|公開日 2017.5.20 |最終更新日 2017.9.16


【問 1】 Aは未婚で子供がなく、父親Bが所有する甲建物にBと同居している。Aの母親Cは平成23年3月末日に死亡している。AにはBとCの実子である兄Dがいて、DはEと婚姻して実子Fがいたが、Dは平成24年3月末日に死亡している。この場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 Bが死亡した場合の法定相続分は、Aが2分の1、Eが4分の1、Fが4分の1である。

 Bが死亡した場合、甲建物につき法定相続分を有するFは、甲建物を1人で占有しているAに対して、当然に甲建物の明渡しを請求することができる。

 Aが死亡した場合の法定相続分は、Bが4分の3、Fが4分の1である。

 Bが死亡した後、Aがすべての財産を第三者Gに遺贈する旨の遺言を残して死亡した場合、FはGに対して遺留分を主張することができない。

(平成24年 問10)



[解説&正解]

 誤り   [法定相続分]*887条2項、900条
相続人は、子A、そして、Bの死亡以前にすでに死亡していた兄Dについては代襲相続が成立するから、Dの子F(=Bの直系卑属)が相続人となる。
その相続分は、Dの相続分と同じである。Dの配偶者Eは相続人ではない。
したがって、法定相続分は、Aが1/2、Fが1/2となる。


 誤り   [相続財産の明渡し]*898条、249条、最判昭41.5.19
甲建物につき法定相続分を有するFは、その占有者Aに対して、当然には、その明渡しを請求することはできない。
共同相続人Aは、自己の持分によって共有建物を使用収益する権限を有し、これに基づいて占有しているからである。


 誤り   [法定相続分]*900条2号
配偶者も子もないAが死亡した場合、相続人は直系尊属のBだけで、その相続分は1/1、つまりすべてを相続する。


 正しい  [遺留分権利者]*1028条
まずBが死亡した場合、相続人はAと兄Dの代襲相続人Fである。
その後、Aが死亡した場合、すでにDも死亡しており、そもそもAの兄弟姉妹には遺留分がないから、FはGに対して遺留分を主張することはできない。

[正解] 4


■しっかり読んでおきたい重要条文
*900条(法定相続分)
同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
一 子および配偶者が相続人であるときは、子の相続分および配偶者の相続分は、各1/2とする。
二 配偶者および直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、2/3とし、直系尊属の相続分は、1/3とする。
三 配偶者および兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、3/4とし、兄弟姉妹の相続分は、1/4とする。
四 子、直系尊属または兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の1/2とする。
*1028条(遺留分の帰属とその割合)
兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。(以下略)


…………………………………………………………


【問 2】 自己所有の建物に妻Bと同居していたAが、遺言を残さないまま死亡した。Aには先妻との間に子C及びDがいる。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 Aの死後、遺産分割前にBがAの遺産である建物に引き続き居住している場合、C及びDは、Bに対して建物の明渡しを請求することができる。

 Aの死後、遺産分割前にBがAの遺産である建物に引き続き居住している場合、C及びDは、それぞれBに対して建物の賃料相当額の1/4ずつの支払いを請求することができる。

 A死亡の時点でBがAの子Eを懐妊していた場合、Eは相続人とみなされ、法定相続分は、Bが1/2、C・D・Eは各1/6ずつとなる。

 Cの子FがAの遺言書を偽造した場合には、CはAを相続することができない。

(平成16年 問12)



[解説&正解]

 誤り   [相続財産の明渡し]*898条、249条、最判昭41.5.19
遺産分割前の建物は、共同相続人B・C・Dの共有に属し、各共有者は、その持分に応じて建物全部を使用できるから、仮にC・Dの持分価格が過半数を超えていたとしても、現に建物を占有するBに対して、当然にはその明渡しを請求することはできない。
判例は「少数持分権者Bは、自己の持分によって建物を使用収益する権限を有し、これに基づいて建物を占有しているのだから、明渡しを求めるためには、その理由を主張・立証しなければならない」としている。


 誤り   [不当利得返還請求]*最判平8.12.17
判例によれば、共同相続人の1人Bが、相続開始前から被相続人Aの許諾を得て、遺産である建物に同居してきたときは、特段の事情のない限り、両者の間で、Aが死亡し相続が開始した後も、遺産分割により建物の所有関係が最終的に確定するまでの間は、引き続きBに無償で使用させる旨の合意があったものとされる。双方の通常の意思に合致するといえるからである。
このため、遺産分割終了までの間は、Aの地位を承継したC・Dを貸主、Bを借主とする建物の使用貸借契約関係が存続することとなるので、Bに不当利得は存在せず、賃料相当額の支払いを請求することはできないのである。


 正しい  [胎児の権利能力]*886条1項、900条
まだ出生していない胎児Eも、相続については、すでに生まれたものとみなされ、1人の相続人として扱われる。
したがって、法定相続分は、妻Bが1/2、子C・D、胎児Eが、それぞれ1/6ずつとなる。


 誤り   [相続欠格事由]*891条5号
相続人が遺言書を偽造した場合に、その相続人が相続欠格となるのであって、相続人Cの子Fが、被相続人Aの遺言書を偽造しても、Cが相続権を失うことはない。

[正解] 3


■ワンランク・アップ
[胎児の権利能力──胎児に遺産を与えることはできる?]
人は、出生によって権利能力(法律上の権利者となれる資格)を取得しますから(3条)、母親の胎内にあってまだ出生していない胎児は、民法上は人ではないため権利能力がありません。これが大原則です。
しかし、現代の医療技術では、生きて生まれる可能性がきわめて高いわけですから、一定の場合には胎児の利益のために、例外としてすでに出生したものとみなされ、権利能力者として扱われます。

つまり、①相続、②遺贈、③不法行為に基づく損害賠償請求権の3つに限っては、胎児も権利能力を有します。
母親の胎内にある胎児も、①相続については、すでに生まれたものとみなされ、1人の相続人として扱われるのです。
また、②遺贈に関しても、胎児も受遺者となることができますので、胎児に対して遺言で財産を与えることができます。

■しっかり読んでおきたい重要条文
*249条(共有物の使用)
各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
*886条(相続に関する胎児の権利能力)
1 胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
*891条(相続人の欠格事由)
次に掲げる者は、相続人となることができない。
五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、または隠匿した者
*898条(共同相続の効力)
相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。


…………………………………………………………


【問 3】 相続に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 相続開始の時において相続人が数人あるとき、遺産としての不動産は、相続人全員の共有に属する。

 被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定めることができ、また相続開始の時から5年を超えない期間内で遺産の分割を禁ずることもできる。

 遺産の分割について共同相続人間に協議が調わないとき、各共同相続人は、その分割を、相続開始地の地方裁判所に請求することができる。

 相続開始の時から3年以上経過した後に遺産の分割をしたときでも、その効力は、第三者の権利を害しない範囲で、相続開始の時にさかのぼって生ずる。

(平成11年 問3)



[解説&正解]

 正しい  [共同相続と共有]*898条
記述のとおり。
相続人が数人あるときは、相続開始から具体的に遺産分割がなされるまでは、不動産・債権債務などの個々の相続財産は、ひとまず全員の共有に属する。
つまり、相続開始から遺産分割までは、共有とされるのである。


 正しい  [遺言による指定分割と分割禁止]*908条、256条1項
記述のとおり。
被相続人は、遺言で、遺産分割の方法を定めることができ、また、相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産分割を禁じることができる。

※ 一般的に共有物の分割については、分割をしない旨の不分割契約をすることもできるが、その期間は5年を超えることができない。相続財産の分割も例外ではないのである。


 誤り   [遺産分割の管轄裁判所]*907条2項
「地方裁判所」が誤り。
遺産分割について協議が調わないときは、各共同相続人は、その分割を、相続開始地の家庭裁判所に請求することができる。


 正しい  [遺産分割の効力]*909条
記述のとおり。
共同相続人は、被相続人が遺言で禁じた場合を除いて、いつでもその協議で遺産分割をすることができる。
遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生じるが、第三者の権利を害することはできない。

[正解] 3


■しっかり読んでおきたい重要条文
*907条(遺産分割の協議、審判)
1 共同相続人は、被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の分割をすることができる。
2 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができる。
*908条(遺産分割の方法の指定、遺産分割の禁止)
被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、あるいはこれを定めることを第三者に委託し、または相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。
*909条(遺産分割の効力)
遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。


(この項終わり)