|公開日 2017.5.10|最終更新日 2017.11.17


【問 1】 Aが死亡し、それぞれ3分の1の相続分を持つAの子B、C及びD(他に相続人はいない。)が、全員、単純承認し、これを共同相続した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 相続財産である土地につき、遺産分割協議前に、Bが、CとDの同意なくB名義への所有権移転登記をし、これを第三者に譲渡し、所有権移転登記をしても、CとDは、自己の持分を登記なくして、その第三者に対抗できる。

 相続財産である土地につき、B、C及びDが持分各3分の1の共有相続登記をした後、遺産分割協議によりBが単独所有権を取得した場合、その後にCが登記上の持分3分の1を第三者に譲渡し、所有権移転登記をしても、Bは、単独所有権を登記なくして、その第三者に対抗できる。

 相続財産である預金返還請求権などの金銭債権は、遺産分割協議が成立するまでは、相続人3人の共有に属し、3人全員の同意がなければ、その債務者に弁済請求できない。

 Bが相続開始時に金銭を相続財産として保管している場合、CとDは、遺産分割協議の成立前でも、自己の相続分に相当する金銭を支払うよう請求できる。

(平成15年 問12)



[解説&正解]

 正しい  [共同相続と単独登記]*177条/最判昭38.2.22
共同相続人Bが、勝手に土地所有権の単独名義をし、これを第三者に譲渡・登記しても、共同相続人C・Dは、登記なしに自己の持分を第三者に対抗できる。
遺産分割前の相続財産は、相続人全員の共有だから、Bの登記・処分は、C・Dの持分に関する限り無権利の登記であり、他人の権利の処分となるため、第三者も当然にはその権利を取得できないのである。


 誤り   [遺産分割と登記]*909条/最判昭46.1.26
遺産分割によって、相続分と異なる単独所有権を取得した相続人Bには、その分割時に共有持分から単独所有へと新たな物権変動が生じているため、第三者に対しては二重譲渡と同様に、民法177条の対抗問題となる
したがってBは、その登記がなければ、遺産分割後にCの共有持分を取得した第三者に対し、単独所有権を対抗することはできない。


 正しい  [金銭債権の相続]*899条/最判平28.12.19
平成15年の出題当時から最近まで、「可分の金銭債権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されて各共同相続人の分割単独債権となり、共有関係に立つものではない」(最判昭29.4.8、最判平16.4.20)と解されていたが、平成28年に判例が変更された。
つまり「預貯金一般の性格等を踏まえつつ各種預貯金債権の内容および性質をみると、共同相続された普通預金債権、通常貯金債権および定期貯金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となるものと解するのが相当」とされる。


 誤り   [分割前の金銭]*898条/最判平4.4.10
財貨としての金銭自体は、金銭債権とは異なり、遺産分割協議が成立するまでは分割されることなく、当然に共有とされる
したがって、相続財産として金銭を保管している相続人Bに対して、CとDは、遺産分割までは、自己の相続分に相当する金銭を支払うよう請求することはできないのである。

[正解] 1および3

■しっかり読んでおきたい重要条文
*898条(共同相続の効力)
相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。
*899条
各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。
*909条(遺産の分割の効力)
遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。


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【問 2】 成年Aには将来相続人となるB及びC(いずれも法定相続分は2分の1)がいる。Aが所有している甲土地の処分に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 Aが精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況になった場合、B及びCはAの法定代理人となり甲土地を第三者に売却することができる。

 Aが「相続財産全部をBに相続させる」旨の有効な遺言をして死亡した場合、BがAの配偶者でCがAの子であるときはCには相続財産の4分の1の遺留分があるのに対し、B及びCがAの兄弟であるときはCには遺留分がない。

 Aが「甲土地全部をBに相続させる」旨の有効な遺言をして死亡し、甲土地以外の相続財産についての遺産分割協議の成立前にBがCの同意なく甲土地を第三者Dに売却した場合、特段の事情がない限り、CはBD間の売買契約を無権代理行為に準じて取り消すことができる。

 Aが遺言なく死亡し、B及びCの協議により甲土地をBが取得する旨の遺産分割協議を有効に成立させた場合には、後になってB及びCの合意があっても、甲土地をCが取得する旨の遺産分割協議を成立させることはできない。

(平成18年 問12)



[解説&正解]

 誤り   [成年被後見人の財産管理]*7条、8条、843条
Aが精神上の障害により事理弁識能力(意思能力)を欠く常況になった場合、その財産管理は、後見開始の審判の際に選任された成年後見人が行う。
この審判手続を経ない間に、相続人B・Cが、勝手にAの法定代理人となってその財産を処分することは許されない。


 正しい  [遺留分権利者とその割合]*1028条、900条1号
「相続財産全部をBに相続させる」旨の遺言があっても、遺留分権利者の遺留分を侵害することはできない。
① 相続人が配偶者と子であるときの遺留分は、被相続人の財産の1/2だから、
子Cの遺留分は、1/2×1/2(Cの法定相続分)=1/4 となり、この遺言は、遺留分を侵害していない。また、
② 相続人B・Cが、Aの兄弟姉妹であるときは、はじめから遺留分はない。
遺留分が認められているのは、配偶者、子、直系尊属だからである。


 誤り   [分割方法の指定]*908条、最判平3.4.19
判例は「甲土地全部をBに相続させる」というように、「特定の遺産を特定の相続人に相続させる趣旨の遺言は、(遺贈するなど)特段の事情のない限り、その遺産を特定の相続人に単独で相続させる遺産分割の方法が指定されたものと解される」としている。
したがって被相続人Aが死亡すれば、遺産分割手続を経ずに、甲土地は直ちに相続人Bに承継されるから、Bが単独で第三者Dに売却しても、それは有効な売買契約であって無権代理行為ではないため、Cはこれを取り消すことはできない。

※ このような遺言は、遺産の一部の分割がなされたのと同様の効果を生じさせるものであって、他の共同相続人もこれに拘束され、これと異なる遺産分割協議をすることはできない。


 誤り   [遺産分割協議の変更]
甲土地をBが取得する旨の遺産分割協議後に、B・Cの合意により、その協議を変更し、Cが取得する旨の遺産分割協議を成立させることができる。
この点に、現行法上とくに問題はない。

[正解] 2


■しっかり読んでおきたい重要条文
*908条(遺産の分割方法の指定、遺産分割の禁止)
被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、あるいはこれを定めることを第三者に委託し、または相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。


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【問 3】 婚姻中の夫婦AB間には嫡出子CとDがいて、Dは既に婚姻しており嫡出子Eがいたところ、Dは平成25年10月1日に死亡した。他方、Aには離婚歴があり、前の配偶者との間の嫡出子Fがいる。Aが平成25年10月2日に死亡した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 Aが死亡した場合の法定相続分は、Bが2分の1、Cが5分の1、Eが5分の1、Fが10分の1である。

 Aが生前、A所有の全財産のうち甲土地についてCに相続させる旨の遺言をしていた場合には、特段の事情がない限り、遺産分割の方法が指定されたものとして、Cは甲土地の所有権を取得するのが原則である。

 Aが生前、A所有の全財産についてDに相続させる旨の遺言をしていた場合には、特段の事情がない限り、Eは代襲相続により、Aの全財産について相続するのが原則である。

 Aが生前、A所有の全財産のうち甲土地についてFに遺贈する旨の意思表示をしていたとしても、Fは相続人であるので、当該遺贈は無効である。

(平成25年 問10)



[解説&正解]

 誤り   [相続人と相続分]
子の相続分が誤り。
Aが死亡した場合、法定相続人はB、C、E(Dの代襲相続)、Fの4人である。
各自の相続分は次のとおり。

配偶者Bが1/2、子はC、E、F3人で1/2を分け合う。
Dを代襲相続するEは、親Dの相続分と同じ。Fは嫡出子だから、Cと同じ相続分。
したがって3人の割合は、C:E:F=1:1:1の均等となり、1/3ずつとなる。
・C=1/2×1/3=1/6
・E=1/2×1/3=1/6
・F=1/2×1/3=1/6


 正しい  [分割方法の指定]*908条、最判平3.4.19
判例は、特定の遺産を特定の相続人に相続させる趣旨の遺言は、特段の事情のない限り、単独で相続させる「遺産分割の方法が指定されたもの」と解している。
したがってCは、原則として甲土地の所有権を取得することになる。


 誤り   [分割方法の指定]*887条2項、908条、985条1項、最判平23.2.22
判例は、「相続させる」旨の遺言は、推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合には、(代襲者等に相続させる旨の意思を有していたとみるべき)特段の事情のない限り、その効力を生ずることはないとしている。
本肢は「特段の事情がない」とあるから、EがDを代襲相続することはない。

※ 仮に代襲相続があったとしても、遺留分の関係で、Eが「全財産を相続するのが原則」とはいえない。


 誤り   [遺贈]
相続人に対して、「全財産のうち甲土地」を特定遺贈する意思表示も有効である。
「相続人である」からという理由だけで、遺贈が無効となることはない。

[正解] 2

■しっかり読んでおきたい重要条文
*887条(代襲者の相続権)
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したときは(略)、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
*985条(遺言の効力の発生時期)
1 遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。


(この項終わり)