公開日 2017.5.10|最新更新日 2017.6.19


【問 1】 根抵当権に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

 根抵当権は、根抵当権者が債務者に対して有する現在及び将来の債権をすべて担保するという内容で、設定することができる。

 根抵当権の極度額は、いったん登記がされた後は、後順位担保権者その他の利害関係者の承諾を得た場合でも、増額することはできない。

 登記された極度額が1億円の場合、根抵当権者は、元本1億円とそれに対する最後の2年分の利息及び損害金の合計額につき、優先弁済を主張できる。

 根抵当権の被担保債権に属する個別の債権が、元本の確定前に、根抵当権者から第三者に譲渡された場合、その第三者は、当該根抵当権に基づく優先弁済を主張できない。

(平成12年 問5)



[解説&正解]

 誤り   [包括根抵当の禁止]*398条の2
「現在及び将来の債権をすべて担保する」という無制約の包括根抵当は認められていない。根抵当によって担保される被担保債権は、一定の種類の取引によって生じる債権その他一定のものに限られる。


 誤り   [極度額の変更]*398条の5
極度額の変更は、利害関係者に重大な利害を及ぼすから、その承諾がなければすることができない。承諾があれば、元本の確定前でも確定後でも、また登記後でもすることができる。
※ 極度額の変更(拡大・縮小)は、根抵当権が把握している担保価値を変えることだから、根抵当権者と設定者の合意で勝手にされては、第三者の利益を害することになる。
増額については後順位抵当権者・第三取得者、減額については転抵当権者の承諾を必要とする。


 誤り   [利息・損害金の範囲]*398条の3
根抵当権が担保する債権額は、極度額の限度内である。
したがって「極度額が1億円」であれば、「元本1億円」までは担保されるが、「最後の2年分の利息及び損害金の合計額」については、優先弁済を主張できない。
※ 根抵当権による優先弁済の範囲は、元本・利息・損害賠償の全部について極度額を限度とするから、利息や遅延損害金は、極度額に達するまでは何年分でも無制限に担保されるが、極度額を超えてしまえば、2年分の利息であっても一切担保されないのである。


 正しい  [随伴性の否定]*398条の7
根抵当権は、債権を一定の範囲で、いわば「箱」を担保するのであって、「箱の中」にある1つ1つの債権を個別に担保するものではない。
元本の確定前に、「個別の債権」が取り出されて第三者に譲渡されても根抵当権は移転しないので、第三者はその債権について根抵当権に基づく優先弁済を主張することはできない(随伴性の否定)。

[正解] 4


■ワンランク・アップ  根抵当権をめぐって
1 根抵当権の処分
根抵当権者は、元本確定前においては、同一の債務者に対する他の債権者の利益のために、根抵当権を譲渡・放棄したり、その順位を譲渡・放棄することはできない。
普通抵当権で認められている抵当権の譲渡・放棄、順位の譲渡・放棄などの処分は、転抵当を除いては、根抵当権には適用されない。
2 根抵当権の一部譲渡
根抵当権者は,元本確定前であれば、根抵当権設定者の承諾を得て、根抵当権の全部または一部を譲渡することができる。
3 元本の確定請求
元本の確定期日を定めなかった場合、根抵当権設定者は、その設定の時から3年を経過すれば、元本の確定請求をすることができ、請求の時から2週間後に確定する。
根抵当権設定者が、長期間根抵当権に拘束されることを防ぐためである。
4 被担保債権の範囲の変更
根抵当権設定契約の当事者(根抵当権者、設定者)は、元本確定前であれば、その合意で、被担保債権の範囲を変更することができる。
極度額を変更するわけではないので、後順位抵当権者などの第三者の承諾は不要。

■しっかり読んでおきたい重要条文
*398条の5(極度額の変更)
根抵当権の極度額の変更は、利害関係を有する者の承諾を得なければ、することができない。


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【問 2】 根抵当権に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

 根抵当権者は、総額が極度額の範囲内であっても、被担保債権の範囲に属する利息の請求権については、その満期となった最後の2年分についてのみ、その根抵当権を行使することができる。

 元本の確定前に根抵当権者から被担保債権の範囲に属する債権を取得した者は、その債権について根抵当権を行使することはできない。

 根抵当権設定者は、担保すべき元本の確定すべき期日の定めがないときは、一定期間が経過した後であっても、担保すべき元本の確定を請求することはできない。

 根抵当権設定者は、元本の確定後であっても、その根抵当権の極度額を、減額することを請求することはできない。

(平成23年 問4)



[解説&正解]

 誤り   [被担保債権の範囲]*398条の3第1項
根抵当権者は、被担保債権の範囲に属する利息の請求権については、極度額の範囲内であれば、「満期となった最後の2年分」に限らず、全額について根抵当権を行使することができる。


 正しい  [随伴性の否定]*398条の7
元本の確定前に、根抵当権者から「被担保債権の範囲に属する」個別の債権を取得しても、根抵当権は移転しないので(随伴性の否定)、その債権について根抵当権を行使することはできない。


 誤り   [元本の確定請求]*398条の19第1・3項
元本の確定期日を定めなかったときは、根抵当権設定者は、その設定の時から3年を経過すれば、元本の確定請求をすることができる(請求の時から2週間後に確定する)。
これは、根抵当権設定者が、長期間根抵当権に拘束されることを防ぐためである。


 誤り   [極度額減額請求権]*398条の21第1項
元本確定時に存在する債権額が、極度額をかなり下回っている場合などには、「根抵当権設定者」は、元本の確定後においては、根抵当権の極度額を、現に存する債務の額と以後2年間に生ずべき利息その他の定期金、および債務の不履行による損害賠償の額とを加えた額に減額することを請求することができる。
これにより、残りの担保価値を有効利用することができる

[正解] 2


■しっかり読んでおきたい重要条文
*398条の19(根抵当権の元本の確定請求)
1 根抵当権設定者は、根抵当権の設定の時から3年を経過したときは、担保すべき元本の確定を請求することができる。この場合、担保すべき元本は、その請求の時から2週間を経過することによって確定する。
3 前項の規定は、担保すべき元本の確定すべき期日の定めがあるときは、適用しない。
*398条の21(極度額の減額請求)
1 元本の確定後においては、根抵当権設定者は、その根抵当権の極度額を、現に存する債務の額と以後2年間に生ずべき利息その他の定期金、および債務の不履行による損害賠償の額とを加えた額に減額することを請求することができる。


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【問 3】 AがBとの間で、CのBに対する債務を担保するためにA所有の甲土地に抵当権を設定する場合と根抵当権を設定する場合における次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

 抵当権を設定する場合には、被担保債権を特定しなければならないが、根抵当権を設定する場合には、BC間のあらゆる範囲の不特定の債権を極度額の限度で被担保債権とすることができる。

 抵当権を設定した旨を第三者に対抗する場合には登記が必要であるが、根抵当権を設定した旨を第三者に対抗する場合には、登記に加えて、債務者Cの異議を留めない承諾が必要である。

 Bが抵当権を実行する場合には、AはまずCに催告するように請求することができるが、Bが根抵当権を実行する場合には、AはまずCに催告するように請求することはできない。

 抵当権の場合には、BはCに対する他の債権者の利益のために抵当権の順位を譲渡することができるが、元本の確定前の根抵当権の場合には、Bは根抵当権の順位を譲渡することができない。

(平成26年 問4)



[解説&正解]

 誤り   [包括根抵当の禁止]*398条の2第2項
債権の範囲は、債務者との特定の継続的取引契約によって生ずるもの、その他債務者との一定の種類の取引によって生ずるものに限定して定めなければならない。
「あらゆる範囲」の債権を被担保債権とすること(包括根抵当)は許されない。


 誤り   [対抗要件]*177条
普通抵当権の設定も、根抵当権の設定も第三者に対抗する場合には、登記が必要である。「債務者の異議を留めない承諾」は関係ない。


 誤り   [催告の抗弁権]
抵当権実行の場合にも、根抵当権実行の場合にも、物上保証人Aは「まずCに催告するように請求する」ことはできない。


 正しい  [順位の譲渡]*376条、398条の11第1項
元本の確定前においては、同一の債務者に対する他の債権者の利益のために、根抵当権を譲渡・放棄したり、その順位を譲渡・放棄することはできない。
普通抵当権に認められている抵当権の譲渡・放棄、その順位の譲渡・放棄などの処分は、転抵当を除いては、根抵当権には適用されない。

[正解] 1


■しっかり読んでおきたい重要条文
*398条の2(根抵当権の設定)
2 根抵当権の担保すべき不特定の債権の範囲は、債務者との特定の継続的取引契約によって生ずるものその他債務者との一定の種類の取引によって生ずるものに限定して、定めなければならない。
*376条(抵当権の処分)
1 抵当権者は、その抵当権を他の債権の担保とし、または同一の債務者に対する他の債権者の利益のためにその抵当権もしくはその順位を譲渡し、あるいは放棄することができる。
*398条の11(根抵当権の処分)
1 元本の確定前においては、根抵当権者は、根抵当権の処分をすることができない。


(この項 終わり)