|公開日 2017.5.10


【問 1】 Aが、Bに建物を売却し、代金受領と引換えに建物を引き渡した後に、Bがこの建物に隠れた瑕疵があることを発見したが、売主の瑕疵担保責任についての特約はない。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。

 Bは、この瑕疵がAの責めに帰すべき事由により生じたものであることを証明した場合に限り、この瑕疵に基づき行使できる権利を主張できる。

 Bは、この売買契約を解除できない場合でも、この瑕疵により受けた損害につき、Aに対し賠償請求できる。

 Bが、Aに対し、この瑕疵に基づき行使できる権利は、Bが瑕疵を知った時から1年以内に行使しなければならない。

 Bは、この瑕疵があるために、この売買契約を締結した目的を達することができない場合に限り、この売買契約を解除できる。

(平成14年 問9)



[解説&正解]

本問は、買主Bが建物の引渡しを受けた後に、「隠れた瑕疵があることを発見した」とありますので、Bは、善意であることが前提となっていることに注意しましょう。

 誤り   [担保責任の性質]
買主Bは、隠れた瑕疵が、売主Aの「責めに帰すべき事由により生じた」ものであることを証明しなくても、瑕疵担保責任を主張できる。
売主の担保責任については、民法の規定上、売主の「責めに帰すべき事由」は要求されておらず、無過失責任と解されている。


 正しい  [瑕疵の程度]*570条、566条1項
善意の買主Bが、契約を解除できるのは、瑕疵のために契約目的を達成できない場合に限られる。瑕疵がそれほど重大ではなく、契約目的に支障がない程度では解除できない。しかし解除できない場合でも、損害賠償の請求はできる。


 正しい  [担保責任の存続期間]*570条、566条3項
瑕疵担保責任の追及は、善意の買主Bが、瑕疵を知った時から1年以内に行使しなければならない。権利関係を早期に決着させるためである。


 正しい  [瑕疵担保責任の内容]*570条、566条1項
善意の買主Bは、この瑕疵のために、契約目的を達成できない場合に限り、契約を解除できる。

[正解] 1


■しっかり読んでおきたい重要条文
*570条(売主の瑕疵担保責任)
売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。
*566条(地上権等がある場合等における売主の担保責任)
1 売買の目的物に瑕疵がある場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。
この場合、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。
3 契約の解除または損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から1年以内にしなければならない。


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【問 2】 宅地建物取引業者でも事業者でもないAB間の不動産売買契約における売主Aの責任に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 売買契約に、隠れた瑕疵についてのAの瑕疵担保責任を全部免責する旨の特約が規定されていても、Aが知りながらBに告げなかった瑕疵については、Aは瑕疵担保責任を負わなければならない。

 Bが不動産に隠れた瑕疵があることを発見しても、当該瑕疵が売買契約をした目的を達成することができないとまではいえないような瑕疵である場合には、Aは瑕疵担保責任を負わない。

 Bが不動産に瑕疵があることを契約時に知っていた場合や、Bの過失により不動産に瑕疵があることに気付かず引渡しを受けてから瑕疵があることを知った場合には、Aは瑕疵担保責任を負わない。

 売買契約に、瑕疵担保責任を追及できる期間について特約を設けていない場合、Bが瑕疵担保責任を追及するときは、隠れた瑕疵があることを知ってから1年以内に行わなければならない。

(平成19年 問11)



[解説&正解]

 正しい  [担保責任を負わない旨の特約の効力]*572条
瑕疵担保責任を「全部免責する」などのように、瑕疵担保責任を負わない旨の特約も有効である。
しかし、このような特約があっても、売主Aが、「知りながら」告げなかった瑕疵については、詐欺に等しい不法があるものとして、担保責任を負わなければならない。

※ 問題文に「宅地建物取引業者でも事業者でもない」とあるのは、宅建業者等の場合の特約については、とくに宅建業法上の制約があるから。
本問は、あくまでも民法上の特約を問題にしている。


 誤り   [瑕疵の程度]*570条、566条1項
善意の買主Bが、契約を解除できるのは、瑕疵のために契約目的を達成できない場合に限られる。
契約目的に支障のない軽微な瑕疵であれば、契約解除はできないが、損害賠償請求はできるので、売主Aは「瑕疵担保責任を負わない」というわけではない。


 正しい  [隠れた瑕疵の意味]*大判大13.6.23
瑕疵担保責任でいう「隠れた」瑕疵というのは、取引上一般に要求される程度の注意をしても発見できないような瑕疵、つまり、買主が瑕疵を知らず、かつ知らないことにつき過失がないとき(善意無過失)の瑕疵をいう。
買主が、契約時に瑕疵を知っていたり、過失により知らなかった場合にまで、売主に瑕疵担保責任を負わせることはできないのである。


 正しい  [瑕疵担保責任の存続期間]*570条、566条3項
瑕疵担保責任を追及できる期間は、特約がない場合、買主が瑕疵の存在を知った時から1年以内である。

[正解] 2


■しっかり読んでおきたい重要条文
*572条(担保責任を負わない旨の特約)
売主は、担保責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実…(略)…については、その責任を免れることができない。


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【問 3】 Aが、BからB所有の土地付中古建物を買い受けて引渡しを受けたが、建物の主要な構造部分に欠陥があった。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。なお、瑕疵担保責任(以下この問において「担保責任」という。)については、特約はない。

 Aが、この欠陥の存在を知って契約を締結した場合、AはBの担保責任を追及して契約を解除することはできないが、この場合の建物の欠陥は重大な瑕疵なので、Bに対して担保責任に基づき損害賠償請求を行うことができる。

 Aが、この欠陥の存在を知らないまま契約を締結した場合、Bの担保責任を追及して契約の解除を行うことができるのは、欠陥が存在するために契約を行った目的を達成することができない場合に限られる。

 Aが、この欠陥の存在を知らないまま契約を締結した場合、契約締結から1年以内に担保責任の追及を行わなければ、AはBに対して担保責任を追及することができなくなる。

 AB間の売買契約が、宅地建物取引業者Cの媒介により契約締結に至ったものである場合、Bに対して担保責任が追及できるのであれば、AはCに対しても担保責任を追及することができる。

(平成15年 問10)



[解説&正解]

 誤り  [瑕疵担保責任の追及──悪意の買主]*570条、566条
売主に瑕疵担保責任を追及できるのは、買主が善意・無過失のときに限る。
瑕疵担保責任は目的物に隠れた瑕疵があったときの責任だから、買主Aが「欠陥の存在を知って」(悪意)契約したのであれば、もはや隠れた瑕疵とはいえず、当然にそのリスクを負担すべきであって、売主Bに瑕疵担保責任を認める必要はない(知ってて買ったんだから解除も損害賠償も認める必要はない)。
たとえ「建物の主要な構造部分」に欠陥があっても、悪意の買主は、解除も損害賠償請求もできないのである。


 正しい  [瑕疵の程度]*570条、566条
「欠陥の存在を知らない」善意の買主Aが、契約解除できるのは、この欠陥のために契約目的を達成できない場合に限られる。
契約目的に支障がない軽微な瑕疵のときは、損害賠償請求ができるだけ。

※ 善意の買主に認められる売主の瑕疵担保責任は、瑕疵の程度により異なる。
・目的を達成できない重大瑕疵──契約解除+損害賠償請求
・軽微な瑕疵──────────────損害賠償請求のみ


 誤り   [瑕疵担保責任の存続期間]*566条3項
「契約締結から1年以内」が誤り。
瑕疵担保責任の追及は、善意の買主が、瑕疵を知った時から1年以内に行わなければならない。1年という非常に短い期間にしたのは、権利関係を早く決済するためである。


 誤り   [担保責任は誰が負うのか]
買主Aは、宅建業者Cに対しては瑕疵担保責任を追及することはできない。
瑕疵担保責任は、売買契約当事者の売主としての責任であって、媒介したCは売買契約の当事者ではないからである。
ただし、不法行為による損害賠償責任を負うことがある(709条)

[正解] 2


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【問 4】 Aは、Bに建物の建築を注文し、完成して引渡しを受けた建物をCに対して売却した。本件建物に瑕疵があった場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 Cは、売買契約の締結の当時、本件建物に瑕疵があることを知っていた場合であっても、瑕疵の存在を知ってから1年以内であれば、Aに対して売買契約に基づく瑕疵担保責任を追及することができる。

 Bが建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき義務を怠ったために本件建物に基本的な安全性を損なう瑕疵がある場合には、当該瑕疵によって損害を被ったCは、特段の事情がない限り、Bに対して不法行為責任に基づく損害賠償を請求できる。

 CがBに対して本件建物の瑕疵に関して不法行為責任に基づく損害賠償を請求する場合、当該請求ができる期間は、Cが瑕疵の存在に気付いてから1年以内である。

 本件建物に存在している瑕疵のために請負契約を締結した目的を達成することができない場合、AはBとの契約を一方的に解除することができる。

(平成26年 問6)



[解説&正解]

本問は、請負契約、売買契約、不法行為の総合問題。
A・B・Cの法律関係を正確に把握することが得点ポイントです。

 誤り   [瑕疵担保責任──悪意の買主]*570条、566条1項
売主に瑕疵担保責任を追及できるのは、瑕疵について買主が善意・無過失のときに限られる。「瑕疵があることを知っていた」買主Cは、売主Aに瑕疵担保責任を追及することはできない。


 正しい  [不法行為責任──瑕疵による損害]*709条、最判平19.7.6
建物を建築したBは、基本的な安全性を損なう瑕疵をつくり出している。
その瑕疵が原因で他人に損害を与えたのであれば、Bには不法行為が成立するから、建物所有者Cは、特段の事情がない限り、Bに対して不法行為責任に基づく損害賠償を請求できる。

※ 判例は「建物を建築する者は、契約関係にない居住者などに対する関係でも、建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき注意義務を負い、これを怠ったために建物に安全性を損なう瑕疵があり、それにより居住者などの生命・身体・財産が侵害された場合には、建築者等は、特段の事情がない限り、これによって生じた損害について不法行為による賠償責任を負う」としている。


 誤り   [不法行為責任──請求期間]*724条
「瑕疵の存在に気付いてから1年以内」が誤り。これは、瑕疵担保責任の存続期間である。
不法行為による損害賠償請求権は、被害者が損害および加害者を知った時から3年間行使しないときに、時効によって消滅する。


 誤り   [請負──解除制限]*635条
瑕疵のために請負目的を達成することができない場合でも、建物の注文者AはBとの契約を解除することはできない。
もともと、請負の目的物に瑕疵があり、そのために契約目的を達成できないときは、注文者は、原則として契約を解除できるのであるが、これには重大な例外があって、建物(その他の土地工作物)については、契約解除はできない。
解除による建物取壊しという経済的な損失を防止するためというのが、その趣旨である。

[正解] 2


■しっかり読んでおきたい重要条文
*709条(不法行為による損害賠償)
故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
*724条(損害賠償請求権の期間制限)
不法行為による損害賠償の請求権は、被害者(またはその法定代理人)が損害および加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。
不法行為の時から20年を経過したときも、同様とする。
*635条(請負契約における解除制限)
仕事の目的物に瑕疵があり、そのために契約をした目的を達することができないときは、注文者は、契約の解除をすることができる。ただし、建物その他の土地の工作物については、この限りでない


(この項終わり)