|公開日 2017.5.10


【問 1】 Aは、Bから3,000万円の借金をし、その借入金債務を担保するために、A所有の甲地と、乙地と、乙地上の丙建物の上に、いずれも第1順位の普通抵当権(共同抵当)を設定し、その登記を経た。その後甲地については、第三者に対して第2順位の抵当権が設定され、その登記がされたが、第3順位以下の担保権者はいない。この場合、民法の規定によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。

 甲地が1,500万円、乙地が2,000万円、丙建物が500万円で競売され、同時に代価を配当するとき、Bはその選択により、甲地及び乙地の代金のみから優先的に配当を受けることができる。

 甲地のみが1,500万円で競売され、この代価のみがまず配当されるとき、Bは、甲地にかかる後順位抵当権者が存在しても、1,500万円全額(競売費用等は控除)につき配当を受けることができる。

 Bは、Aの本件借入金債務の不履行による遅延損害金については、一定の場合を除き、利息その他の定期金と通算し、最大限、最後の2年分しか、本件登記にかかる抵当権の優先弁済権を主張することができない。

 Bと、甲地に関する第2順位の抵当権者は、合意をして、甲地上の抵当権の順位を変更することができるが、この順位の変更は、その登記をしなければ効力が生じない。

(平成13年 問7)



[解説&正解]

 誤り   [同時配当における代価の配当方法]*392条1項
甲地、乙地、丙建物が競売され、その競売代金が同時に配当される同時配当の場合、後順位抵当権者も平等に配当参加する必要があるため、債権額は各不動産の価額に応じて按分されることになっている。
したがって抵当権者Bは、その選択により任意に「甲地及び乙地の代金のみから優先的に配当を受ける」ことはできないのである。
結局Bは、甲地から1,125万円、乙地から1,500万円、丙建物から375万円(合計3,000万円)の弁済を受けることになる。

(計算例)
・甲地 3,000万円×1,500万円/(1,500+2,000+500)万円=1,125万円
・乙地 3,000万円×2,000万円/(1,500+2,000+500)万円=1,500万円
・丙建物 3,000万円× 500万円/(1,500+2,000+500)万円= 375万円


 正しい  [異時配当の場合]*392条2項
1つの不動産だけを競売して配当する異時配当の場合は、抵当権者は、次順位の抵当権者が存在しても、競売代価から債権全部の優先弁済を受けることができる。
甲地のみが1,500万円で競売され、この代価のみが配当されるときは、抵当権者Bは、1番抵当権者として優先的に「1,500万円全額」の配当が受けられるのである。
※ ただし、次順位の抵当権者は、一定限度で、先順位抵当権者に代位して抵当権を行使することができる。次順位の抵当権者の利益を保護するためである。


 正しい  [遅延損害金の範囲]*375条2項
債務不履行による遅延損害金についても、抵当権の効力が及ぶのは最後の2年分に限るられ。ただし、利息その他の定期金と通算して2年分を超えることはできない。
※ 2年に限定したのは、後順位抵当権者等の利益を保護する必要があるからで、ほかに抵当権者等がいないときはこの制限はない。


 正しい  [抵当権の順位の変更]*374条
一番抵当を二番抵当に、二番抵当を一番抵当にするというように、抵当権の順位の変更は、各抵当権者の合意によってできるが、この順位の変更は、登記をしなければ効力が生じない(効力発生要件)。
※ 順位を変更しても、抵当権設定者の利害には影響しないから、抵当権設定者の承諾は不要である。

[正解] 1


■しっかり読んでおきたい重要条文
*374条(抵当権の順位変更)
1 抵当権の順位は、各抵当権者の合意によって変更することができる。
ただし、利害関係を有する者(差押債権者や転抵当権者)があるときは、その承諾を得なければならない。
2 順位の変更は、その登記をしなければ、その効力を生じない。
*392条(共同抵当における代価の配当)
1 (同時配当)債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において、同時にその代価を配当すべきときは、その各不動産の価額に応じて、その債権の負担を按分する。
2 (異時配当)債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において、ある不動産の代価のみを配当すべきときは、抵当権者は、その代価から債権の全部の弁済を受けることができる。
この場合において、次順位の抵当権者は、その弁済を受ける抵当権者が前項の規定に従い他の不動産の代価から弁済を受けるべき金額を限度として、その抵当権者に代位して抵当権を行使することができる。


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【問 2】 Aは、Bから借り入れた2,400万円の担保として第一順位の抵当権が設定されている甲土地を所有している。Aは、さらにCから1,600万円の金銭を借り入れ、その借入金全額の担保として甲土地に第二順位の抵当権を設定した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 抵当権の実行により甲土地が競売され3,000万円の配当がなされる場合、BがCに抵当権の順位を譲渡していたときは、Bに1,400万円、Cに1,600万円が配当され、BがCに抵当権の順位を放棄していたときは、Bに1,800万円、Cに1,200万円が配当される。

 Aが抵当権によって担保されている2,400万円の借入金全額をBに返済しても、第一順位の抵当権を抹消する前であれば、Cの同意の有無にかかわらず、AはBから新たに2,400万円を借り入れて、第一順位の抵当権を設定することができる。

 Bの抵当権設定後、Cの抵当権設定前に甲土地上に乙建物が建築され、Cが抵当権を実行した場合には、乙建物について法定地上権が成立する。

 Bの抵当権設定後、Cの抵当権設定前にAとの間で期間を2年とする甲土地の賃貸借契約を締結した借主Dは、Bの同意の有無にかかわらず、2年間の範囲で、Bに対しても賃借権を対抗することができる。

(平成18年 問5)



[解説&正解]

 正しい  [抵当権の順位の譲渡、放棄]*376条1項
抵当権の順位の譲渡と順位の放棄の違いに関する問題。
①B→Cへ抵当権の順位が譲渡されると、Cが一番抵当権者、Bが二番抵当権者となるから、Cが優先的に債権全額の1,600万円、Bにはその残額1,400万円が配当される(按分されないことに注意)。
また、②B→Cへ抵当権の順位が放棄されると、BとCは同順位になるから、配当額3,000万円は、B・Cの債権額に応じて比例按分され(2400:1600=3:2)、Bに1,800万円、Cに1,200万円が配当される。


 誤り   [先順位抵当権の消滅──順位昇進の原則]
Bの2,400万円の債権が債務者Aの弁済によって全額消滅すれば、抵当権の付従性により、登記抹消手続をしなくても、Bの第一順位抵当権は当然に消滅し、その結果、Cの第二順位抵当権が第一順位に昇進する(順位昇進の原則)。
したがって、Cが順位をBに譲渡するなどの同意がない限り、Bからの新たな2,400万円について、第一順位の抵当権を流用・設定することはできない。
第一順位の登記が抹消されずに残っていても、実体のない無効の登記であり、これを新たな債務のために流用できないのである。


 誤り   [建物の存在時期]*388条、最判昭47.11.2
更地である甲地にBによる第一順位の抵当権設定後、乙建物が建築され、その後、Cが甲地に第二順位の抵当権を設定して抵当権を実行しても、乙建物について法定地上権は成立しない。
法定地上権が成立するかどうかは、第一順位の抵当権設定当時の状態において決定されるため、この時に建物が存在していなければ、後順位抵当権の設定時に建物が存在しても、その建物のために法定地上権は成立しないのである。


 誤り   [抵当権者の同意の登記と賃貸借の対抗力]*387条1項
抵当地の賃借人Dは、抵当権者Bの「同意」がなければ、その賃借権をBに対抗できない。抵当権設定後の賃貸借は、その期間に関係なく、抵当権に対抗できないのであるが、一定要件があるときに限り保護される。
つまり、登記をした賃貸借は、先に登記をした抵当権者全員が同意をし、かつ、その同意の登記があるときに限って、抵当権者(したがって抵当不動産の競落人)に対抗することができるのである。

[正解] 1


■しっかり読んでおきたい重要条文
*376条(抵当権の処分)
1 抵当権者は、その抵当権を他の債権の担保とし、または同一の債務者に対する他の債権者の利益のために、その抵当権もしくはその順位を譲渡し、あるいは放棄することができる。
*387条(抵当権者の同意の登記がある場合の賃貸借の対抗力)
1 登記をした賃貸借は、その登記前に登記をした抵当権を有するすべての者が同意をし、かつ、その同意の登記があるときは、その同意をした抵当権者に対抗することができる。
2 抵当権者が前項の同意をするには、その抵当権を目的とする権利を有する者その他抵当権者の同意によって不利益を受けるべき者の承諾を得なければならない。



(この項終わり)