|公開日 2017.5.10


【問 1】 民法上の委任契約に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。

 委任契約は、委任者又は受任者のいずれからも、いつでもその解除をすることができる。ただし、相手方に不利な時期に委任契約の解除をしたときは、相手方に対して損害賠償責任を負う場合がある。

 委任者が破産手続開始決定を受けた場合、委任契約は終了する。

 委任契約が委任者の死亡により終了した場合、受任者は、委任者の相続人から終了についての承諾を得るときまで、委任事務を処理する義務を負う。

 委任契約の終了事由は、これを相手方に通知したとき、又は相手方がこれを知っていたときでなければ、相手方に対抗することができず、そのときまで当事者は委任契約上の義務を負う。

(平成18年 問9)



[解説&正解]

 正しい  [相手方に不利な時期の解除]*651条2項
委任契約は、報酬の有無に関係なく、双方からいつでも解除することができる。
ただし、相手方にとって不利な時期に解除したときは、やむを得ない事由がある場合を除いて、相手方の損害を賠償しなければならない。


 正しい  [委任の終了事由]*653条
委任契約は、委任者か受任者が破産手続開始の決定を受ければ終了する。
※ このほかに、①当事者の死亡、②受任者が後見開始の審判を受けたこと、によっても終了する。


 誤り   [委任終了後の緊急処分義務]*654条
委任者の死亡により委任契約は当然に終了するから、受任者は、委任者の相続人から「終了についての承諾を得るときまで」処理義務を負うことはない。
ただ、急迫の事情があるときには、引き続き事務処理を行うなど、委任者の相続人等が委任事務を処理できる状態になるまで必要な処分をしなければならないのである(緊急処分義務)。
これは、事務処理を放置して、委任者側に不測の損害を与えないようにするためである。


 正しい  [委任終了の対抗要件]*655条
委任契約の終了事由は、
① これを相手方に通知したとき、または、
② 相手方がこれを知っていたとき
でなければ、相手方に対抗することができない。
したがって、そのときまで当事者は委任契約上の義務を負うことになる。

[正解] 3


■ワンランク・アップ  [委任の性質]
歴史的に、委任は、委任者と受任者の人間的な信頼関係を基礎として成立してきており、対価の関係で成立してきたものではないため、無報酬が原則です。
したがって報酬は、特約・合意がなければ請求できません。
しかも報酬がある場合でも、原則として委任事務の履行後でなければ請求できません。

なお、委任と準委任(委託)の違いは、委任は、受任者が「売買契約や賃貸借契約を締結する」というように、契約を締結することが内容になっているのに対し、準委任は、受託者が「不動産を管理する」「学校を経営する」など、契約締結以外の事務処理が内容になっている点にあります。
宅建業法の頻出問題である媒介契約(売主・買主の仲介をする)も、この準委任に該当します。

準委任(委託)には委任の規定が全部準用されますので、両者を区別する実益はまったくないため、同じように考えて問題はありません。
・委 任 → 依頼の内容は契約締結である
・準委任 → 依頼の内容は契約締結以外の事務処理である
       *委任の規定が準用される(656条)
        委任の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。

■しっかり読んでおきたい重要条文
*651条(委任の解除)
1 委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。
2 当事者の一方が相手方に不利な時期に委任の解除をしたときは、その当事者の一方は、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。
*653条(委任の終了事由)
委任は、次に掲げる事由によって終了する。
一 委任者、または受任者の死亡
二 委任者、または受任者が破産手続開始の決定を受けたこと。
三 受任者が後見開始の審判を受けたこと。
*654条(委任終了後の緊急処分義務)
委任が終了した場合において、急迫の事情があるときは、受任者(またはその相続人か法定代理人)は、委任者(またはその相続人か法定代理人)が委任事務を処理することができるに至るまで、必要な処分をしなければならない。
*655条(委任終了の対抗要件)
委任の終了事由は、これを相手方に通知したとき、または相手方がこれを知っていたときでなければ、これをもってその相手方に対抗することができない。


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【問 2】 Aが、A所有の不動産の売買をBに対して委任する場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。なお、A及びBは宅地建物取引業者ではないものとする。

 不動産のような高価な財産の売買を委任する場合には、AはBに対して委任状を交付しないと、委任契約は成立しない。

 Bは、委任契約をする際、有償の合意をしない限り、報酬の請求をすることができないが、委任事務のために使った費用とその利息は、Aに請求することができる。

 Bが当該物件の価格の調査など善良な管理者の注意義務を怠ったため、不動産売買についてAに損害が生じたとしても、報酬の合意をしていない以上、AはBに対して賠償の請求をすることができない。

 委任はいつでも解除することができるから、有償の合意があり、売買契約成立寸前にAが理由なく解除してBに不利益を与えたときでも、BはAに対して損害賠償を請求することはできない。

(平成14年 問10)



[解説&正解]

「A及びBは宅地建物取引業者ではないものとする」というのは、宅建業者の場合は宅建業法が適用されるからです。あくまでも民法の問題として解答せよということです。

 誤り   [委任契約の成立]*643条
委任は、当事者の合意だけで成立する諾成契約だから、「高価な財産の売買」かどうかに関係なく、合意さえあれば、委任状を交付しなくても成立する。
※ 委任契約締結の際には委任状が交付されるのが通常であるが、委任状は第三者に対して受任者の権限を証明する手段であって、決して契約成立の要件ではない。


 正しい  [報酬請求権と費用償還請求権]*650条1項
委任は無報酬が原則。つまり、特約(有償の合意)がなければ、受任者は報酬を請求できない。
ただし、委任事務を処理するために必要費を支出したときは、委任者に対し、
① その費用全額と、
② 支出日以後の利息 を請求することができる。
無償だからといって、必要費まで受任者に負担させるべきではないからである。


 誤り   [受任者の善管注意義務]*644条、415条
受任者Bが「善良な管理者の注意義務を怠った」ため、委任者Aに損害を与えたときは、Aは、Bの債務不履行を理由に損害賠償請求をすることができる。

受任者は、報酬の有無に関係なく、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって委任事務を処理しなければならない契約上の義務(善管注意義務)を負っており、この注意義務を欠けば、過失ありとして債務不履行となるからでる。
委任は、対価の関係ではなく信頼関係を基礎とするから、「報酬の合意をしていない」からといって、受任者の責任が軽くなることはない。


 誤り   [相手方に不利な時期の解除]*651条2項
委任は、有償・無償に関係なく、双方からいつでも解除できる。
委任は、互いの信頼関係を基礎としているから、相手方を信頼できなくなったときは、いつでも解消できるようにしているのである。
ただし、相手方にとって不利な時期に解除したときは、原則として、相手方の損害を賠償しなければならない。
「売買契約成立寸前」に、委任者Aが理由なく委任を解除すれば、「有償の合意」がある受任者Bは、報酬を受領できなくなり不利益を受けるから(不利な時期の解除となる)、Aに損害賠償を請求することができる。

[正解] 2


■ワンランク・アップ
1 割合的報酬請求権
有償の場合に、受任者の責めに帰することができない事由によって、委任事務が履行の中途で終了したときは、受任者は、すでにした履行の割合に応じて報酬を請求できます。
委任の報酬は、仕事の完成に対してではなく、事務処理の労務そのものに対して支払われるものだからです。

2 受任者の復任権
委任者は、受任者その人を信頼して委任するわけですから、原則として、受任者は自分で事務を処理し、他人に代行させることはできません。
①委託者本人の許諾を得たときか、または、②やむをえない事由があるときでなければ、他人を選任できないのです(任意代理人と同じ)。

3 委任の終了事由
注意しておきたいのは、次の1点です。
委任者が後見開始の審判を受けても、委任は終了しません。
現実に事務処理を行う受任者が、後見開始の審判を受けた場合に終了するのです。

4 委任の一身専属性
受任者が死亡すれば、有償・無償に関係なく、契約は終了します。
受任者の相続人が、受任者としての地位を相続することはありません。
委任は、当事者双方の個人的な信頼関係で成立・継続していますから、相続には適さないのです。

■しっかり読んでおきたい重要条文
*643条(委任──諾成契約)
委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
*644条(受任者の善管注意義務)
受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。
*650条(受任者による費用等の償還請求等)
1 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用、および支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。


(この項終わり)