|公開日 2017.5.10


【問 1】 担保物権に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

 抵当権者も先取特権者も、その目的物が火災により焼失して債務者が火災保険金請求権を取得した場合には、その火災保険金請求権に物上代位することができる。

 先取特権も質権も、債権者と債務者との間の契約により成立する。

 留置権は動産についても不動産についても成立するのに対し、先取特権は動産については成立するが不動産については成立しない。

 留置権者は、善良な管理者の注意をもって、留置物を占有する必要があるのに対し、質権者は、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、質物を占有する必要がある。

(平成21年 問5)



[解説&正解]

 正しい  [担保物権の性質──物上代位]*304条1項、350条、372条
記述のとおり。
抵当権・先取特権には物上代位性があって、その目的物が火災により焼失して債務者が火災保険金請求権を取得した場合には、その火災保険金請求権に対しても効力を及ぼすことができる。


 誤り   [担保物権の成立]*303条
質権は、債権者と債務者の質権設定契約・目的物の引渡しによって成立する約定担保物権であるが、先取特権は社会政策的な理由から、法律に基づいて認められた法定の担保物権である。


 誤り   [担保物権の成立]*295条1項、311条、325条
留置権も先取特権もともに、動産および不動産について成立する。


 誤り   [善管注意義務]*298条1項、350条
留置権者も質権者もともに、目的物を「善良な管理者の注意をもって」占有(保管)する義務がある。

[正解] 1


■ワンランク・アップ  担保物権の性質
担保物権は債権を担保するという本質的な性質から、次の4つの性質が導かれます。
非常に重要な性質ですから、ぜひとも理解しておきましょう。
1 付従性(成立・消滅に関する性質)
担保物権は、特定の債権を担保するために設定されるものだから、その債権(被担保債権)が発生・成立しなければ担保物権も発生しないし、債権が消滅すれば担保物権も消滅する。これを付従性という(ただし、根抵当権については原則として認められない)。
2 随伴性(移転に関する性質)
被担保債権が第三者に移転すると、担保物権もこれに伴って第三者に移転する。
付従性の一側面であるが、とくに随伴性という。
3 不可分性(全額弁済に関する性質)
被担保債権の全額の弁済を受けるまでは、目的物の全部についてその権利を行うことができる。これを担保物権の不可分性という。これには明文の規定がある(296条、305条、350条、372条)。
4 物上代位性
担保物権には、債務の弁済が得られないときに、ほかの債権者(一般債権者)に優先して弁済を受けることのできる優先弁済的効力があり、債権担保を目的とする担保物権の中心的効力である。
この優先弁済的効力を有する先取特権、質権、抵当権は、目的物の売却・賃貸・滅失・毀損などによって債務者が受けるべき金銭その他の対価に対しても優先弁済権を及ぼすことができる。このような性質を物上代位性といい、これにも明文の規定がある(304条、350条、372条)。

■しっかり読んでおきたい重要条文
*298条(留置権者による留置物の保管義務)
1 留置権者は、善良な管理者の注意をもって、留置物を占有しなければならない。
*303条(先取特権の内容)
先取特権者は、この法律その他の法律の規定に従い、その債務者の財産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
*304条(物上代位)
先取特権・質権・抵当権は、その目的物の売却賃貸滅失または損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。
ただし、その払渡しまたは引渡しの前に差押えをしなければならない。


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【問 2】 担保物権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 建物の建築工事の費用について、当該工事の施工を行った者が先取特権を行使するためには、あらかじめ、債務者である建築主との間で、先取特権の行使について合意しておく必要がある。

 建物の賃借人が賃貸人に対して造作買取代金債権を有している場合には、造作買取代金債権は建物に関して生じた債権であるので、賃借人はその債権の弁済を受けるまで、建物を留置することができる。

 質権は、占有の継続が第三者に対する対抗要件と定められているため、動産を目的として質権を設定することはできるが、登記を対抗要件とする不動産を目的として質権を設定することはできない。

 借地人が所有するガソリンスタンド用店舗建物に抵当権を設定した場合、当該建物の従物である地下のタンクや洗車機が抵当権設定当時に存在していれば、抵当権の効力はこれらの従物に及ぶ。

(平成19年 問7)



[解説&正解]

 誤り   [不動産工事の先取特権]*327条
先取特権というのは、たとえば、一般債権者の債権よりも使用人の給料支払債権を優先させるというように、社会政策的な理由から、法律に基づいて認められた法定の担保物権である。
不動産工事費用の先取特権もこのような法定担保物権であるため、その行使について債務者との合意は必要ない。


 誤り   [造作買取代金債権に建物留置権はあるか]*最判昭29.1.14
判例は、造作買取代金債権は「造作」に関して生じた債権であって、「建物」に関して生じた債権ではないから、造作買取代金債権に基づいて建物を留置することはできないとしている。


 誤り   [質権の目的物]
「占有の継続」を対抗要件とするのは動産質権であるが、不動産に関する質権については、原則どおり「登記」が対抗要件である。
対抗要件の内容が、占有か登記か異なるだけで、質権は、動産にも不動産にも設定できることに異論はない。


 正しい  [抵当権の効力は従物に及ぶか]*370条、87条2項、最判平2.4.19
抵当権の効力は、抵当権設定当時の抵当不動産の従物にも及ぶ。
従物(地下タンク、洗車機)は、主物たる不動産(ガソリンスタンド用店舗)とは別個独立のもので、主物の所有権の内容になるものではないが、判例は「従物は、主物の処分に従う」(87条2項)を適用して、原則として抵当権の効力が及ぶとしている。

[正解] 4


■ワンランク・アップ  抵当権の効力の及ぶ物
1 付加一体物
建物に抵当権を設定すれば、その効力は、畳・建具(雨戸・ガラス戸・障子)などの付加一体物にも及ぶ。
付加一体物は、取りはずしが簡単であっても独立の存在を失って建物の一部を構成し、不動産所有権の内容になるから、付加した時期に関係なく、原則として抵当権の効力が及ぶのである。
2 果実に対する効力
抵当権の効力は、被担保債権の債務不履行があった後に生じた天然果実・法定果実にも及ぶ。
抵当権は、債務者が抵当不動産を占有して、その使用・収益を認める権利だから、そこから生じる果実(天然果実・法定果実)に抵当権が及ぶとしたのでは、使用・収益の意味がなくなってしまう。したがって果実に対しては、抵当権の効力が及ばないのが原則だったのである。
しかし、実務上の理由により、平成15年の法改正で、抵当債務の不履行を要件として果実を取得できることとなった。
*371条(果実に対する効力)
抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ。

■しっかり読んでおきたい重要条文
*370条(抵当権の効力の及ぶ範囲──付加一体物)
抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である抵当不動産に付加して一体となっている物に及ぶ。ただし、設定行為に別段の定めがある場合は、この限りでない。
*87条(主物、従物)
1 物の所有者が、その物の常用に供するため、自己の所有に属する他の物をこれに附属させたときは、その附属させた物を従物とする。
2 従物は、主物の処分に従う


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【問 3】 物上代位に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。なお、物上代位を行う担保権者は、物上代位の対象とする目的物について、その払渡し又は引渡しの前に他の債権者よりも先に差し押さえるものとする。

 不動産の売買により生じた債権を有する者は先取特権を有し、当該不動産が賃借されている場合には、賃料に物上代位することができる。

 抵当権者は、抵当権を設定している不動産が賃借されている場合には、賃料に物上代位することができる。

 抵当権者は、抵当権を設定している建物が火災により焼失した場合、当該建物に火災保険が付されていれば、火災保険金に物上代位することができる。

 不動産に留置権を有する者は、目的物が金銭債権に転じた場合には、当該金銭に物上代位することができる。

(平成17年 問5)



[解説&正解]

 正しい  [先取特権の物上代位]*304条、325条3号、328条
不動産の売主は、代金・利息について、その不動産の上に先取特権を有し、不動産が賃貸されている場合には、賃料に対して先取特権を行使できる(物上代位)。


 正しい  [抵当権の物上代位]*372条、304条
抵当権者は、抵当不動産が賃貸されている場合には、その賃料に対し物上代位することができる。
抵当権は、目的物がもっている交換価値(金銭に換算したらいくらになるかという価値)を支配する権利であって、目的物自体を使用する権利ではないから、何かの原因でその交換価値がほかの価値物に代わった場合には、その価値物に対して抵当権の効力を及ぼすことが合理的である。
つまり、抵当目的物の売却、賃貸、滅失・損傷などによって債務者が受け取る金銭、たとえば売買代金、賃料、火災保険金、損害賠償請求権などにも抵当権の効力が及ぶのである(物上代位)。
この物上代位性は、先取特権、質権にも認められている。


 正しい  [抵当権の物上代位]
解説2と同じ理由で、抵当権者は、抵当建物に付けられた火災保険金に物上代位することができる。


 誤り   [留置権の物上代位]
留置権者は、留置不動産が金銭債権に転じても、その金銭に物上代位することはできない。
留置権は、目的物自体を留置することが主たる内容であって、目的物の交換価値を支配する権利ではないから、物上代位性はないのである。

[正解] 4


(この項終わり)