|公開日 2017.5.10


【問 1】 Aが、債権者の差押えを免れるため、Bと通謀して、A所有地をBに仮装譲渡する契約をした場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 BがAから所有権移転登記を受けていた場合でも、Aは、Bに対して、AB間の契約の無効を主張することができる。

 Cが、AB間の契約の事情につき善意無過失で、Bからこの土地の譲渡を受けた場合は、所有権移転登記を受けていないときでも、Cは、Aに対して、その所有権を主張することができる。

 DがAからこの土地の譲渡を受けた場合には、所有権移転登記を受けていないときでも、Dは、Bに対して、その所有権を主張することができる。

 Eが、AB間の契約の事情につき善意無過失で、Bからこの土地の譲渡を受け、所有権移転登記を受けていない場合で、Aがこの土地をFに譲渡したとき、Eは、Fに対して、その所有権を主張することができる。

(平成12年 問4)



[解説&正解]

「Bと通謀して、A所有地をBに仮装譲渡する契約をした」というのは虚偽表示によるものであるから無効である。「通謀」とか「仮装譲渡」とあったら虚偽表示のこと。

 正しい  [虚偽表示が無効であるとは?]*94条1項
AB間の仮装譲渡契約は虚偽表示によるものであるから無効であって、ABの当事者間では、何の効力も生じない。
つまり、はじめから土地の所有権はAにあったということであり、Aはいつでも、虚偽表示を理由に契約の無効を主張して、無効登記の抹消を請求することができる。
BがAから「所有権移転登記を受けて」いても、これは真実の権利関係を反映しない虚偽の登記であって無効なのである。

虚偽表示


 正しい  [善意の第三者には登記が必要か]*94条2項、最判昭44・5・27
善意の第三者Cは「所有権移転登記を受けていないとき」でも、Aに対して所有権を主張することができる。
虚偽表示の無効は、『善意の第三者に対抗することができない』という94条2項の趣旨は、AB間の仮装譲渡契約は、善意の第三者Cとの関係では有効なものとして扱うということであるから、所有権はA→B→Cに有効に移転しており、したがって第三者Cは登記がなくても完全に所有権を取得するのである。
AとCとは、売主の前主と買主との関係であり、二重譲渡のような対抗関係には立たない。


 正しい  [虚偽表示の当事者と第三者]*最判昭44.5.27
Aからの譲受人Dは、「所有権移転登記を受けていないとき」でも、Bに対して所有権を主張することができる。
判例によれば、虚偽表示の当事者ABは、第三者の取得した権利について、その登記がないことを主張できないとされる。
そもそも不動産について自分が権利者であることを「第三者」に主張するためには、その登記が必要であるが、Bは、虚偽表示による仮装譲受人だから実質的には無権利者である。無権利者に対しては、Dはたとえ登記がなくても所有権を主張できるのである。

虚偽表示


 誤り  [虚偽表示と二重譲渡]*最判昭42.10.31
仮装譲受人Bから譲り受け、94条2項によって保護される善意無過失の第三者Eと、Aから譲り受けた第三者Fは、A所有地について二重譲渡の関係に立ち、互いに対抗関係にある。
民法では、「同じ不動産について、ともに権利を主張して対抗関係にある者同士では、先に登記を備えた方が完全に権利を取得する」(177条)というのが大原則で、先に登記を備えた方が優先する
したがって、Eはたとえ善意無過失でAに対する関係では所有権を取得しても、「所有権移転登記を受けていない」以上、第三者Fに対しては所有権を主張することはできない。

※ Eは94条2項によって、登記がなくてもAに対しては所有権を主張できるが、第三者Fに対しては177条の対抗問題となり、登記が必要となるのである。

虚偽表示と対抗関係

[正解] 4


■ワンランク・アップ  善意の第三者には過失があってもよいか
AB間の契約が虚偽表示であることを「知らなかった」善意の第三者Cに過失があっても、Aは、Cに対して無効を主張できず、したがって所有権を主張することはできません。
もともと民法では、真実であるかのような権利関係の外観を信頼する第三者を保護する場合には、その第三者に過失がない(無過失である)ことを要件とするのが大原則です。
しかし、虚偽表示の場合は、当事者自身が故意に虚偽の外観(真実であるかのような外観)を作り出しているのですから、外観どおりの責任を負わせて第三者を保護すべきである(自業自得)と考えられ、したがって、第三者は善意であれば過失があってもよく、無過失までは要求されないのです(大判昭12・8・10)

■しっかり読んでおきたい重要条文
*94条(虚偽表示)
1 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
2 この意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない


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【問 2】 Aは、その所有する甲土地を譲渡する意思がないのに、Bと通謀して、Aを売主、Bを買主とする甲土地の仮装の売買契約を締結した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。なお、この問において「善意」又は「悪意」とは、虚偽表示の事実についての善意又は悪意とする。

 善意のCがBから甲土地を買い受けた場合、Cがいまだ登記を備えていなくても、AはAB間の売買契約の無効をCに主張することができない。

 善意のCが、Bとの間で、Bが甲土地上に建てた乙建物の賃貸借契約(貸主B、借主C)を締結した場合、AはAB間の売買契約の無効をCに主張することができない。

 Bの債権者である善意のCが、甲土地を差し押さえた場合、AはAB間の売買契約の無効をCに主張することができない。

 甲土地がBから悪意のCへ、Cから善意のDへと譲渡された場合、AはAB間の売買契約の無効をDに主張することができない。

(平成27年 問2)



[解説&正解]

 正しい  [虚偽表示の効果]*94条
AとBが通謀して行った甲土地の仮装売買契約は虚偽表示であり、無効である。
虚偽表示の無効は、善意の第三者に対抗することができないから、善意のCが「いまだ登記を備えていなくても」、AはAB間の売買契約の無効を主張することはできない。


 誤り   [94条2項の第三者]*最判昭57.6.8
判例によれば、土地の仮装譲受人Bが土地上に建物を建築してこれをCに賃貸した場合、建物賃借人Cは、仮装譲渡された土地については法律上の利害関係を有するものとは認められないとして、94条2項の第三者にはあたらないとした。
仮装譲渡人(土地所有者)Aは、AB間の売買契約の無効をCに主張してCに対する建物明渡請求が認められるのである。


 正しい  [94条2項の第三者]*最判昭50.4.25
94条2項の第三者とは、虚偽表示の当事者(またはその一般承継人)以外の者であって、その表示の目的につき法律上の利害関係を有するに至った者をいう。
これによりBの差押債権者である善意のCは「第三者」に該当するため、AはAB間の売買契約の無効をCに主張することができない。


 正しい  [善意の転得者]*最判昭45.7.24
第三者Cからの転得者Dも、94条2項の第三者に含まれるので、善意であれば「善意の第三者」として保護される。
つまり、Aは、善意の転得者Dに対して、前主Cの善意・悪意にかかわらず、所有権を主張することはできないのである。

[正解] 2


■ワンランク・アップ
判例は、善意の第三者からの転得者が悪意の場合でも、善意の第三者が介在した以上、善意者の地位を承継するから、虚偽表示による無効を対抗されることはなく保護されるとしている。取引の混乱を避けるためである。



(この項終わり)