遅滞による契約解除は、まず相手方に対して相当期間を定めて履行を「催告」し、その期間内に履行がないときにすることができる。

 契約を解除するためには、相手方が「履行遅滞」にあることが必要で、そのためには、解除権者は自ら弁済の提供をして、相手方の「同時履行の抗弁権」を消滅させる必要がある。

 催告期間が「不相当に短い」ときでも、その催告は有効であり、催告の時から起算して客観的に「相当の期間」を経過すれば、改めて催告しなくても解除できる。

 当事者の一方または双方が数人あるときは、その全員から、また全員に対して、解除の意思表示をしなければならない(解除権不可分の原則)。

 解除があると、当事者双方は、互いに原状回復義務を負う。

 金銭を返還するときは、その「受領時」からの利息をつけなければならない。

 解除権を行使しても、第三者の権利を害することはできないが、その善意・悪意は問題とされない。ただし保護されるには、対抗要件を備える必要がある。

 「解除前」の第三者は解除の遡及効の問題であり、「解除後」の第三者は177条の対抗問題である。


(この項終わり)