|公開日 2017.7.13

[今回のテーマ]
■時効の中断事由にはどんなものがあるか

1 時効の中断事由

時効は一定の事実状態が継続するものですから、この事実状態をくつがえす事実があるときは、時効は進行できないことになります。
これを時効の中断といいます。

中断があると、それまでに進行した時効期間はすべて効力を失うことになります(ゼロになります)。
そして、中断した時効は、その中断事由が終了した時から、また新しくゼロから進行を開始するのです。

時効は、次の事由によって中断します(時効の中断事由)。

 1 請求  2 差押え、仮差押え、仮処分  3 承認

1 請 求

請求とは、権利者が自分の権利を主張することで、請求があれば時効は中断します。請求には次の事由があります。

1 裁判上の請求
「訴えの提起」ともいいいます。要するに「裁判を起こす」ことです。
債務者に対して履行請求の訴えを提起したり、所有権の確認を求めて訴訟を提起するような場合です。
ただし、訴えを提起しても、却下されたり、みずから取り下げた場合には、中断の効力を生じません。

2 支払督促
正式な裁判手続をしなくても、判決などと同じように、裁判所から債務者に対して「金銭の支払いを命じる督促状」を送る手続です。

3 破産手続参加
債務者に対する破産手続の進行中に、債権者が配当に加入するために破産債権の届出をすることです。ただし、債権者が参加を取り消したり、その請求が却下されたときは、中断の効力は生じません。

以上の1~3は、裁判所が関与する強力な権利の行使ですから、時効を中断するのです。

4 催告──裁判外でする請求
裁判手続によらずに、履行を請求する一切の行為で「裁判外の請求」ともいわれます。
「請求書を送る」「電話で請求する」、あるいは「内容証明郵便を送る」「書留郵便で請求する」など、裁判手続の関与しない裁判外でする請求です。

ただし催告は、中断力が弱く、催告後6ヵ月以内に、さらに強力な「裁判上の請求」「差押え」「仮処分」などの手続をしなければ、完全には時効中断の効力を生じません。
また、1度催告した後、6ヵ月以内にまた催告するというように、催告をくり返しても、中断の効力はありません。
単に催告しただけでは時効中断の効力は生じないことに注意してください。

催告をするには、とくに要式は必要ありませんが、「請求書」や「口頭の催促」だと、「送った、いや受けとっていない」「言った、言わない」などの水かけ論になって、催告の証拠が残りません。したがって、通常、催告は内容証明郵便で行われます。

※ 内容証明郵便は、第三者である郵便局が、送信する文書の内容、日付等を証明する郵便ですから、催告の「確かな証拠」となります。同時に「配達証明」もつけると、相手方に配達された日時も証明することが可能です。

2 差押え、仮差押え、仮処分

これらは、いずれも強力な権利行使ですから、時効を中断します。ただし、これらの行為が取り消されたときは、中断の効力を生じません。

判例は、物上保証人に対する抵当権の実行(競売)を申し立てたときは、競売開始決定の正本が債務者に送達された時に155条の通知があったものとし(最判昭50.11.21)、その時点で時効中断の効力が生じるとしています(最判平8.7.12)。

3 承 認

承認というのは、たとえば、債務者が、返済期限から5年経過した時点で、「私は、確かに100万円借りている」と表明するように、時効の利益を受ける者(多くは債務者)が、時効によって権利を失う者(多くは債権者)に対して、「権利の存在を知っている」旨を表示することです。

債務の存在を、債務者自身が認めているのですから、権利関係の存在が明らかとなるため中断事由とされます。

・債務の一部を弁済することは承認になり、また利息を支払えば、元本の承認となり、それぞれ時効が中断されます。

・「もう少し待ってほしい」と口頭で申し入れることも、承認として中断の効力をもちます。

※ 承認については、保証人や連帯保証人などのする債務の承認が、主たる債務者にも及ぶかどうかなど、債権編で問題となるところで試験によく出題されます。連帯債務・保証債務のところで学習します。

2 中断の効力が及ぶ者の範囲──相対的である

148条によると「時効の中断は、その中断の事由が生じた当事者およびその承継人の間においてのみ、その効力を有する」とあります。

時効中断の効力は誰に対しても絶対的に生じるのではなく、当事者(およびその承継人)の間においてだけ生じるということで、これを中断の相対効といいます。

たとえば、Cの所有地を、A・Bが共同で占有して時効取得をしそうなときに、Aに対して中断行為をしても、Bに対しては中断の効力は生じない、
また、A・Bの共有地を、Cが占有して時効取得をしそうなときに、CがAに対して承認をしても、Bにとって中断とはならない、ということです。

これは、事実状態を尊重する時効は、中断事由についても、その事実の生じた範囲においてだけ効力を認めるべきだという趣旨なのですが、この相対効の原則は、連帯債務や保証債務で多くの例外が認められています。

たとえば判例は、物上保証人は「債務者の承認によって被担保債権の時効が中断しても自分との関係では中断していない」として、被担保債権の消滅時効を援用することはできないとしており、「相対効」を認めていません(最判平7.3.10)。
担保権の付従性、および396条(抵当権の消滅時効)の趣旨に反するからというのが理由です。

3 条文とポイントまとめ

1 条文の確認

■147条(時効の中断事由)
時効は、次に掲げる事由によって中断する。
 一 請求
 二 差押え、仮差押え、または仮処分
 三 承認

■148条(時効の中断の効力が及ぶ者の範囲)
時効の中断は、その中断の事由が生じた当事者およびその承継人の間においてのみ、その効力を有する。

■149条(裁判上の請求)
裁判上の請求は、訴えの却下または取下げの場合には、時効の中断の効力を生じない。

■153条(催告)
催告は、6か月以内に、裁判上の請求、支払督促の申立て、……破産手続参加、差押え、仮差押えまたは仮処分をしなければ、時効の中断の効力を生じない。

■155条(通知)
差押え、仮差押えおよび仮処分は、時効の利益を受ける者に対してしないときは、その者に通知をした後でなければ、時効の中断の効力を生じない。

■157条(中断後の時効の進行)
1 中断した時効は、その中断の事由が終了した時から、新たにその進行を始める。
2 裁判上の請求によって中断した時効は、裁判が確定した時から、新たにその進行を始める。

2 ポイントまとめ

1 時効の中断事由
 ① 請求(裁判上の請求、支払督促、破産手続参加、催告)
 ② 差押え、仮差押え、仮処分
 ③ 承認

2 催告
催告は、催告後6ヵ月以内に、より強力な「裁判上の請求」「差押え」「仮処分」などの手続をしなければ、完全には時効中断を生じない。


(この項終わり)