|公開日 2017.5.10


【問 1】 AがBに対し土地の売却の意思表示をしたが、その意思表示は錯誤によるものであった。この場合、次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 錯誤が、売却の意思表示の内容の重要な部分に関するものであり、法律行為の要素の錯誤と認められる場合であっても、この売却の意思表示が無効となることはない。

 錯誤が、売却の意思表示をなすについての動機に関するものであり、それを当該意思表示の内容としてAがBに対して表示した場合であっても、この売却の意思表示が無効となることはない。

 錯誤を理由としてこの売却の意思表示が無効となる場合、意思表示者であるAに重過失があるときは、Aは自らその無効を主張することができない。

 錯誤を理由としてこの売却の意思表示が無効となる場合、意思表示者であるAがその錯誤を認めていないときは、Bはこの売却の意思表示の無効を主張できる。

(平成17年 問2)



[解説&正解]

 誤り   [要素の錯誤]*95条
意思表示の内容にささいな勘違いや錯誤があっても、意思表示の効力に影響はなく有効だが、「重要な部分」に錯誤があり、その錯誤が「法律行為の要素の錯誤」と認められるときには、その意思表示は無効となる。
このような場合にまで有効としたのでは、錯誤をした表意者に気の毒だからである。


 誤り   [動機の錯誤──表示された動機]*最判昭29.11.26
契約をする「動機」に勘違い・錯誤があっても、それだけでは錯誤を理由に契約の無効を主張することはできない。内心の動機は、本来相手方には表示されないため、後になって相手方にもわからなかった動機の錯誤を意思表示の錯誤として無効を認めると、相手は安心して取引をすることができず、取引の安全を害する
したがって、動機が表示されて、相手方にもわかるように「意思表示の内容」となったときには、意思表示の要素の錯誤として無効となることがある。
動機の表示・非表示(隠された動機と表示された動機)を区別して、相手方の利益との調和を図ったというわけである。


 正しい  [表意者に重過失があったら?]*95条
錯誤があっても、意思表示者Aに重大な過失があるときは、A自らその無効を主張できない。相手方を犠牲にしてまで、あまりに軽率な表意者を保護する必要はないからである。


 誤り   [相手方が無効を主張できるか]*最判昭40.9.10
表意者Aが「錯誤を認めていないとき」は、相手方Bから錯誤無効を主張することはできない。
錯誤による意思表示を無効とした95条の趣旨は、重大な勘違いをした表意者を保護するためだから、その表意者自身が、錯誤による無効を主張する意思がない以上、原則として、自己の意思表示を有効として扱う意思と考えられ、したがって相手方や第三者から無効を主張することは許されないのである。

[正解] 3


■ワンランク・アップ  動機の錯誤 *最判昭45.5.29
意思表示の動機の錯誤が法律行為の要素の錯誤としてその無効をきたすためには、その動機が相手方に表示されて法律行為の内容となり、もし錯誤がなかったならば表意者がその意思表示をしなかったであろうと認められる場合であることを要する。

■しっかり読んでおきたい重要条文
*95条(錯誤)
意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。
ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。


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【問 2】 民法第95条本文は、「意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。」と定めている。これに関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 意思表示をなすに当たり、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。

 表意者自身において、その意思表示に瑕疵(かし)を認めず、民法第95条に基づく意思表示の無効を主張する意思がない場合は、第三者がその意思表示の無効を主張することはできない。

 意思表示をなすについての動機は、表意者が当該意思表示の内容とし、かつ、その旨を相手方に明示的に表示した場合は、法律行為の要素となる。

 意思表示をなすについての動機は、表意者が当該意思表示の内容としたが、その旨を相手方に黙示的に表示したにとどまる場合は、法律行為の要素とならない。

(平成21年 問1)



[解説&正解]

 正しい  [要素の錯誤と重過失]*95条
意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは無効とされるが、「表意者に重大な過失があったとき」は、表意者は、自らその無効を主張することができない。
相手方の利益を犠牲にしてまで、あまりに軽率な表意者を保護する必要はないからである。


 正しい  [第三者の無効主張]*最判昭40.9.10
表意者自身において、その意思表示に瑕疵(かし)を認めず、95条に基づく意思表示の無効を主張する意思がない場合は、第三者がその意思表示の無効を主張することはできない。
95条の趣旨は意思表示者の保護にあるから、表示者自身が意思表示の瑕疵を認めず、錯誤による無効を主張する意思がない以上、相手方や第三者から無効を主張することは許されないのである。


 正しい  [動機の錯誤]*最判昭29.11.26
判例は、意思表示の動機に錯誤があっても、その動機が相手方に表示されなかったときは、法律行為の要素に錯誤があったものとはいえないとしている。
いいかえれば、意思表示をする場合の動機は、表意者が意思表示の内容とし、かつ、その旨を相手方に明示的に表示した場合は、法律行為の要素となるのである。


 誤り   [動機の錯誤]*最判平1.9.14
判例は、動機を意思表示の内容とした場合、その動機が「黙示的に表示」されているときであっても、法律行為の内容となることを妨げるものではないとしている。

[正解] 4


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【問 3】 Aが、Bの欺罔行為によって、A所有の建物をCに売却する契約をした場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 Aは、Bが欺罔行為をしたことを、Cが知っているときでないと、売買契約の取消しをすることができない。

 AがCに所有権移転登記を済ませ、CがAに代金を完済した後、詐欺による有効な取消しがなされたときには、登記の抹消と代金の返還は同時履行の関係になる。

 Aは、詐欺に気が付いていたが、契約に基づき、異議をとどめることなく所有権移転登記手続をし、代金を請求していた場合、詐欺による取消しをすることはできない。

 Cが当該建物を、詐欺について善意のDに転売して所有権移転登記を済ませても、Aは詐欺による取消しをして、Dから建物の返還を求めることができる。

(平成14年 問1)



[解説&正解]

本問は、通常の詐欺のように相手方に欺されたのではなく、契約当事者以外の第三者に欺されて契約したいわゆる「第三者の詐欺」に関する問題である。

第三者の詐欺


 正しい  [相手方の悪意]*96条2項
第三者Bによる詐欺の場合、Aは、契約の相手方Cが、Bの詐欺を知っている悪意のときに限って、契約を取り消すことができる。
相手方Cが悪意であるということは、要するに第三者Bの欺罔行為を利用しているのであって、あたかもC自身が欺罔行為をしたのと同視できるからである。


 正しい  [取消し後の原状回復義務]*533条、最判昭47.9.7
詐欺を理由に契約が取り消された場合、その清算として、当事者は互いに相手方を契約締結前の状態に戻す原状回復義務を負うことになる。
この場合、売主Aの代金返還義務と、買主Cの登記抹消義務は、公平の見地から、互いに引き換えに履行すべき同時履行の関係に立つ。


 正しい  [法定追認]*125条1号・2号
詐欺に気が付いていたAが、「異議をとどめることなく」登記手続をし、代金を請求していた場合、もはや詐欺による取消しをすることはできない。
詐欺や制限行為能力などを理由に取り消すことができる契約について、異議なしに、①全部または一部の履行(登記手続や引渡しなど)や、②履行の請求(代金請求や引渡請求など)のように、追認と同視できる一定の事実があるときは、その契約を追認したものとみなされ、以後取り消すことはできなくなるのである(法定追認)。


 誤り   [第三者詐欺による取消しと善意の第三者]*96条3項
第三者の詐欺の場合、相手方Cが悪意であれば、Aは詐欺を理由に契約を取り消すことができるが、この取消しは、(第三者の詐欺であれ、相手方の詐欺であれ)善意の第三者に対抗することができない。
したがってAは、所有権移転登記を済ませた善意の第三者Dの所有権取得を認めなければならず、建物の返還を求めることはできない。

[正解] 4


■ワンランク・アップ  法定追認 *125条
詐欺や制限行為能力などを理由に取り消すことができる契約について、異議なしに、①全部または一部の履行(登記手続や引渡しをするなど)や、②履行の請求(代金請求や引渡請求をするなど)のように、追認と同視できるような一定の事実があるときは、その契約を追認したものとみなされ、以後、有効と確定して取り消すことができなくなります。これを法定追認といいます。法律関係を安定させるためです。

■しっかり読んでおきたい重要条文
*96条(詐欺、強迫)
1 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない



(この項終わり)