|公開日 2017.5.10


【問 1】 AはBに甲建物を売却し、AからBに対する所有権移転登記がなされた。AB間の売買契約の解除と第三者との関係に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 BがBの債権者Cとの間で甲建物につき抵当権設定契約を締結し、その設定登記をした後、AがAB間の売買契約を適法に解除した場合、Aはその抵当権の消滅をCに主張できない。

 Bが甲建物をDに賃貸し引渡しも終えた後、AがAB間の売買契約を適法に解除した場合、Aはこの賃借権の消滅をDに主張できる。

 BがBの債権者Eとの間で甲建物につき抵当権設定契約を締結したが、その設定登記をする前に、AがAB間の売買契約を適法に解除し、その旨をEに通知した場合、BE間の抵当権設定契約は無効となり、Eの抵当権は消滅する。

 AがAB間の売買契約を適法に解除したが、AからBに対する甲建物の所有権移転登記を抹消する前に、Bが甲建物をFに賃貸し引渡しも終えた場合、Aは、適法な解除後に設定されたこの賃借権の消滅をFに主張できる。

(平成16年 問9)



[解説&正解]

 正しい  [解除前の第三者──抵当権者]*545条1項但書
契約を解除しても、その解除前に対抗要件を備えた第三者の権利を害することはできない。
売主Aの解除前に、すでに抵当権設定登記を備えた第三者Cに対し、Aは、抵当権の消滅を主張できないのである。


 誤り   [解除前の第三者──賃借権者]*借地借家31条1項
売主Aは契約を解除しても、その解除前に、すでに甲建物の引渡しを受けた賃借人Dに対し、解除による賃借権の消滅を主張できない。
契約を解除しても、すでに対抗要件を備えた第三者の権利を害することはできないのであるが、建物の賃借権については、その登記がなくても、建物の引渡しがあれば、対抗要件を備えるからである。


 誤り   [解除前の第三者──抵当権者]*545条1項但書
売主Aが抵当権者Eに解除通知したからといって、抵当権設定契約が無効となりEの抵当権が消滅するということはない。
Eは対抗要件を備えていないだけであって、先に抵当権設定登記をすれば、Aに抵当権を対抗できるのである。
※ 債権者Eは抵当権設定登記をしておらず、対抗要件を備えていない状態である。その後、売主Aが契約を解除したときには、①Eの抵当権と、②解除によるAの所有権復帰とは対抗関係に立ち、先に登記を備えた者が権利を取得する。


 誤り   [解除後の第三者──賃借権者]*177条、最判昭35.11.29
売主Aは、契約を解除して所有権が復帰しても、その登記がなければ、解除後に甲建物の引渡しを受けた賃借人Fに対し、その賃借権の消滅を主張できない。
解除により所有権がAに復帰するにしても、解除の時に物権変動が生じ、解除したAと解除後の賃借人Fとは対抗関係に立つからである。

[正解] 1


■しっかり読んでおきたい重要条文
*借地借家法31条(建物賃貸借の対抗力)
1 建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。


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【問 2】 売主Aは、買主Bとの間で甲土地の売買契約を締結し、代金の3分の2の支払と引換えに所有権移転登記手続と引渡しを行った。その後、Bが残代金を支払わないので、Aは適法に甲土地の売買契約を解除した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 Aの解除前に、BがCに甲土地を売却し、BからCに対する所有権移転登記がなされているときは、BのAに対する代金債務につき不履行があることをCが知っていた場合においても、Aは解除に基づく甲土地の所有権をCに対して主張できない。

 Bは、甲土地を現状有姿の状態でAに返還し、かつ、移転登記を抹消すれば、引渡しを受けていた間に甲土地を貸駐車場として収益を上げていたときでも、Aに対してその利益を償還すべき義務はない。

 Bは、自らの債務不履行で解除されたので、Bの原状回復義務を先に履行しなければならず、Aの受領済み代金返還義務との同時履行の抗弁権を主張することはできない。

 Aは、Bが契約解除後遅滞なく原状回復義務を履行すれば、契約締結後原状回復義務履行時までの間に甲土地の価格が下落して損害を被った場合でも、Bに対して損害賠償を請求することはできない。

(平成21年 問8)



[解説&正解]

 正しい  [解除と悪意の第三者]*545条1項但書
解除権者Aが契約を解除しても、第三者Cの権利を害することはできない。
契約解除前に、すでにCが甲土地の所有権を取得しその登記を備えていれば、Cが悪意であっても、Aは解除に基づく甲土地の所有権を主張できないのである。


 誤り   [使用利益の返還義務]*545条2項、最判昭51.2.13
買主Bは、原状回復義務として「甲土地を現状有姿の状態で返還し、かつ、移転登記を抹消」しても、甲土地の使用利益を返還する義務がある。
売主Aが金銭を返還する場合には、受領時からの利息を付けて返還しなければならないので、これと均衡をとったのである。


 誤り   [原状回復義務と同時履行の抗弁権]*546条、533条
契約が解除されると、当事者双方は「互いに原状回復義務を負う」ことになるが、この義務は同時履行の関係に立つ
したがって、Bの債務不履行が原因で契約が解除されても、Bが原状回復義務を「先に履行」する必要はなく、Aの代金返還義務と同時に履行すればよい。


 誤り   [解除と損害賠償請求]
解除権者Aは、契約解除後に、Bが「遅滞なく原状回復義務を履行」したとしても、原状回復義務履行時までに損害が発生すれば、Bに対して損害賠償請求をすることができる。「解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない」(545条3項)のである。

[正解] 1


■ワンランク・アップ  [解除と第三者の善意・悪意]
もともと契約自体に瑕疵がある詐欺や強迫を理由とする取消しと異なって、解除は完全に有効な契約が成立した後の事情で解消されるため、第三者の善意・悪意は問題となりません。
当事者間に債務不履行の事実があるということを第三者が知っていても、何ら責められるような落ち度はないのです。また、債務不履行があるからといって当然に解除されるわけでもありません。結局、第三者の悪意はあまり意味がないのです。

ただ、第三者の善意・悪意が問題とされない代わりに、その第三者が保護されるためには、解除権者よりも先に登記を備える必要があります。
この場合の登記は、解除権者と対抗関係に立つからではなく、保護に値する第三者となるためには、権利者としてなすべきことを全部終えていなければならないという発想なのです。


(この項終わり)