|公開日 2017.5.10


【問 1】 Aは、Bに対して貸付金債権を有しており、Aはこの貸付金債権をCに対して譲渡した。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。

 貸付金債権に譲渡禁止特約が付いている場合で、Cが譲渡禁止特約の存在を過失なく知らないとき、BはCに対して債権譲渡が無効であると主張することができない。

 Bが債権譲渡を承諾しない場合、CがBに対して債権譲渡を通知するだけでは、CはBに対して自分が債権者であることを主張することができない。

 Aが貸付金債権をDに対しても譲渡し、Cへは確定日付のない証書、Dへは確定日付のある証書によってBに通知した場合で、いずれの通知もBによる弁済前に到達したとき、Bへの通知の到達の先後にかかわらず、DがCに優先して権利を行使することができる。

 Aが貸付金債権をEに対しても譲渡し、Cへは平成15年10月10日付、Eへは同月9日付のそれぞれ確定日付のある証書によってBに通知した場合で、いずれの通知もBによる弁済前に到達したとき、Bへの通知の到達の先後にかかわらず、EがCに優先して権利を行使することができる。

(平成15年 問8)



[解説&正解]

 正しい  [譲渡禁止の特約と第三者]*466条2項、最判昭48.7.19
債権者・債務者間で、債権譲渡を禁止する特約をすることができるが、この特約は善意の第三者に対抗できない。
つまり、債務者Bは、譲渡禁止特約の存在を「過失なく知らない」善意無過失の譲受人Cに対して、債権譲渡の無効を主張できないのである。

※ 善意の第三者は無過失であることを要するかについて、判例は『重大な過失は、悪意と同様に扱うべき』として、善意でも重過失があれば、債務者は、禁止特約を対抗できるとした。重過失は悪意に匹敵するというわけである。
いいかえれば、善意の第三者は過失(軽過失)があっても債権を取得できるのである。


 正しい  [債権譲渡の通知]*467条1項
債権譲渡についての債務者に対する対抗要件は、
① 譲渡人から債務者への通知か、または、
② 債務者の承諾 である。
したがって、②債務者Bが承諾しない場合は、①の譲渡人の通知が必要となるから、譲受人CがBに通知するだけでは、自分が債権者であることを主張できない。

※ 譲受人が確定日付ある証書による通知をしても、債務者に対して債務の履行を請求できない。通知は、譲渡により債権を失う譲渡人がするからこそ信頼性があるのだから、譲渡人がしなければならず、譲受人の通知は、たとえ確定日付があっても無効である。


 正しい  [対抗力のある通知]*467条2項
通知が、Cへの確定日付のない証書と、Dへの確定日付のある証書によってなされた場合、Dへの債権譲渡が対抗力を有するから、「通知の到達の先後にかかわらず」DがCに優先して債権を取得する。
通知は、確定日付のある証書によらなければ、債務者以外の第三者に対抗することができないため、確定日付のない証書で通知されたCへの譲渡は、対抗力がないのである。

債権譲渡


 誤り   [債権の二重譲渡と優劣の基準]*最判昭49.3.7
債権譲渡の通知は、意思表示と同じく到達によって効力を生じる
したがって、債権が二重譲渡され、ともに「確定日付のある証書」で通知があったときは、その優劣は、確定日付の先後ではなく、通知が債務者に到達した日時の先後によって決定される。
必ずしも先日付(10/9)のEが、後日付(10/10)のCに優先するとは限らないのである。

[正解] 4


■しっかり読んでおきたい重要条文
*466条(債権の譲渡性)
1 債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。
2 前項の規定は、当事者が反対の意思を表示した場合には適用しない。ただし、その意思表示は、善意の第三者に対抗することができない。
*467条(指名債権の譲渡の対抗要件)
1 指名債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、または債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
2 譲渡の通知または承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。

★☆ 素朴な疑問/確定日付のある証書って? ☆★
確定日付のある証書というのは、たとえば公正証書や内容証明郵便などをいいます。
これらの証書は、公証人とか郵便局長など職業的規律に服する人が、客観的な第三者の立場で日付を記載するため、取引の当事者の共謀によって日付を勝手に操作することが不可能となります。
日付が法律上の権利を左右する場面では、決定的な証拠力となるのです。


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【問 2】 AがBに対して1,000万円の代金債権を有しており、Aがこの代金債権をCに譲渡した場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 AB間の代金債権には譲渡禁止特約があり、Cがその特約の存在を知らないことにつき重大な過失がある場合には、Cはこの代金債権を取得することはできない。

 AがBに対して債権譲渡の通知をすれば、その譲渡通知が確定日付によるものでなくても、CはBに対して自らに弁済するように主張することができる。

 BがAに対して期限が到来した1,000万円の貸金債権を有していても、AがBに対して確定日付のある譲渡通知をした場合には、BはCに譲渡された代金債権の請求に対して貸金債権による相殺を主張することができない。

 AがBに対する代金債権をDに対しても譲渡し、Cに対する債権譲渡もDに対する債権譲渡も確定日付のある証書でBに通知した場合には、CとDの優劣は、確定日付の先後ではなく、確定日付のある通知がBに到着した日時の先後で決まる。

(平成23年 問5)



[解説&正解]

 正しい  [譲渡禁止の特約と第三者]*466条2項、最判昭48.7.19
譲渡禁止特約は、善意の第三者に対抗することができないが、最高裁は「重大な過失は、悪意と同様に扱うべき」として、善意でも重過失があれば譲渡禁止特約を対抗できるとする。
譲受人Cが「重大な過失」によって特約の存在を知らない場合には、Cはこの代金債権を取得することはできないのである。


 正しい  [通知の効力]*467条1項
債権者が債務者に対して債権譲渡の通知をすれば、その通知が確定日付によるものでなくても、譲受人は債権を取得するから、債務者に対して「自らに弁済するように主張することができる」。


 誤り   [債権譲渡における債務者の抗弁]*468条2項
譲渡人が債権譲渡の通知をしたにとどまるときは、債務者は、その通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる。
したがって、債務者Bは、譲受人Cによる代金債権の請求に対して、通知前から有するAに対する貸金債権による相殺を主張することができる。


 正しい  [債権の二重譲渡と優劣の基準]*最判昭49.3.7
債権譲渡の通知は到達によって効力を生じるから、債権が二重譲渡され、ともに「確定日付のある証書」で通知があったときは、その優劣は、確定日付の先後ではなく、通知が債務者に「到達した日時の先後」によって決まる。

[正解] 3


■しっかり読んでおきたい重要条文
*468条(債権譲渡における債務者の抗弁)
2 譲渡人が譲渡の通知をしたにとどまるときは、債務者は、その通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる。


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【問 3】 Aが、Bに対する債権をCに譲渡した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 AのBに対する債権に譲渡禁止の特約があり、Cがその特約の存在を知りながら債権の譲渡を受けていれば、Cからさらに債権の譲渡を受けた転得者Dがその特約の存在を知らなかったことにつき重大な過失がない場合でも、BはDに対して特約の存在を対抗することができる。

 AがBに債権譲渡の通知を発送し、その通知がBに到達していなかった場合には、Bが異議をとどめない承諾をしても、BはCに対して当該債権に係る債務の弁済を拒否することができる。

 AのBに対する債権に譲渡禁止の特約がなく、Cに譲渡された時点ではまだ発生していない将来の取引に関する債権であった場合、その取引の種類、金額、期間などにより当該債権が特定されていたときは、特段の事情がない限り、AからCへの債権譲渡は有効である。

 Aに対し弁済期が到来した貸金債権を有していたBは、Aから債権譲渡の通知を受けるまでに、異議をとどめない承諾をせず、相殺の意思表示もしていなかった。その後、Bは、Cから支払請求を受けた際に、Aに対する貸金債権との相殺の意思表示をしたとしても、Cに対抗することはできない。

(平成28年 問5)



[解説&正解]

 誤り   [悪意の譲受人からの転得者]*466条2項、大判昭13.5.14
債権譲渡の禁止特約は、善意の第三者に対抗できないが、善意の第三者は転得者であってもよい。
譲渡禁止特約を知っている悪意の譲受人Cから、さらにその債権を転得したDが善意であれば(軽過失があってもよい)、債務者BはDに対して禁止特約を対抗することはできない。


 誤り   [異議をとどめない承諾]*468条1項
譲渡の通知が債務者Bに到達していなかったとしても、Bは「異議をとどめない承諾」をしたのであるから、譲渡人Aに対して主張できた一切の抗弁事由を譲受人C主張することができず、したがってCに対する弁済も拒否することはできない。


 正しい  [将来債権の譲渡]*最判平11.1.29
判例は、将来発生すべき将来債権の譲渡について、「債権発生の可能性」を要件とせずに、取引の種類や発生原因、金額、期間の始期・終期を明確にするなどして、債権が具体的に「特定」することができれば有効に譲渡できるとしている。


 誤り   [異議をとどめない承諾の効力]*468条1項
債務者Bが「異議をとどめない承諾」をしていないのであるから、譲受人Cから支払請求を受けた際には、Aに対する貸金債権(反対債権)との相殺をもって、Cに対抗することができる。

[正解] 3


■ワンランク・アップ
1 債権譲渡の対抗要件
債権譲渡について、債務者Bの承諾がないときは、譲渡人AからBに通知をしないと、債権の譲受人Cは、Bに対して債権を行使できません。
譲受人が、債務者に対してその債権を行使するためには、
① 譲渡人が債務者に通知するか、または、
② 債務者の承諾 を必要とします。
債権者が変更した事実を債務者が知らないときは、誤って弁済してしまいますから
①、②のどちらか一方が必要なのです。

債権譲渡


2 債権譲渡と保証債務の随伴性
債権譲渡の通知または承諾があれば、保証人についても効力を生じ、保証人は、新債権者に対し保証債務を負うことになります。
主たる債務が移転するときは、保証債務もともに移転しますから(随伴性)、主たる債務の譲渡が債務者に対抗できるようになれば、保証人も当然に新債権者に対して担保する責任を負うのです。

3 予約完結による債権譲渡の効力(最判平13.11.27)
判例によれば、債権譲渡の予約について確定日付ある証書による通知や承諾がなされても、債務者は、これによって予約完結権の行使により債権の帰属が将来変更される可能性を了知するにとどまり、債権の帰属に『変更が生じた事実を認識するものではない』から、予約完結によりなされる債権譲渡の効力を第三者に対抗できないとしています。

4 対抗要件に関する判例のルール
① 確定日付ありの通知となしの通知では、ありが優先する。
② 両方とも確定日付ありのときは、日付ではなく、到達の先後で決する。


(この項終わり)