|公開日 2017.5.10 |最終更新日 2017.9.20


【問 1】 遺言に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

 自筆証書遺言は、その内容をワープロ等で印字していても、日付と氏名を自書し、押印すれば、有効な遺言となる。

 疾病によって死亡の危急に迫った者が遺言する場合には、代理人が2名以上の証人と一緒に公証人役場に行けば、公正証書遺言を有効に作成することができる。

 未成年であっても、15歳に達した者は、有効に遺言をすることができる。

 夫婦又は血縁関係がある者は、同一の証書で有効に遺言をすることができる。

(平成22年 問10)



[解説&正解]

 誤り   [自筆証書遺言]*968条1項、960条
自筆証書遺言をするには、遺言者が、①全文、②日付、③氏名を自書し、これに押印しなければならない。
「内容をワープロ等で印字」した場合は、有効な遺言とはならない。


 誤り   [死亡の危急に迫った者の遺言]*976条1項
疾病その他の事由によって「死亡の危急に迫った」者が遺言する場合には、証人3人以上の立会いが必要である。
代理人が「2名以上の証人」と公証人役場に行っても、公正証書遺言を有効に作成することはできない。


 正しい  [遺言能力]*961条
未成年であっても、15歳に達した者は、有効に遺言をすることができる。


 誤り   [共同遺言の禁止]*975条
遺言は、2人以上の者が同一の証書ですることを禁止されているので、「夫婦」であっても「血縁関係」があっても、同一の証書で有効に遺言をすることはできない。

[正解] 3


■しっかり読んでおきたい重要条文
*960条(遺言の方式)
遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。
*961条(遺言能力)
15歳に達した者は、遺言をすることができる。
*968条(自筆証書遺言)
1 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文日付氏名自書し、これにを押さなければならない。
*975条(共同遺言の禁止)
遺言は、2人以上の者が同一の証書ですることができない。
*976条(死亡の危急に迫った者の遺言)
1 疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者が遺言をしようとするときは、証人3人以上の立会いをもって、その1人に遺言の趣旨を口授して、これをすることができる。
この場合においては、その口授を受けた者が、これを筆記して、遺言者および他の証人に読み聞かせ、または閲覧させ、各証人がその筆記の正確なことを承認した後、これに署名し、印を押さなければならない。


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【問 2】 被相続人A、相続人B及びC(いずれもAの子)として、Aが遺言をし、又はしようとする場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 Aは、遺言をもって、第三者Dに遺言執行者の指定を委託することができる。

 Aは、「Aの財産をすべてBに遺贈する。CはBに対して遺留分の減殺請求をしてはならない」旨の遺言をして、CをAの相続から排除することができる。

 Aが、「Aの甲土地をBに相続させる」旨の遺言をした場合で、その後甲土地を第三者Eに売却し、登記を移転したとき、その遺言は撤回したものとみなされる。

 Aは、「Aの乙建物をCに相続させる」旨の遺言をした場合で、Bの遺留分を害しないとき、これをC単独の所有に帰属させることができる。

(平成12年 問10)



[解説&正解]

 正しい  [遺言執行者の指定]*1006条1項
遺言者は、遺言で、1人または数人の遺言執行者を指定したり、あるいは、その指定を第三者に委託することができる。


 誤り   [減殺請求権の性質]*1031条
相続人の減殺請求権を奪うような遺言をして、相続から排除することはできない。
被相続人は、相続分を指定したり、遺産の一部を遺言で処分できるが、相続人のために最小限度の財産だけは遺留分として残さなければならず、これを確保するために、固有の権利として減殺請求権が保障されている。
遺言によっても、この権利を侵害することはできない。


 正しい  [遺言とその後の生前処分との抵触]*1023条2項
遺言で「Bに相続させる」とした甲土地を、その後第三者Eに売却した場合には、その遺言は撤回したものとみなされる。
遺言と、後の遺言あるいは遺言後の生前処分(売却など)が矛盾・抵触するときは、抵触部分については、すでに前の遺言どおりの内容を実現する意思はないと認められるからである。


 正しい  [遺言の効力]
他の相続人の遺留分を侵害しない限り、遺言はその内容どおりの効力を有するので、乙建物をCの単独所有とすることも可能である。

[正解] 2

■しっかり読んでおきたい重要条文
*1006条(遺言執行者の指定)
1 遺言者は、遺言で、一人または数人の遺言執行者を指定し、またはその指定を第三者に委託することができる。
*1023条(前の遺言と後の遺言との抵触等)
1 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
2 前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。
*1031条(遺贈・贈与に対する減殺請求)
遺留分権利者およびその承継人は、遺留分を保全するのに必要な限度で、遺贈および贈与の減殺を請求することができる。


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【問 3】 遺留分に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 被相続人Aの配偶者BとAの弟Cのみが相続人であり、Aが他人Dに遺産全部を遺贈したとき、Bの遺留分は遺産の3/8、Cの遺留分は遺産の1/8である。

 遺留分の減殺請求は、訴えを提起しなくても、内容証明郵便による意思表示だけでもすることができる。

 相続が開始して9年6ヵ月経過する日に、はじめて相続の開始と遺留分を害する遺贈のあったことを知った遺留分権利者は、6ヵ月以内であれば、遺留分の減殺請求をすることができる。

 被相続人Eの生前に、Eの子Fが家庭裁判所の許可を得て遺留分の放棄をした場合でも、Fは、Eが死亡したとき、その遺産を相続する権利を失わない。

(平成9年 問10)



[解説&正解]

 誤り   [兄弟姉妹の遺留分]*1028条
被相続人の兄弟姉妹にはそもそも遺留分が認められていないので、「Cの遺留分は遺産の1/8である」は誤り。
ちなみに、配偶者Bの遺留分は(遺留分割合×相続分)、つまり、1/2×3/4=「3/8」だから、被相続人Aが、遺産全部を他人Dに遺贈しても、Bは遺産の3/8については遺留分が認められる。
※ 遺留分が認められているのは、配偶者、子、直系尊属である。


 正しい  [減殺請求権の行使]*最判昭41.7.14
記述のとおり。
減殺請求は、訴えを提起しなくても、裁判外の内容証明郵便による意思表示だけですることができる。
減殺請求権は形成権だから、その行使は、受遺者に対する意思表示によってすれば足り、必ずしも裁判上の請求による必要はないのである。


 正しい  [減殺請求権の消滅時効]*1042条
相続開始後9年6ヵ月経過した日に、相続開始・遺留分侵害を知った遺留分権利者は、その時から6ヵ月以内であれば、減殺請求することができる。
減殺請求権はいつまでも行使できるわけではなく、遺留分権利者が、
① 相続開始および減殺すべき贈与・遺贈を知った時から1年間行使しないとき、
または、
② 相続開始の時から10年経過したときは、時効消滅する。
本肢の場合、①にも、②にも該当しない。


 正しい  [遺留分の放棄]*1043条
遺留分の放棄は、相続権の放棄ではない
したがって、遺留分を放棄したFも相続権を失うことはなく、相続人であることに変わりはないのである。
ただ遺留分を侵害されたときに、減殺請求権を行使できなくなり、遺留分の保護を受けられないだけである。
※ なお、共同相続人の1人が遺留分を放棄しても、他の共同相続人の遺留分に影響はなく、その遺留分が増えるということはないことに注意。

[正解] 1

■しっかり読んでおきたい重要条文
*1028条(遺留分の帰属とその割合)
兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。(以下略)
*1042条(減殺請求権の期間制限)
減殺の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与または遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅する。
相続開始の時から10年を経過したときも、同様とする。
*1043条(遺留分の放棄)
1 相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。
2 共同相続人の一人のした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼさない。


(この項終わり)