|公開日 2017.5.10


【問 1】 Aは、所有する家屋を囲う塀の設置工事を業者Bに請け負わせたが、Bの工事によりこの塀は瑕疵がある状態となった。Aがその後この塀を含む家屋全部をCに賃貸し、Cが占有使用しているときに、この瑕疵により塀が崩れ、脇に駐車中のD所有の車を破損させた。A、B及びCは、この瑕疵があることを過失なく知らない。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。

 Aは、損害の発生を防止するのに必要な注意をしていれば、Dに対する損害賠償責任を免れることができる。

 Bは、瑕疵を作り出したことに故意又は過失がなければ、Dに対する損害賠償責任を免れることができる。

 Cは、損害の発生を防止するのに必要な注意をしていれば、Dに対する損害賠償責任を免れることができる。

 Dが、車の破損による損害賠償請求権を、損害及び加害者を知った時から3年間行使しなかったときは、この請求権は時効により消滅する。

(平成17年 問11)



[解説&正解]

 誤り   [所有者の不法行為責任]*717条1項但書
家屋の所有者Aは、「損害の発生を防止するのに必要な注意」をしていたときでも、被害者Dに対して損害賠償責任を負うことがある。

土地工作物による不法行為責任については、
・第1次的に工作物の占有者が責任を負うが、損害の発生防止のため必要な注意をして免責されるときは、
・最終的に所有者が責任を負う。
所有者には免責事由が認められていないので、注意を怠らなかったことを立証しても免責されない。土地工作物自体のもつ危険性がその根拠とされる。

※ 所有者の責任は、過失責任を原則とする民法で唯一の無過失責任である。
ただし絶対的な責任ではないから、不可抗力による場合には責任を負わない。


 正しい  [不法行為責任の成立要件]*709条
塀の瑕疵について、請負人Bに故意または過失がなければ、そもそも不法行為が成立せず、被害者Dに対して損害賠償責任を負うことはない。


 正しい  [占有者の不法行為責任]*717条1項
建物の占有者Cは「損害の発生を防止するのに必要な注意」をしていたのであれば、Dに対する損害賠償責任を免れることができる。
土地工作物の設置・保存の瑕疵により他人に損害を与えたときは、第1次的に工作物の占有者が責任を負うが、損害の発生防止のため必要な注意をしたときには、免責される。


 正しい  [不法行為による損害賠償請求権の消滅時効]*724条
不法行為による損害賠償請求権は、被害者Dが、損害および加害者を知った時から3年間行使しないとき、時効消滅する。

[正解] 1


■しっかり読んでおきたい重要条文
*717条(土地工作物の占有者および所有者の責任)
1 土地の工作物の設置または保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。
ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
3 損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者または所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。


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【問 2】 AがBとの請負契約によりBに建物を建築させてその所有者となり、その後Cに売却した。Cはこの建物をDに賃貸し、Dが建物を占有していたところ、この建物の建築の際におけるBの過失により生じた瑕疵により、その外壁の一部が剥(はく)離して落下し、通行人Eが重傷を負った。この場合の不法行為責任に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

 Aは、この建物の建築の際において注文又は指図に過失がなく、かつ、その瑕疵を過失なくして知らなかったときでも、Eに対して不法行為責任を負うことがある。

 Bは、Aに対してこの建物の建築の請負契約に基づく債務不履行責任を負うことがあっても、Eに対して不法行為責任を負うことはない。

 Cは、損害の発生を防止するため必要な注意をしていたときでも、瑕疵ある土地の工作物の所有者として、Eに対して不法行為責任を負うことがある。

 Dは、損害の発生を防止するため必要な注意をしていたときでも、瑕疵ある土地の工作物の占有者として、Eに対して不法行為責任を負うことがある。

(平成8年 問6)



[解説&正解]

 誤り   [注文者の責任]*716条
注文者Aは、建築の際、注文・指図に過失がないのであれば、請負人Bの過失による瑕疵が原因で第三者Eに与えた損害の賠償責任を負うことはない。


 誤り   [請負人の責任]*709条
請負人Bの過失により生じた瑕疵が原因で、通行人Eが負傷した場合には、Bの不法行為が成立するから、Eに対して不法行為責任を負わなければならない。


 正しい  [所有者の責任]*717条1項但書
土地工作物の設置・保存の瑕疵により他人に損害を与えたときは、第1次的に工作物の占有者が、占有者が免責されたときは、最終的に所有者が損害賠償責任を負う。
したがって、所有者Cは「損害の発生を防止するため必要な注意をしていた」ときでも、占有者が免責されれば、「瑕疵ある土地の工作物の所有者」として、Eに不法行為責任を負うことになる。


 誤り   [占有者の責任]*717条1項
建物の占有者Dは、損害の発生防止のため必要な注意をしたときは、被害者Eに対して不法行為責任を負うことはない。

[正解] 3


■しっかり読んでおきたい重要条文
*716条(注文者の責任)
注文者は、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わない
ただし、注文または指図についてその注文者に過失があったときは、この限りでない。


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【問 3】 甲建物の占有者である(所有者ではない。)Aは、甲建物の壁が今にも剥(はく)離しそうであると分かっていたのに、甲建物の所有者に通知せず、そのまま放置するなど、損害発生の防止のため法律上要求される注意を行わなかった。そのために、壁が剥離して通行人Bが死亡した。この場合、Bの相続人からの不法行為に基づく損害賠償請求に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 Bが即死した場合、B本人の損害賠償請求権は観念できず、その請求権の相続による相続人への承継はない。

 Bに配偶者と子がいた場合は、その配偶者と子は、Bの死亡による自己の精神上の苦痛に関し、自己の権利として損害賠償請求権を有する。

 Bの相続人は、Aに対しては損害賠償請求ができるが、甲建物の所有者に対しては、損害賠償請求ができない。

 壁の剥離につき、壁の施工業者にも一部責任がある場合には、Aは、その施工業者に対して求償権を行使することができる。

(平成13年 問10)



[解説&正解]

 誤り   [死者自身の損害賠償請求権]*大判大15.2.16
判例は、即死の場合でも、財産的損害・精神的損害について、まず被害者(死者)自身に損害賠償請求権が発生し、それが相続人に承継されるとしている。
身体傷害の場合に、被害者自身が損害賠償請求権を取得するのに、最も重大な法益である生命侵害にそれが認められないのは、均衡を欠くからという。


 正しい  [近親者の慰謝料請求権]*711条、最判昭42.11.1
生命を侵害された被害者Bと一定の身分関係にある者(配偶者・子・父母)は、Bの取得する慰謝料請求権とは別に、Bの死亡による自己の精神上の苦痛について、自己の権利として固有の慰謝料請求権を取得する。


 正しい  [占有者の不法行為責任]*717条1項
建物の占有者Aは「損害発生の防止のため法律上要求される注意」をしなかったのだから、不法行為が成立し、Bの相続人は、Aに対して損害賠償請求ができる。
この場合、建物所有者に対しては責任を問えない。
所有者が責任を負うのは、占有者が必要な注意をして免責されるときである。


 正しい  [占有者・所有者の求償権]*717条3項
壁の施工業者にも一部責任があるなど、瑕疵について占有者・所有者以外に直接の責任者があるときは、損害賠償をした占有者または所有者は、この者に求償することができる。
対外的には占有者・所有者が責任を負い、対内的には求償を行って責任を分担することが公平だからである。

[正解] 1



(この項終わり)