|公開日 2017.5.10


【問 1】 Aは、Bから建物を贈与(負担なし)する旨の意思表示を受け、これを承諾したが、まだBからAに対する建物の引渡し及び所有権移転登記はされていない。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。

 贈与が書面によらない場合であっても、Aが第三者Cに対して本件建物を売却する契約を締結した後は、Bは、本件贈与を取り消すことができない。

 贈与が書面によるものである場合で、Bが建物の所有権移転登記に応じないとき、Aは、Bに対して当該登記を求める訴えを裁判所に提起することができる。

 贈与契約締結後に、本件建物にしろありの被害のあることが判明したが、Bがその被害の存在を知らなかった場合、Bは、しろありの被害による建物の減価分についてAに対し担保責任を負わない。

 贈与が死因贈与であった場合、それが書面によるものであっても、特別の事情がない限り、Bは、後にいつでも贈与を取り消すことができる。

(平成10年 問9)



[解説&正解]

 誤り   [書面によらない贈与の撤回]*550条、最判昭40.3.26
書面によらない贈与は、各当事者がこれを撤回できるが、履行の終わった部分については撤回できない。
不動産贈与の場合、引渡しまたは登記があれば履行完了となるが、贈与者Bは受贈者Aに対し、建物の引渡しも移転登記もしていないため履行が終わったとはいえないので、この贈与を撤回することができる。
Aが第三者Cに「建物を売却する契約を締結」しても、Bの履行とは関係がない。


 正しい  [贈与者の債務]*549条
書面による贈与の場合、贈与者Bが移転登記に応じないときは、Bの債務不履行として、受贈者Aは、その移転登記を求める訴えを提起できる。
贈与者は、贈与契約によって負担した義務を債務の本旨に従って履行しなければならないから、引渡しだけでなく、登記の移転、債権譲渡の通知など、対抗要件を備える行為もしなければならないのである。


 正しい  [贈与者の担保責任]*551条
贈与は無償(対価を受け取らない)契約だから、負担付贈与でない限り、贈与者は原則として担保責任を負わない。現状のまま贈与するのが、贈与者の通常の意思だと考えられるからである(タダなんだから、キズや欠陥があっても我慢してねというわけ)。
ただ、瑕疵を知りながら受贈者に告げなかった悪意の場合に、担保責任を負うのである。
贈与者Bが、しろありの被害の存在を「知らなかった」(善意)場合には、担保責任を負うことはない。


 正しい  [死因贈与の撤回]*1022条、最判昭57.4.30
書面による死因贈与であっても、原則として、贈与者は、いつでも贈与を撤回することができる。遺贈と同様に、贈与者の最終意思を尊重すべきだからである。
ただし、贈与者の生前にすでに負担の履行が終わっている負担付死因贈与などのように、特段の事情があるとみられる場合には、撤回はできない。

[正解] 1


■しっかり読んでおきたい重要条文
*550条(書面によらない贈与の撤回)
書面によらない贈与は、各当事者が撤回することができる。
ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。
*551条(贈与者の担保責任)
1 贈与者は、贈与の目的である物または権利の瑕疵または不存在について、その責任を負わない。ただし、贈与者がその瑕疵または不存在を知りながら受贈者に告げなかったときは、この限りでない。
2 負担付贈与については、贈与者は、その負担の限度において、売主と同じく担保の責任を負う。


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【問 2】 Aは、生活の面倒をみてくれている甥のBに、自分が居住している甲建物を贈与しようと考えている。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

 AからBに対する無償かつ負担なしの甲建物の贈与契約が、書面によってなされた場合、Aはその履行前であれば贈与を撤回することができる。

 AからBに対する無償かつ負担なしの甲建物の贈与契約が、書面によらないでなされた場合、Aが履行するのは自由であるが、その贈与契約は法的な効力を生じない。

 Aが、Bに対し、Aの生活の面倒をみることという負担を課して、甲建物を書面によって贈与した場合、甲建物の瑕疵については、Aはその負担の限度において、売主と同じく担保責任を負う。

 Aが、Bに対し、Aの生活の面倒をみることという負担を課して、甲建物を書面によって贈与した場合、Bがその負担をその本旨に従って履行しないときでも、Aはその贈与契約を解除することはできない。

(平成21年 問9)



[解説&正解]

 誤り   [書面による贈与]*550条反対解釈
口約束などの書面によらない贈与については、履行の終わった部分を除いて、各当事者が自由に撤回することができるが、贈与が書面によってなされたときには、履行の前後に関係なく撤回することはできない。
贈与の意思が明確にされているからである。
※ 口約束による贈与のように「書面によらないとき」には、軽率に約束をしてしまうことも多いので、原則として撤回できる余地を残しているのである。


 誤り   [書面によらない贈与の効力]*549条
贈与契約の成立に書面は必要ない。
贈与は、一方が財産を無償で与える意思を表示し、相手方がこれを受諾をするという合意だけで成立し、効力を生じる。
したがって「書面によらない」贈与の場合でも、贈与者Aは、債務の本旨に従って履行しなければならず、「履行するのは自由である」とはいえないのである。


 正しい  [負担付贈与の担保責任]*551条2項
贈与の内容に、「生活の面倒をみる」という一定の給付義務(負担)を付けた負担付贈与は、この負担が実質的には対価的な性格を有するので、有償・双務契約に関する規定(同時履行の抗弁権や危険負担など)が適用される。
つまり負担の限度において、贈与者は売主と同じく担保責任を負うのである。


 誤り   [贈与の解除]*541条
負担付贈与の場合、受贈者Bがその「負担を履行しないとき」は債務不履行となるから、贈与者Aは、贈与契約を解除することができる。

[正解] 3


■しっかり読んでおきたい重要条文
*549条(贈与)
贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。

■ワンランク・アップ
1 贈与者の担保責任
贈与した目的物や権利に瑕疵があっても、贈与者がその瑕疵を知らなかったときは、瑕疵担保責任を負うことはありません。
贈与は、ただで財産権を与える無償契約であり、また、現状のまま贈与するのが贈与者の通常の意思だと考えられるからです。タダなんだからキズや欠陥があっても我慢してねというわけです。
ただし、瑕疵を知りながら受贈者に告げなかった悪意の贈与者は、担保責任を負わなければなりません。

2 死因贈与の撤回
死因贈与は贈与者の死亡によって効力が生じますが、死後の財産に関する処分については、遺贈と同様、贈与者の最終意思を尊重すべきですから、「遺言者は、いつでも、その遺言の全部または一部を撤回することができる」という遺言の撤回に関する規定が準用されます。
つまり、書面による死因贈与であっても、後に遺言でその贈与を撤回することができるのです。

3 死因贈与と遺贈
贈与者の死亡によって効力を生じる死因贈与には、遺贈(遺言による一方的な贈与)に関する規定が準用されます。
遺贈では、遺言者はいつでもその遺言を撤回することができ、また、前の遺言が後の遺言と矛盾・抵触するときは、抵触部分については、後の遺言により前の遺言を撤回したものとみなされます。

同じように、前の死因贈与が、後の遺贈と抵触するときは、抵触部分については、後の遺贈によって前の死因贈与を撤回したものとみなされます。
したがって、たとえば書面により死因贈与をした後でも、同じ目的物を第三者に遺贈するということもできるわけです。


(この項終わり)