|公開日 2017.5.10


【問 1】 AとBが、Cから土地を購入し、Cに対する代金債務については連帯して負担する契約を締結した場合で、AとBの共有持分及び代金債務の負担部分はそれぞれ1/2とする旨の約定があるときに関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。

 Cは、AとBに対して、同時に、それぞれ代金全額の支払いを請求することができる。

 Cが、Aに対し代金の支払いを請求した場合、その効力はBにも及ぶ。

 Cが、Aに対して代金債務の全額の免除をした場合でも、Bに対して代金の1/2の支払いを請求することができる。

 Cが、本件売買契約を解除する意思表示をAに対してした場合、その効力はBにも及ぶ。

(平成8年 問4)



[解説&正解]

 正しい  [連帯債務の性質──請求]*432条
債権者Cは、連帯債務者Aに対して代金全額の支払いを請求すると同時に、連帯債務者Bに対しても代金全額の支払いを請求することができる。
連帯債務では、債権者は、連帯債務者の1人または数人、あるいは全員に対して、全部または一部の履行を請求をすることができる。この請求は、同時にしても、順次にしてもよい(Aが代金全額を支払えば、Bはもはや支払う必要がないのはもちろんである)。


 正しい  [1人に対する請求の効力]*434条
連帯債務者の1人に対する履行の請求は、他の連帯債務者に対しても効力を生じる(絶対的効力)。したがってCが、Aに対し代金の請求をすれば、その効力はBにも及ぶことになる。
※ Aに対して履行請求すれば、Bについて履行遅滞、時効中断の効果が生じる。


 正しい  [1人に対する免除の効力]*437条
連帯債務者の1人に対して債務の免除をすれば、免除された連帯債務者の負担部分についてだけ、他の連帯債務者の利益のためにも、その効力を生じる(絶対的効力)。
Cが、Aに対して全額の免除をすれば、Aの負担部分1/2についてだけ、Bも債務を免れるから、Cは、Bに対して代金の1/2の支払いを請求することができる。


 誤り   [解除権の不可分性]*544条
Cが、Aに対してのみ解除の意思表示をしても、その効力はBには及ばない。
連帯債務のように、当事者の一方が数人ある場合、契約の解除は、その全員から、またはその全員に対してのみ、することができる(解除権の不可分性)。
一部の者とだけ解除の効果を認めると、法律関係が複雑になるからである。

[正解] 4


■しっかり読んでおきたい重要条文
*432条(連帯債務──履行の請求)
数人が連帯債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、または同時にあるいは順次にすべての連帯債務者に対し、全部または一部の履行を請求することができる。
*434条(一人に対する履行請求)
連帯債務者の一人に対する履行の請求は、他の連帯債務者に対しても、その効力を生ずる
*437条(一人に対する免除)
連帯債務者の一人に対してした債務の免除は、その連帯債務者の負担部分についてのみ、他の連帯債務者の利益のためにも、その効力を生ずる。
*544条(解除権の不可分性)
1 当事者の一方が数人ある場合には、契約の解除は、その全員からまたはその全員に対してのみ、することができる。


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【問 2】 AとBとが共同で、Cから、C所有の土地を 2,000万円で購入し、代金を連帯して負担する(連帯債務)と定め、CはA・Bに登記、引渡しをしたのに、A・Bが支払をしない場合の次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

 Cは、Aに対して 2,000万円の請求をすると、それと同時には、Bに対しては、全く請求をすることができない。

 AとBとが、代金の負担部分を 1,000万円ずつと定めていた場合、AはCから 2,000万円請求されても、1,000万円を支払えばよい。

 BがCに 2,000万円支払った場合、Bは、Aの負担部分と定めていた 1,000万円及びその支払った日以後の法定利息をAに求償することができる。

 Cから請求を受けたBは、Aが、Cに対して有する 1,000万円の債権をもって相殺しない以上、Aの負担部分についても、Bからこれをもって相殺することはできない。

(平成13年 問4)



[解説&正解]

 誤り   [連帯債務の性質──請求]*432条
債権者Cは、連帯債務者Aに対して 2,000万円の請求をし、同時に、Bに対しても、2,000万円の請求をすることができる。
連帯債務では、債権者は、連帯債務者の1人か数人または全員に対して、全部または一部の履行を請求できる。請求は、同時でも順次でもかまわない。


 誤り   [連帯債務の性質──負担部分]*432条
負担部分を 1,000万円ずつと定めていても、連帯債務者A・Bはそれぞれ、債権者Cに対しては 2,000万円全額を支払わなければならない。
連帯債務は、対外的な債権者に対しては、1人1人の連帯債務者が全額を負担する債務だから、負担部分を理由に全額請求を拒むことはできない(こうして債権者は、お金のありそうな人から全額を回収することができる)。
負担部分は、あくまでも連帯債務者同士の内部における取り決めにすぎず(内部的な分担割合)、債権者に対する本来の債務ではないから、負担部分に関係なく、債権者に対しては1人1人が全額の債務を負担する。

※ AはCに 2,000万円支払った後に、Bに対して 1,000万円を求償することになる。
Aにとって、Bの負担部分 1,000万円は他人の債務であり、いわば立て替えたものだからである。


 正しい  [連帯債務者の求償権]*442条
2,000万円支払ったBは、Aの負担部分 1,000万円と支払った日以後の法定利息をAに求償することができる。
連帯債務者の1人が弁済したり、その財産によって連帯債務を消滅させたときは、他の連帯債務者に対し、各人の負担部分について求償することができる(1人が全額支払ったわけだから、後で清算するのである)。
この求償には、①弁済のあった日以後の法定利息、および、②必要費・不可避の損害賠償を加えることができる。


 誤り   [他の債務者による相殺の援用]*436条2項
債権者Cに対してAが反対債権を有するのに相殺を援用しないときは、Bは「Aの負担部分」についてだけ相殺を援用できる。法律関係を簡易に決済するためである。

※ たとえば、Aの負担部分が 700万円のときに、Bに相殺援用を認めないとすると、BはCに 2000万円弁済して、その後、Aから 700万円求償することになる(この求償が確実に弁済される保証はない)。
援用を認めれば、Bは、Aの 700万円で相殺を援用して 1300万円弁済すればよいことになり、簡易に決済できるうえに、700万円の求償も確実に実現するから、担保の作用も果たせることになる。

 相殺援用

[正解] 3


■しっかり読んでおきたい重要条文
*436条(他の債務者による相殺援用)
2 債権者に対して債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その者の負担部分についてのみ、他の連帯債務者が相殺を援用することができる。
*442条(連帯債務者間の求償権)
1 連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、他の連帯債務者に対し、各自の負担部分について求償権を有する。
2 求償は、弁済その他免責があった日以後の法定利息、および避けることができなかった費用その他の損害の賠償を包含する。


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【問 3】 Aは、BのCに対する1,000万円の債務について、保証人となる契約を、Cと締結した。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。

 CがAを保証人として指名したため、Aが保証人となった場合、Aが破産手続開始の決定を受けても、Cは、Bに対して保証人の変更を求めることはできない。

 BのCに対する債務が条件不成就のため成立しなかった場合、Aは、Cに対して保証債務を負わない。

 AC間の保証契約締結後、BC間の合意で債務が増額された場合、Aは、その増額部分についても、保証債務を負う。

 CがAに対して直接1,000万円の支払いを求めて来ても、BがCに600万円の債権を有しているときは、Aは、Bの債権による相殺を主張して400万円を支払えばよい。

(平成6年 問9)



[解説&正解]

 正しい  [保証人の要件──債権者が指名した場合]*450条
保証人となる資格にとくに制限はない。当事者間で自由に決められる。
しかし法律や契約によって債務者が保証人を立てる義務を負う場合には、保証人は、
 ① 行為能力者であること
 ② 弁済資力を有すること
の2要件を備えなければならず、後で②の要件を欠いたときは、債権者は、債務者に対して保証人の変更を請求することができる。
※ ①の要件が欠けた場合を含めていないのは、いったん有効に保証債務が成立すれば、途中で保証人が制限行為能力者になっても、資力に影響を及ぼすわけではないし、また履行ができなくなるわけではない(法定代理人が履行できる)からである。

ただし、債権者が保証人を指名した場合は、その保証人が破産手続開始の決定を受け弁済資力を失っても、債務者に対して保証人の変更を求めることはできない。
自ら指名したのだから、そのリスクを負うのは当然なのである。

※ ①の要件は、制限行為能力を理由に保証契約が取り消されることを防ぐためで、②は、保証債務が確実に弁済されるようにするためである。


 正しい  [保証債務の付従性]*大判大8.3.26
Bの主たる債務が、条件不成就のため成立しなかった場合には、Aの保証債務も成立しない。
保証債務は、主たる債務を担保することが目的だから、必ず主たる債務の存在を前提としており、主たる債務がなければ成立せず、主たる債務が消滅すれば消滅する(保証債務の付従性)。

※ 同様に、主たる債務が錯誤を理由に無効だったり、詐欺を理由に取り消された場合にも、保証債務は成立しない。


 誤り   [保証債務の範囲]*448条
保証契約締結後に、債権者・債務者の「合意で債務が増額」されても、保証人は増額部分について保証債務を負わない。
もともと保証債務は、常に現在における主たる債務を担保するものだから、主たる債務の変更に応じてその内容を変更するのが原則である(主たる債務が損害賠償債務に変わったような場合)。
しかし、保証債務は、保証契約によってすでに定まっており、保証人の意思に基づかないで不利益を強いることは妥当ではないため、後で主たる債務の内容が加重されても、保証人に効力は及ばない。付従性もこの限りで制限されるのである。


 正しい  [保証人は相殺援用できるか]*457条2項
保証人は、主たる債務者の有する債権による相殺をもって、債権者に対抗することができる(保証債務の付従性)。
つまり、保証人Aは、Bの反対債権600万円で相殺して、400万円だけ支払えばよい。

※ 保証人が、主たる債務の有する同時履行の抗弁権を行使できることはもちろんである。買主の代金債務の保証人などに多い事例。

[正解] 3


■しっかり読んでおきたい重要条文
*448条(保証人の負担が主たる債務より重い場合)
保証人の負担が債務の目的または態様において主たる債務より重いときは、これを主たる債務の限度に減縮する。
*450条(保証人の要件)
1 債務者が保証人を立てる義務を負う場合には、その保証人は、次に掲げる要件を具備する者でなければならない。
一 行為能力者であること
二 弁済をする資力を有すること
2 保証人が前項第2号に掲げる要件を欠くに至ったときは、債権者は、同項各号に掲げる要件を具備する者をもってこれに代えることを請求することができる。
3 前二項の規定は、債権者が保証人を指名した場合には、適用しない。
*457条(保証人による相殺援用)
2 保証人は、主たる債務者の債権による相殺をもって債権者に対抗することができる。

■ワンランク・アップ  [相対的効力の原則と絶対的効力事由]
連帯債務は、債務者同士が人間的な結びつき(家族、友人、知人など)によって連帯しているのですが、もともと債務者1人1人が独立に債務を負担するものですから、1人について生じた事由は当人だけに効力が生じ、他の債務者には効力を生じないというのが原則です。これを連帯債務の相対的効力といいます。
したがって、期限の猶予や債務の承認だけでなく、1人について法律行為の無効・取消しの原因があっても、他の債務者の債務には影響がありません。

たとえば、連帯債務者Aの錯誤により、AC間の契約が無効であっても、BC間では完全に有効な契約が成立します。
ただし、①請求 ②更改 ③相殺 ④免除 ⑤混同 ⑥時効の6事由については、例外的に他の連帯債務者にも効力が及びます(絶対的効力)。
この原則と例外を正確に理解することが得点のポイントです。

(原則)相対的効力の原則
1人について生じた事由は、当人だけに効力を生じる。
①債務の承認 ②期限の猶予 ②取消し ③無効 など
(例外)絶対的効力事由
1人について生じた事由は、他の債務者にも効力を生じる。
①請求 ②更改 ③相殺 ④免除 ⑤混同 ⑥時効

条文で確認しておきましょう。

[相対的効力の原則]
*433条(1人についての法律行為の無効等)
連帯債務者の1人について法律行為の無効または取消しの原因があっても、他の連帯債務者の債務は、その効力を妨げられない。
*440条(相対的効力の原則)
434条から439条まで(絶対的効力事由)を除き、連帯債務者の1人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。

[絶対的効力事由──6つ]
*434条(1人に対する履行請求)
連帯債務者の1人に対する履行の請求は、他の連帯債務者に対しても、その効力を生ずる。
*435条(1人との間の更改)
連帯債務者の1人と債権者との間に更改があったときは、債権は、すべての連帯債務者の利益のために消滅する。
*436条(1人による相殺,相殺援用)
1 連帯債務者の1人が債権者に対して債権を有する場合に、その連帯債務者が相殺を援用したときは、債権は、すべての連帯債務者の利益のために消滅する。
2 債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その者の負担部分についてのみ、他の連帯債務者が相殺を援用することができる。
*437条(1人に対する免除)
連帯債務者の1人に対してした債務の免除は、その者の負担部分についてのみ、他の連帯債務者の利益のためにも、その効力を生ずる。
*438条(1人との間の混同)
連帯債務者の1人と債権者との間に混同があったときは、その連帯債務者は、弁済をしたものとみなす。
※ たとえば債権者Cが死亡し、連帯債務者AがCの代金債権を相続して混同が生じた場合、Aは弁済したものとみなされ、他の連帯債務者Bの代金支払債務も消滅する。
*439条(1人についての時効の完成)
連帯債務者の1人のために時効が完成したときは、その者の負担部分については、他の連帯債務者も、その義務を免れる。



(この項終わり)