|公開日 2017.7.14|最終更新日 2018.5.29

今回のテーマも試験には直接出題されるものではありません。どんな物権があって、その物権はどんな内容かなど、ごく基本的な知識ばかりです。受験者にはこうした基本的な知識はある、という前提で問題は出題されます。

1 物権の種類

1 物権法定主義

民法は175条で「物権は、この法律その他の法律に定めるもののほか、創設することができない」と定めています。

物権は、「民法」その他の「特別法」で定められたものに限られ、法律の認めない新しい種類の物権をつくったり、法律の内容と異なる内容を物権に与えることはできないとされているのです。

要するに、勝手に物権をつくるなということです。これを「物権法定主義」といいます。

どうして法律で決めてしまうのかというと、前回で解説しましたように、物権は直接・排他的な権利であることから第三者に対する影響が大きいために、取引当事者によっていろいろな種類の物権を勝手につくられたのでは非常に困るわけです。

したがって、法律であらかじめ物権の種類を限定し、権利内容を「定型化」しておいて、取引当事者は、この類型の中からどれかを選択できるだけである、ということにしたのです。
物権のメニューがすでにつくられていて、当事者はここから選ぶだけなのです。

2 物権の種類

物権法定主義により、民法が定めた物権は10種類ですが、試験に必要なのは次の9種類です。

1 占有権
物に対する「事実上の支配状態」を「一応」保護するために認められた物権です。
物権はそもそも物資を利用するために認められた権利なのですが、占有権は、このような物資の利用という「物権本来の内容を有する権利ではない」という特殊な性質を有します。

占有権は、ちょっとわかりにくい権利です。
物権の一種とされていますが、権利の「具体的な内容」がないのです。
所有権と比較するとわかりやすいでしょう。

たとえば、所有権の内容は、物を自由に「使用・収益・処分できる」権利ですが、占有権には、とくに「何かをする」という内容はありません。

地上権は、建物等を所有するために「他人の土地を使用する」権利であり、抵当権は、債権の弁済を受けるために「担保不動産について、他の債権者に先立って債権の弁済を受ける」権利です。

民法の条文には、それぞれ「所有権の内容」(206条)、「地上権の内容」(280条)、「質権の内容」(342条)、「抵当権の内容」(369条)として、その物権の「具体的な内容」が規定されているのですが、占有権については、「占有権の内容」という規定はどこにもありません。

実のところ、物が有するすべての価値(使用・収益・処分など)は、これらの権利があれば十分に実現できるのであって、とくに占有権がなくても問題はないのです。
そのためか、占有権は「物権ではない」という学者もいるくらいです。

占有権というのは、物の「現実の支配」があれば、それだけを根拠に成立が認められる物権で、物が人の支配内にあるときに、これを「占有」とし、この占有がありさえすれば、それが「正当な権利」(所有権、不動産賃借権などの本権)に基づくかどうかを一切問わずに、「占有権」を生じることとしたのです。

事実上の支配をそのまま認めて法秩序を維持するというのが最大の趣旨です。

ドロボーに「占有権」が認められるのも、この理由によるのです。
自分のパソコンを盗んだ犯人に対して、「実力行使」して取り返す権利はありません。
パソコンを「事実上支配している」犯人には、占有権があるからです。
ちゃんと「法的手続」をとらないといけないのです。

2 所有権
目的物がもっている「一切の価値」を自由に支配する全面的・包括的な物権で、物権の中心的存在です。

「一切の価値」には、3態様(使用・収益・処分)があります。
1 使用 自分で使用・利用する
2 収益 他人に利用させて使用料(家賃、地代)をとる
3 処分 売却したり、抵当権を設定して担保として信用力を得る

自分の家を「所有」していれば、そこに住むのも、他人に貸すのも、売り払うのも、借金の抵当に入れるのも、自由自在にできます。


次の3~5の物権は、他人の土地を使用収益する権利で「用益物権」といいます。

3 地上権
「建物」などを所有する目的で、他人の土地を利用する物権です。
土地を借りてそこに家を建てるというように、土地所有者と利用者の地上権設定契約で発生します(約定地上権)。

地上権そのものの出題はこの29年間ありませんが、地上権を理解しておけば、後で出てくる抵当権の「法定地上権」がよくわかります。

4 永小作権
「耕作・牧畜」をする目的で、他人の土地を利用する物権です。
土地を借りてそこで牧場を経営するというように、当事者間の永小作権設定契約で発生します。法令上の制限の「農地法」で出てきます。

地上権、永小作権の目的は、債権である「賃借権」によってほぼ実現できるため、他人の土地利用は、圧倒的に賃借権(賃貸借契約)によっています。

5 地役権
隣同士の土地利用を調節するための物権です。
道路に出るために隣人の土地を通行するというように、当事者間の地役権設定契約で発生します。「相隣関係」で登場する物権です。
法令上の制限の「土地区画整理法」でも、たまに出てきます。


次の6~9の物権は、債権を担保する、つまり「債務者から確実に弁済を受けられるようにする」ために利用される権利で「担保物権」といいます。

6 留置権
債務者の目的物を手元に留置して、債務の弁済をうながす担保物権です。
パソコンの修理代金を払ってもらうまで、パソコンを返さない、返して欲しければ「修理代金」を支払えというように、弁済を促すわけです。

7 先取特権
債務者の目的物を処分して、その代金から優先的に債権の弁済を受ける担保物権です。破産した債務者の総財産を処分して、従業員の給料を優先的に支払うというような場合です。

8 質 権
債務者の目的物を手元に留置して債務の弁済を促し、期限までに弁済がないときは質物を処分(競売)して、その代金から弁済を受ける担保物権です。

9 抵当権
目的物の占有を債務者の元にとどめておいて、期限までに弁済がないときは抵当物を処分して、その代金から弁済を受ける担保物権です。
根抵当権は、通常の抵当権の性質を大幅に修正した特殊な抵当権といえます。

これら所有権以外の物権は、所有権の有する部分的な機能・価値についてのみ限られた範囲でしか物を支配することができないため、「制限物権」と呼ばれます。

2 各物権の位置づけ

以上の物権をそれぞれ位置づけてみましょう。
覚える必要はありません。こんな感じかなという程度です。

物権の種類



(この項終わり)