|公開日 2017.8.07

[今回のテーマ]
■売主の担保責任の意味
■担保責任のさまざまな内容

1 売主の担保責任って?

あなたが土地・建物の売買契約をしたとします。

その土地・建物に何らかの欠陥(たとえば土地の一部が軟弱地盤の区域に入っていたとか、建物の基礎部分が十分に工事されていなかったなど)があったにもかかわらず、欠陥のない完全なもの・満足すべきものだと思って売買代金を支払ったとしましょう。

こんなとき、あなたはどうしますか?

売主に対して何らかの責任をとってほしいと思いませんか?

なぜなら、土地建物が「売買代金に見合ったものではなかった」からです。

このような場合、民法では、買主が売主に対して一定の責任を追及できることになっていますが、売主からみると一定の責任を負うことになりますので、これを「売主の担保責任」といいます。

売主は、対価に見合った物を引き渡さなかったので責任を追及されるわけですから、この欠陥について売主の不注意があったかどうか、過失があったかどうかは問題とされません。

つまり、担保責任はいわば無過失責任なのです。
売主に故意・過失があったときに責任を負う性質のものではありません。

2 担保責任のさまざまな内容

売主の担保責任については、欠陥(瑕疵)の種類・態様や買主の善意・悪意によって以下の表のようにまとめることができますが、これをそのまま覚える必要はありません。

それに「表」というのは記憶しにくいものですから。

それよりも、どうしてこうなるかを理解することが大事です。

しばらく眺めてみて考えてみてください。
(○=できる ×=できない ── = 問題にならない)

いろいろ違いが見えてきませんか?

売主の担保責任

たとえば「一部他人の権利」のところでは、買主の善意・悪意の区別があるのに、「数量不足・一部滅失」のところでは、善意の買主だけですね。

同じようなことは、「用益権等の制限」と「抵当権等の制限」の欄にも見られますね。

こうしたところをマークして理解していくことが大切です。

この表から、次のようなことが指摘できます。

【善意の買主】
買主が善意であれば、契約解除や損害賠償請求および代金減額請求が認められます。
これらは常識的にも納得できるでしょう。

【悪意の買主】
ここでのポイントは、むしろ悪意の買主にも認められている次の権利をしっかり押さえることにあります。

① 権利の全部が他人に属する場合の契約解除権
② 権利の一部が他人に属する場合の代金減額請求権
③ 抵当権等が実行されたときの契約解除権と損害賠償請求権

「数量不足・一部滅失」「用益権等の制限」については、善意の買主にのみ認められていますので、悪意の買主について覚えることは、①②③だけです。

簡単に、①全部解除、②一部代金、③抵当権解除損害、というように単語だけで覚えます。


以下、少し詳しくみておきましょう。

1 権利の全部が他人に属する場合

これは、権利の全部が他人に属していて、結局、買主にその権利が移転不能になった場合の売主の担保責任の問題です。

たとえば、AがBに、Aの所有地として売却したところ、その土地の所有者がCであったようなときです。

売主Aは、いずれCから取得できるものと思って、Bに売却したのかもしれませんし、所有権は自分に属すると思っていたところ、Cとの売買契約が錯誤で無効とされたために、Bに所有権を移転できなくなったということも考えられるでしょう。

いずれにせよ、他人の権利を売買の目的としたときには、売主は、その「権利を取得して買主に移転する義務を負う」(560条)ことになりますので、これが「移転不能(履行不能)」となったときには、売主は担保責任を負うことになります。

移転不能というのは、たとえば、Cから土地を購入して移転登記をしない間にAがBに転売したところ、Cが第三者に二重譲渡して登記を移転したというのが典型例でしょう。

買主が善意か悪意かで追及できる売主の担保責任が異なっています。

(1)善意の買主は、契約を解除することができ、損害があれば賠償請求ができます。

(2)悪意の買主でも、契約を解除することができます。
ただし損害賠償請求はできません。

悪意の買主は、売主は自分に権利を移転できないかもしれない(したがって損失が生じるかもしれない)ということは覚悟の上だということができるからです。

なお、解除および損害賠償の請求については、期間の制限はありません。

2 権利の一部が他人に属する場合

権利の一部が他人に属していたが、結局、それが買主に移転不能となった場合です。

購入した土地の一部が他人Cの所有地であったとか、Cとの共有地であったような場合がこれにあたります。

(1)善意の買主は、契約解除(ただし残存部分だけでは買わなかったという契約目的達成不能の場合に限る)、損害賠償請求、そして不足部分に対応する代金減額を請求することができます。

(2)悪意の買主も、代金減額請求だけは認められます。

これらの権利は、善意の買主が事実を「知った時」から1年以内に、悪意の買主は「契約時」から1年以内に行使しなければなりません。
法律関係の早期安定のために、とくに期間を限定したのです。

3 数量不足・一部滅失の場合

300㎡あるものとして購入した土地を実測したところ260㎡しかなかったような場合です。

(1)善意の買主のみ、契約解除(残存部分だけでは買わなかったとき)、損害賠償請求、代金減額請求ができます。

(2)悪意の買主は、事情を知って契約したのですから保護する必要はなく、これらの権利は一切ありません。

さて、前述した「権利の一部が他人に属する場合」には悪意の買主も代金減額請求ができるのに、「数量不足・一部滅失の場合」にこの権利がないのはなぜでしょうか。

前者の場合は、その一部を買主に移転する可能性が残っているのに対し、後者の場合は、そもそも物理的に一部が存在しないわけですから、最初からこれを知って契約したのであれば、当然にこの部分を除いて代金を算出していますので、とくに代金減額を認める必要はないのです。

前者との違いがおわかりでしょうか。

ところで、実測したところ330㎡あった、つまり数量が超過する場合に、売主は追加代金を請求することができるでしょうか。

【判例】は「数量指示売買において数量が超過する場合、超過部分の代金を支払う趣旨の合意があれば請求できるが、565条を類推適用して代金の増額を請求することはできない」(最判平13.11.27)としています。

4 地上権等などによって利用が制限されている場合

売買の目的物に地上権、地役権、留置権、質権など、他人の「制限物権」が設定されていて、買主がその不動産を利用できない場合の担保責任です。

不動産のために存すると称した地役権が存在しなかった場合や、その不動産について対抗力がある賃貸借があった場合も同じです。

(1)善意の買主は、契約解除(契約目的が達成できないとき)、損害賠償請求ができます。
契約目的の達成には支障がなく、したがって解除できないときでも、損害賠償請求をすることができます。

(2)悪意の買主には、これらの権利はありません。
利用できないことを知って契約したわけですからね。

5 抵当権等が設定されている場合

BがAから土地を買ったところ、AはCに対する債務の担保としてその土地にCのために抵当権を設定していたというような場合です。

抵当権が設定されている場合

Aが債務を弁済するなら問題はないのですが、Aに債務不履行があれば、Cの抵当権が実行され、Bは買った土地の所有権を失う危険があります。

このように、不動産に付着する抵当権の実行により、買主の取得した所有権が奪われた場合とか、あるいは抵当権の実行を免れるために買主が自己の費用で所有権を保全した場合には、売主に対して担保責任を追及することができます。

注意すべきは、単に抵当権が設定されていたというだけではこの権利はありません。

抵当権実行により所有権を失ったときにだけ認められます。

善意・悪意を問わず、買主は契約解除および損害賠償請求をすることができます。

売主が自ら債務を弁済して抵当権を消滅させて所有権の喪失を防ぐのは当然ですから、「悪意」の買主にもこの権利があるのです。

なお、買主が費用を支出してその所有権を保存したときは、売主に対して、その費用の償還を請求することができます。

6 その他のポイント

次の点も確認しておいてください。

1 売主の担保責任は相手方の履行と同時履行の関係に立つ
買主が契約を解除した場合には、支払った代金の全部または一部の返還を請求できますが、すでに受け取った物があれば、引き換えにこれを返還しなければなりません。

2 担保責任免除の特約も有効だが……
契約自由の原則により、売主が担保責任を負わないこととする特約も有効であることはいうまでもありません。

しかし、売主が権利や物自体の瑕疵を知りながら告げなかったり、また自分で第三者に譲渡していたり、抵当に入れていたようなときは、このような特約は無効で、売主は担保責任を免れることはできません。詐欺をしたようなものですからね。

3 代金の支払期限
売買の目的物の引渡しについて期限があるときは、代金の支払についても同一の期限を付したものと推定されます。

3 条文とポイントまとめ

1 条文の確認

■560条(他人の権利の売買における売主の義務)
他人の権利を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。

■561条(他人の権利の売買における売主の担保責任)
前条の場合において、売主がその売却した権利を取得して買主に移転することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の時においてその権利が売主に属しないことを知っていたときは、損害賠償の請求をすることができない。

■563条(権利の一部が他人に属する場合の売主の担保責任)
1 売買の目的である権利の一部が他人に属することにより、売主がこれを買主に移転することができないときは、買主は、その不足する部分の割合に応じて代金の減額を請求することができる。
2 前項の場合において、残存する部分のみであれば買主がこれを買い受けなかったときは、善意の買主は、契約の解除をすることができる。
3 代金減額請求または契約の解除は、善意の買主が損害賠償の請求をすることを妨げない。

■564条(担保責任の追及期間)
前条の規定による権利は、買主が善意であったときは事実を「知った時」から、悪意であったときは「契約の時」から、それぞれ1年以内に行使しなければならない。

■565条(数量不足・物の一部滅失の場合の売主の担保責任)
前二条の規定は、数量を指示して売買をした物に不足がある場合、または物の一部が契約の時に既に滅失していた場合において、買主がその不足または滅失を知らなかったときについて準用する。

■566条(地上権等がある場合等の売主の担保責任)
1 売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権または質権の目的である場合において、買主がこれを知らず「かつ」そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。
2(略)
3 契約の解除または損害賠償の請求は、買主が事実を「知った時」から1年以内にしなければならない。

■567条(抵当権等がある場合の売主の担保責任)
1 売買の目的である不動産について存した先取特権または抵当権の行使により買主がその所有権を失ったときは、買主は、契約の解除をすることができる。
2 買主は、費用を支出してその所有権を保存したときは、売主に対し、その費用の償還を請求することができる。
3 前二項の場合において、買主は、損害を受けたときは、その賠償を請求することができる。

2 ポイントまとめ

 権利の全部が他人に属する場合
土地の「全部」が他人のものであって、売主がこれを取得して買主に移転できないとき、買主は、善意・悪意に関係なく、契約を解除できる。

 権利の一部が他人に属する場合
土地の「一部」が他人の所有地で、売主がこれを買主に移転できない場合、残りの土地だけでは買わないときは、善意の買主は、契約解除、損害賠償請求ができる。
買主は善意・悪意に関係なく、不足部分の割合に応じて代金減額を請求できる(数量不足の場合とは異なる)。

 数量不足の場合
1,000㎡と指示したのに、700㎡しかなかったというように、数量指示売買で指示した数量に不足がある場合、その不足を知らなかった善意の買主だけが、代金減額請求、契約解除、損害賠償請求ができる。
不足を知った上で契約した悪意の買主に、これらの権利は認められない。

 地上権等の制限がある場合
地上権などの制限物権が設定されていて、そのために契約目的を達成できない場合、買主は善意のときに限り、契約を解除できる。
悪意の買主には、売主の担保責任を追及する権利は認められていない。

 抵当権がある場合(1)
土地に抵当権が設定されていても、買主は、それだけでは契約を解除できない。
買主は、善意・悪意に関係なく、抵当権の行使により「所有権を失ったとき」に解除できる。

 抵当権がある場合(2)
抵当権が設定されている場合、買主が、抵当権消滅請求や第三者弁済などにより、みずから費用を支出してその所有権を保存したときは、善意・悪意に関係なく、売主に対してその費用の償還を請求できる。

 担保責任を負わない旨の特約
担保責任を負わない旨の特約も有効。
しかし、売主は、知りながら告げなかった瑕疵については、責任を免れることはできない。

※ 先述した表も参照してください。


(この項終わり)