|公開日 2017.8.09

[今回のテーマ]
■民法と借地借家法
■土地賃貸借と借地権
■賃貸借の存続期間
■不動産賃貸借の対抗力

1 民法と借地借家法──適用範囲の違いに注意

マンションやアパートを借りて住んでいる人は、イメージしやすいと思いますが、賃貸借というのは、家賃などの使用料を支払って他人の建物を借りるような契約です。

使用料(借賃)を払う、つまり有償契約であるという点が、無償で借りる使用貸借(契約)と根本的に違います。

ところで、みなさんが土地を借りたり、建物・マンションを借りる場合には、いったい民法と借地借家法のどちらが適用されるのでしょうか。

まず、この両者の関係を理解することが先決です。

もともと土地・建物の賃貸借を対象とした民法の規定は、基本的には貸主・借主を対等の立場にあるものと想定して、契約自由の原則に委ねた内容になっているのですが、どうしても貸す方の立場が強くなって、借主が弱い立場に立たされるというのが現実なのです。

賃貸借のなかでも、社会的に重要な機能を果たしているのは、何といっても不動産の賃貸借です。

とくに「土地・建物」の賃貸借ということになると事態は深刻になりますので(家賃の値上げがいやなら出て行ってくれ……みたいに生活の基盤を失ってしまう)、借主が不当に不利にならないように民法よりももっときめこまかく特別に規定して、安心して他人の不動産を利用できるようにしたのが借地借家法というわけです。

したがって賃貸借といっても、とくに「建物」の賃貸借をする場合とか、建物の所有を目的として「土地」の賃貸借をする場合(要するに借主の生活・経済の基盤に係わる場合)には、まず借地借家法が優先して適用されることになるのです。

この意味で、民法は原則法、借地借家法はその特別法という関係に立ちます。

借主保護のために特別に作られた法律ですから、借主保護とは関係のない事項については、依然として民法の規定が適用されることになります。

土地・建物の賃貸借だからといって、民法がまったく適用されないというわけではありませんから注意してください。

以上の関係を理解しておかないと、土地・建物の賃貸借は正解できませんからね。
宅建試験では、ときどき「民法及び借地借家法の規定よれば、正しい(誤っている)ものはどれか」というように、民法・借地借家法の双方の理解が問われますので、双方の違いをキチンと理解しておく必要があります。

まずは民法の賃貸借(原則法)を理解することから始めましょう。

 ・民法で定める賃貸借 ← 原則的な規定

 ・借地借家法の賃貸借 ← 借主保護のための特別な規定

2 土地賃貸借と借地権

土地を借りる場合については、借りる目的(土地を何に利用するか)によって、民法と借地借家法の適用範囲が異なります。

つまり、建物の所有を目的として土地に地上権を設定したり、賃貸借をする場合に限って、借地借家法上「借地権」として適用・保護されるのです。

「建物以外」のたとえば駐車場とか資材置場、あるいは放射性物質を含んだ廃材置場のために利用する場合には、借地借家法の適用はなく、民法で解決することになります。

「建物」というのは、必ずしも居住用(住宅)でなくてもいいのです。
住宅に限って借地借家法の適用があると誤解する人が多いので、要注意です。

ちなみに、地上権は物権で、賃借権は債権ですから、「借地権」は物権・債権双方の権利を含んだ概念ですが、「物権的な性格」、つまり、より排他性をもたせた権利ということができます。

3 賃貸借の存続期間

賃貸借の存続期間については、[民法]の規定では、賃貸借の存続期間は「20年」を超えることができません。

したがって、当事者間の契約で20年より長い期間(たとえば25年とか30年など)を定めても、「20年」とされます。
民法上は、最長でも「20年」なのです。

もちろん、存続期間を更新することはできますが、その場合でも、存続期間は、更新の時から「20年」を超えることができません。

これに対して、[借地借家法」では、

 ① 借地権については、その存続期間は「30年」と定められています。

建物所有が目的ですから、建物の耐用年数を考えて最低でも「30年」は必要だろうという趣旨です(更新すればもっと長く土地利用ができます)。

もし契約で30年より「長い期間」を定めたときは、「長い期間」の方が存続期間となります。

民法とは違い、50年とすることも可能です。

 ② 建物賃貸借(借家権)については、[民法]の存続期間に関する規定が明文で排除されていますので、20年を超えて(25年でも30年でも)定めることができます。
これも借家人の立場を考慮した規定です。

ただし1つだけ要注意です。
「1年未満」と定めたときには、「期間の定めがない賃貸借」とみなされます。

したがってこの場合には、賃貸人・賃借人双方は、いつでも解約の申入れをして契約を終了させることができます。

たとえば、選挙期間中にビルの事務所を借りたような場合です。
このような場合にまで、とくに賃借人を保護する必要もないでしょうから。

4 不動産賃貸借の対抗力──借地借家法の簡単な方法

[民法]では、土地や建物など不動産の「賃借権」を「登記」したときは、その後その不動産について物権を取得した者に対しても、効力を生じます。

この対抗要件については、[借地借家法]で追加修正されていますので、これもしっかり押さえておきましょう。

(1) 借地権の対抗要件は、

 ① 借地権の登記、または、
 ② 借地権者の「登記建物」の所有 です。

どちらか一方があれば、借地人は、第三者(たとえば地主から借地を譲り受けた譲受人など)に借地権を対抗することができます。

②の場合は、借地人が自分の「所有建物」について登記するわけですから1人で登記できますので、この点が借地人保護になっているのです。

(2) 建物賃貸借の対抗要件は、

 ① その登記、または、
 ② 「建物の引渡し」です。

どちらか一方があれば対抗要件となります。
これらの対抗要件もよく出題されますので要注意です。

5 条文の確認

■借地借家2条(定義)
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 借地権  建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権をいう。

■借地借家3条(借地権の存続期間)
借地権の存続期間は、30年とする。ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。

■借地借家10条(借地権の対抗力等)
借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。

■借地借家29条(建物賃貸借の期間)
1 期間を1年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす。
2 民法604条の規定(存続期間は20年を超えることができない)は、建物の賃貸借については、適用しない。

■借地借家31条(建物賃貸借の対抗力等)
1 建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。


(この項終わり)