|公開日 2017.5.10


【問 1】 AがBに対して建物の建築工事を代金3,000万円で注文し、Bがこれを完成させた。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 請負契約の目的物たる建物に瑕疵がある場合、瑕疵の修補が可能であれば、AはBに対して損害賠償請求を行う前に、瑕疵の修補を請求しなければならない。

 請負契約の目的物たる建物に重大な瑕疵があるためにこれを建て替えざるを得ない場合には、Aは当該建物の建替えに要する費用相当額の損害賠償を請求することができる。

 請負契約の目的物たる建物に瑕疵があり、瑕疵の修補に要する費用が契約代金を超える場合には、Aは原則として請負契約を解除することができる。

 請負契約の目的物たる建物の瑕疵について、Bが瑕疵担保責任を負わない旨の特約をした場合には、Aは当該建物の瑕疵についてBの責任を一切追及することができなくなる。

(平成18年 問6)



[解説&正解]

 誤り   [瑕疵修補請求と損害賠償請求]*634条、最判昭54.3.20
完成した目的物に瑕疵(欠陥)があれば不完全履行であるから、注文者Aは、請負人Bに対し瑕疵の修補を請求できる。しかし修補が可能であっても、修補を請求せずに、直ちに損害賠償を請求してもよい。
どちらを行使するかは、注文者の意思に委ねられており、先に修補を請求しなければならない義務はない。


 正しい  [損害賠償請求]*634条2項、635条、最判平14.9.24
判例によると、「重大な瑕疵」のために建て替えるほかはない場合には、建物の収去は社会経済的に大きな損失をもたらすものではなく、また、重大な瑕疵がある建物を建て替えてその費用を請負人に負担させることは、契約の履行責任に応じた損害賠償責任を負担させるものであり、請負人にとって過酷であるともいえないのである。
したがって建替え費用相当額の損害賠償請求をすることを認めても、635条ただし書の趣旨に反するものとはいえない、としている。

※ 比較的新しいこの事例はかなり悪質な欠陥住宅で、こうした場合でも解除できないという635条ただし書きの適用を制限した解釈というべきか。昨今の建築事情を反映した判決には違いないように思われる。


 誤り   [注文者の解除権──建物の場合]*635条ただし書
請負の目的物が、建物などの土地工作物である場合は、どんな場合でも、瑕疵を理由に契約を解除することはできない。
「瑕疵の修補に要する費用が契約代金を超える」場合であっても、解除はできないのである。
※ 契約を解除すると原状回復義務が生じるが、欠陥建物であっても除去することは経済的損失も大きく、請負人にも酷だと考えられているのである。


 誤り   [担保責任を負わない旨の特約は有効か]*640条
担保責任を負わない旨の特約(免責特約)も有効である。
しかしこれには例外があって、請負人は、知りながら告げなかった事実については、その責任を免れることはできない。詐欺に等しい不法といえるからである。
免責特約があるからといって「Bの責任を一切追及することができなくなる」わけではない。

[正解] 2

■しっかり読んでおきたい重要条文
*634条(請負人の担保責任──瑕疵の修補)
1 仕事の目的物に瑕疵があるときは、注文者は、請負人に対し、相当の期間を定めて、その瑕疵の修補を請求することができる。ただし、瑕疵が重要でない場合において、その修補に過分の費用を要するときは、この限りでない。
2 注文者は、瑕疵の修補に代えて、またはその修補とともに、損害賠償の請求をすることができる。この場合においては、533条(同時履行の抗弁権)を準用する。
*635条 (請負人の担保責任──契約解除)
仕事の目的物に瑕疵があり、そのために契約をした目的を達することができないときは、注文者は、契約の解除をすることができる。ただし、建物その他の土地の工作物については、この限りでない(解除できない)。
*640条(担保責任を負わない旨の特約)
請負人は、担保責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実については、その責任を免れることができない。


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【問 2】 請負契約により注文者Aが請負人Bに建物(木造一戸建て)を建築させた場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。ただし、担保責任に関する特約はないものとする。

 建物の完成後その引渡しを受けたAは、引渡しの時から2年以内に限り、その建物の瑕疵について、修補又は損害賠償の請求をすることができる。

 Bが建物の材料の主要部分を自ら提供した場合は、Aが請負代金の全額を建物の完成前に支払ったときでも、特別の事情のない限り、Bは、自己の名義で所有権の保存登記をすることができる。

 AがBから完成した建物の引渡しを受けた後、Cに対して建物を譲渡したときは、Cは、その建物の瑕疵について、Bに対し修補又は損害賠償の請求をすることができる。

 Aは、Bが建物の建築を完了していない間にBに代えてDに請け負わせ当該建物を完成させることとする場合、損害を賠償してBとの請負契約を解除することができる。

(平成7年 問10)



[解説&正解]

 誤り   [担保責任の存続期間──木造建物]*638条1項
「引渡しの時から2年以内」が誤り。
請負人の担保責任の存続期間は、原則として目的物を引き渡した時から1年以内であるが、本問のような木造建物については、引渡しの時から5年間である。
※ 建物などの土地工作物については瑕疵の発見が難しいため、その分、期間が長く設定されている。


 誤り   [建物所有権の移転時期は?]*最判昭46.3.5
請負人が材料の主要部分を提供した場合は、特約のない限り、建物の所有権は請負人がいったん取得し、引渡しによって注文者に移転するのが原則である。
しかし本肢のように、注文者が、建物完成前に代金全額を支払ったときは、完成と同時に注文者に所有権を帰属させる旨の合意がなされたものと認めることができるので、所有権は原則として工事完成と同時に注文者に帰属する。
したがって請負人は、自己名義で建物の所有権保存登記をすることはできない。


 誤り   [請負人の担保責任]*634条、635条
建物の買主Cは、建物の瑕疵については、売主Aに売買契約における瑕疵担保責任を請求することができるが、請負人Bに対し請負契約における担保責任(修補又は損害賠償)を請求することはできない。請求できるのは、注文者Aである。


 正しい  [注文者の解除権]*641条
請負人Bが仕事を完成しない間であれば、注文者は、いつでも損害賠償をして契約を解除し、Bに代えてDに請け負わせることができる。

※ 請負は、注文者の求めに応じて、請負人が一定の仕事を完成させるのが目的だから、その後何かの事情で、注文者がこの請負人には仕事を任せたくないと考えるようになったときには、継続させても意味がない。
むしろ、損害を賠償させて、注文者が自由に解除できるようにしたほうが、双方にとって有益といえるのである。

[正解] 4


■しっかり読んでおきたい重要条文
*638条(担保責任の存続期間)
1 建物その他の土地の工作物の請負人は、その工作物または地盤の瑕疵について、引渡しの後5年間その担保の責任を負う。
*641条(注文者による契約の解除)
請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。


(この項終わり)