|公開日 2017.5.10


【問 1】 AがBの所有地を長期間占有している場合の時効取得に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 Aが善意無過失で占有を開始し、所有の意思をもって、平穏かつ公然に7年間占有を続けた後、Cに3年間賃貸した場合、Aは、その土地の所有権を時効取得することはできない。

 Aが善意無過失で占有を開始し、所有の意思をもって、平穏かつ公然に7年間占有を続けた後、その土地がB所有のものであることを知った場合、Aは、その後3年間占有を続ければ、その土地の所有権を時効取得することができる。

 Aが善意無過失で占有を開始し、所有の意思をもって、平穏かつ公然に7年間占有を続けた後、BがDにその土地を売却し、所有権移転登記を完了しても、Aは、その後3年間占有を続ければ、その土地の所有権を時効取得し、Dに対抗することができる。

 Aが20年間平穏かつ公然に占有を続けた場合においても、その占有が賃借権に基づくもので所有の意思がないときは、Bが賃料を請求せず、Aが支払っていないとしても、Aは、その土地の所有権を時効取得することができない。

(平成4年 問4)



[解説&正解]

 誤り   [自己占有と代理占有]*162条2項、181条
占有者Aは、時効期間継続中の途中でその土地を賃貸しても、土地所有権を時効取得することができる。
「所有の意思」をもって、「平穏かつ公然」に他人の物を自主占有した者は、占有の開始時に善意・無過失であれば、10年間で所有権を時効取得するが、この自主占有は、自分が直接所持する自己占有でも、賃貸して他人に所持させる代理占有でもよい。
Aは、7年間の自己占有と、Cに賃貸した3年間の代理占有をあわせて10年間自主占有したことになるのである。


 正しい  [途中で悪意に変わったときの時効期間]*162条2項、大判明44・4・7
所有権の取得時効に必要な期間は、占有者が占有開始時に、①善意かつ無過失であれば10年間、②それ以外の場合は20年間である。
占有者の善意・無過失は、占有開始時において問題とされるから、その時に善意・無過失であれば、のちに悪意に変わっても、10年の時効期間に変更はないのである。


 正しい  [取得時効と登記──時効完成前]*最判昭41.11.22
占有者Aの時効取得完成前(進行中)に、土地が原所有者B→Dに譲渡され移転登記が完了しても、Aは、その後3年間占有を続ければ所有権を時効取得し、その登記がなくても譲受人Dに対抗することができる。
占有者Aにとって譲受人Dは「第三者」ではなく、物権変動の当事者であるから、(あたかも時効取得をBに主張できるように)登記を必要としないのである。


 正しい  [賃借権に基づく占有]*162条1項、最判昭58.3.2
賃借人Aが賃借権に基づいて土地の占有を20年間継続しても、所有権を時効取得することはできない。
所有権を時効取得するための占有は、所有の意思をもってする自主占有でなければならないが、所有の意思があるかどうかは、本人の主観的な意思とは関係なく、占有の性質によって客観的に決まる。
Aは賃借人として占有するときは、賃借の意思はあっても所有の意思がない他主占有であるから、何年間占有を継続しても所有権を時効取得することはありえないのである。

[正解] 1


■ワンランク・アップ  取得時効と登記──時効完成後 *最判昭33.8.28
時効により不動産の所有権を取得しても、その登記がないときは、時効完成後旧所有者から所有権を取得し登記を経た第三者に対し、その善意であると否とを問わず、所有権の取得を対抗できない。

■しっかり読んでおきたい重要条文
*162条(所有権の取得時効)
1 20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
2 10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。


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【問 2】 A所有の土地の占有者がAからB、BからCと移った場合のCの取得時効に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 Bが平穏・公然・善意・無過失に所有の意思をもって8年間占有し、CがBから土地の譲渡を受けて2年間占有した場合、当該土地の真の所有者はBではなかったとCが知っていたとしても、Cは10年の取得時効を主張できる。

 Bが所有の意思をもって5年間占有し、CがBから土地の譲渡を受けて平穏・公然に5年間占有した場合、Cが占有の開始時に善意・無過失であれば、Bの占有に瑕疵があるかどうかにかかわらず、Cは10年の取得時効を主張できる。

 Aから土地を借りていたBが死亡し、借地であることを知らない相続人Cがその土地を相続により取得したと考えて利用していたとしても、CはBの借地人の地位を相続するだけなので、土地の所有権を時効で取得することはない。

 Cが期間を定めずBから土地を借りて利用していた場合、Cの占有が20年を超えれば、Cは20年の取得時効を主張することができる。

(平成16年 問5)



[解説&正解]

 正しい  [占有の承継──善意・無過失の承継]*162条2項、187条、最判昭53.3.6
前占有者Bの土地占有を譲渡により承継した承継人Cは、その選択に従い、①自己の占有のみを主張してもよいし、②自己の占有に前占有者の占有をあわせて主張してもよい。
承継人Cは悪意であっても、②を主張して、前占有者Bの8年間の善意・無過失の占有を承継して「10年の取得時効を主張できる」。

※ 判例によれば、②の場合、承継人が善意・無過失であるかどうかは、前占有者の占有開始の時点において判定されるから、占有開始時に前占有者が善意・無過失であれば、悪意の承継人もまた善意・無過失とされる。


 誤り   [占有の承継──瑕疵の承継]*187条2項
譲渡により、前占有者Bから占有を承継したCは、自己の占有にBの占有をあわせて主張できるが、この場合には、Bの瑕疵(悪意・過失・強暴・隠避)もまた承継することになる。
したがって、前占有者Bの占有に瑕疵があれば、瑕疵ある占有を承継したCは占有開始時に善意・無過失であっても、10年の取得時効を主張することはできない。
「Bの占有に瑕疵があるかどうか」にかかわるのである。


 誤り   [他主占有の相続と自主占有]*185条、最判平8.11.12
借地人B(他主占有)の相続人Cが、その土地を「相続により取得したと考えて利用していた」のであれば、その占有は外形的・客観的にみて所有の意思に基づくものといえるから、Cは、自主占有に基づき所有権を時効取得することができる。
判例は、被相続人の占有が他主占有であるのに、相続人Cが所有の意思をもって占有を承継した場合には、これを自主占有と認め、Cは、土地の占有を相続によって承継しただけでなく、新たに土地を事実上支配することによって自ら占有を開始したものであるとしている。


 誤り   [借地人としての他主占有]
Cの占有は借地人としての他主占有であって、所有の意思による自主占有ではないから、土地占有が20年を超えても所有権の取得時効を主張することはできない。

[正解] 1


■しっかり読んでおきたい重要条文
*187条(占有の承継)
1 占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、または自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる。
2 前の占有者の占有を併せて主張する場合には、その瑕疵をも承継する。


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【問 3】 所有権及びそれ以外の財産権の取得時効に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 土地の賃借権は、物権ではなく、契約に基づく債権であるので、土地の継続的な用益という外形的かつ客観的事実が存在したとしても、時効によって取得することはできない。

 自己の所有と信じて占有している土地の一部に、隣接する他人の土地の筆の一部が含まれていても、他の要件を満たせば、当該他人の土地の一部の所有権を時効によって取得することができる。

 時効期間は、時効の基礎たる事実が開始された時を起算点としなければならず、時効援用者において起算点を選択し、時効完成の時期を早めたり遅らせたりすることはできない。

 通行地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。

(平成22年 問3)



[解説&正解]

 誤り   [不動産賃借権の時効取得]*最判昭43.10.8
判例は、債権である不動産賃借権の時効取得を積極的に認めている。
「占有」という点で、地上権などと区別する必要がないからである。
つまり、①「土地の継続的な用益という外形的事実」が存在し、かつ、②それが賃借の意思に基づくことが「客観的に表現」されているときは、土地賃借権を時効により取得することができるのである。


 正しい  [一筆の土地の一部の時効取得]*大連判大13.10.7
土地の個数は、登記簿上の記載によって決定され、登記簿上1個の物とされている土地は一筆の土地とされる。
判例は、一筆の土地の一部は、分筆の手続がなされていなくても、その部分が当事者間において具体的に特定されていれば、時効による所有権取得が認められるとしている。


 正しい  [時効の起算点]*144条、最判昭35.7.27
記述のとおり。時効期間は、時効の基礎たる事実の開始時を起算点としなければならず、時効援用者において起算点を選択し、時効完成の時期を早めたり遅らせたりすることはできないのである。

※ 時効制度の本来の性質からいえば、同一の事実状態が一定期間継続すれば、起算点の時期に関係なく時効を認めても問題はないように思える。
しかし判例は、「時効による不動産所有権取得の有無を考察するにあたっては、単に当事者間のみならず第三者に対する関係も同時に考慮しなければならないのであって、この関係においては、結局当該不動産についていかなる時期に何人によって登記がなされたかが問題となるのである」としており、この関係では登記が決定的に問題となり、登記の前後により時効による権利取得を対抗できるかどうかが決まるのである。
そのため取得時効完成の時期を定める場合には、取得時効の基礎たる事実が時効期間以上に継続した場合においても、必ず時効の基礎となる事実の開始した時を起算点として時効完成の時期を決定すべきものとされるのである。


 正しい  [通行地役権の時効取得]*283条
283条の条文どおりで正しい。
通行地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。

[正解] 1


■しっかり読んでおきたい重要条文
*144条(時効の効力)
時効の効力は、その起算日にさかのぼる。
*283条(地役権の時効取得)
地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。


(この項終わり)