|公開日 2017.5.10


【問 1】 AはBから建物を賃借し、Bの承諾を得て、当該建物をCに転貸している。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。なお、Aの支払うべき賃料の額は、Cの支払うべき転借料の額より小さいものとする。

 AとBとが賃貸借契約を合意解除した場合、AC間の転貸借契約は、その前提を失うため、特別の事情のある場合を除き、当然に終了する。

 Cは、Bから請求があれば、CがAに支払うべき転借料全額を直接Bに支払うべき義務を負う。

 Bは、Aの債務不履行によりAB間の賃貸借契約を解除しようとする場合、Cに対して、3ヵ月以前に通知し、Aに代わって賃料を支払う機会を与えなければならない。

 Bが、Aの債務不履行によりAB間の賃貸借契約を適法に解除した場合、Cは、AC間の転貸借契約に基づく転借権をBに対抗することができない。

(平成10年 問6)



[解説&正解]

本問は、賃貸人の承諾を得てなされた適法な転貸借であることが前提となっています。

 誤り   [適法な転貸借と合意解除]*最判昭38.2.21
賃貸人の承諾を得て適法な転貸借がなされた場合に、賃貸人と賃借人が賃貸借を合意解除しても、転借人に不信な行為があるなど特別の事情がある場合を除いて、転貸借は当然には終了しない。
※ 同様に、土地賃貸人と賃借人が土地賃貸借契約を合意解除しても、土地賃貸人は、特別の事情のないかぎり、その効果を賃借地上の建物賃借人に対抗できない(最判昭38.2.21)。


 誤り   [転貸借の効果]*613条1項
転借人Cは、賃貸人Bから請求があっても、「転借料全額」を支払う必要はない。
適法な転貸借がある場合、転借人は賃貸人に対して直接に義務を負うが、この義務の範囲は、①転借人が転貸人に対して負う義務の範囲に限定され、同時に、②賃借人が賃貸人に対して負う義務の範囲によっても限定される。
つまり賃貸人は、転借人に対して直接に借賃を請求できるが、その額は「転借料全額」ではなく、賃借人が賃貸人に支払うべき賃借料の範囲内なのである。

 転貸借


 誤り   [債務不履行による解除]*最判昭37.3.29
適法な転貸借がある場合、賃貸人Bが、賃借人Aの債務不履行(賃料延滞など)を理由に賃貸借を解除するには、Aに対して催告すれば足り、転借人Cに延滞賃料を支払う機会を与える必要はない。


 正しい  [債務不履行解除は転貸借を終了させるか]*最判昭36.12.21
適法な転貸借がある場合、賃借人Aの債務不履行により賃貸借が解除されれば、その結果、Aは、転貸人としての債務が履行不能となるので、転貸借は、賃貸借の終了と同時に終了する。
転借人Cは、転借権を賃貸人Bに対抗することはできないのである。
※ 選択肢1の合意解除との相違に注意。

[正解] 4


■しっかり読んでおきたい重要条文
*613条(転貸の効果)
1 賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人に対して直接に義務を負う。この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない。


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【問 2】 Aは、Bに対し建物を賃貸し、Bは、その建物をAの承諾を得てCに対し適法に転貸している。この場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 BがAに対して賃料を支払わない場合、Aは、Bに対する賃料の限度で、Cに対し、Bに対する賃料を自分に直接支払うよう請求することができる。

 Aは、Bに対する賃料債権に関し、Bが建物に備え付けた動産、及びBのCに対する賃料債権について先取特権を有する。

 Aが、Bとの賃貸借契約を合意解除しても、特段の事情がない限り,Cに対して、合意解除の効果を対抗することができない。

 Aは、Bの債務不履行を理由としてBとの賃貸借契約を解除するときは,事前にCに通知等をして、賃料を代払いする機会を与えなければならない。

(平成23年 問7)



[解説&正解]

過去問は繰り返し出題されるという好例の問題です。
前問の【問1】(平成10年問6)とほぼ同じ問題で、このような例は少なくありません。「過去問は繰り返す」ですヨ。

 正しい  [転貸借の効果]*613条1項
適法な転貸借の場合、転借人Cは賃貸人Aに対して直接に義務を負うことになる。いいかえれば、AはCに対して直接に借賃を請求できるのである。
その額は、賃借人BがAに支払う賃料の範囲内であって、Bの賃料不払いがあれば、AはCに対し、その賃料を自分に直接支払うよう請求することができる。


 正しい  [賃料債権の先取特権]*313条2項、314条
建物賃貸人Aは、賃借人Bに対する賃料債権に関し、Bがその建物に備え付けた動産について先取特権を有する。また転貸借がある場合には、転貸人が受ける転貸賃料についても、先取特権を有する。


 正しい  [適法な転貸借と合意解除]*最判昭38.2.21
賃貸借を合意解除しても、原則としてその効果を転借人には対抗できない。
適法な転貸借の場合には、転借人に不信な行為がある(たとえば、転借人が指定暴力団関係者である)など、合意解除することが信義誠実の原則に反しないような特段の事由のある場合を除いて、合意解除により転借人の権利を勝手に消滅させることはできないのである。


 誤り   [債務不履行による解除]*最判昭37.3.29
適法な転貸借がある場合、賃貸人Bが、賃借人Aの債務不履行(賃料延滞など)を理由として賃貸借を解除するときは、Aに対して催告すれば足り、転借人Cに対して延滞賃料を支払う機会を与える必要はない。

[正解] 4


■しっかり読んでおきたい重要条文
*313条(不動産賃貸の先取特権の目的物の範囲)
2 建物の賃貸人の先取特権は、賃借人がその建物に備え付けた動産について存在する。
*314条(賃貸人の先取特権)
賃借権の譲渡または転貸の場合には、賃貸人の先取特権は、譲受人または転借人の動産にも及ぶ。譲渡人または転貸人が受けるべき金銭についても、同様とする。


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【問 3】 AがB所有の建物について賃貸借契約を締結し、引渡しを受けた場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 AがBの承諾なく当該建物をCに転貸しても、この転貸がBに対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、BはAの無断転貸を理由に賃貸借契約を解除することはできない。

 AがBの承諾を受けてDに対して当該建物を転貸している場合には、AB間の賃貸借契約がAの債務不履行を理由に解除され、BがDに対して目的物の返還を請求しても、AD間の転貸借契約は原則として終了しない。

 AがEに対して賃借権の譲渡を行う場合のBの承諾は、Aに対するものでも、Eに対するものでも有効である。

 AがBの承諾なく当該建物をFに転貸し、無断転貸を理由にFがBから明渡請求を受けた場合には、Fは明渡請求以後のAに対する賃料の全部又は一部の支払を拒むことができる。

(平成18年 問10)



[解説&正解]

 正しい  [無断転貸と背信的行為]*612条2項、最判昭36.4.28
賃借人は、そもそも賃貸人の承諾を得なければ、賃借権を譲渡したり、賃借物を転貸することができず、これに反して無断転貸があれば、賃貸人は契約を解除することができる。これが大原則。

しかし、判例によれば、無断転貸であっても、賃貸人に対する「背信的行為と認めるに足りない特段の事情があるとき」は、契約解除はできない。
賃貸借は、双方の信頼関係が継続する関係だから、その信頼関係を破壊するような悪質な無断転貸の場合にだけ解除できるとして、無断転貸を形式的に判断するのではなく、実質的に判断したのである。


 誤り   [債務不履行と転貸借の終了]*最判平9.2.25
適法な転貸借がなされても、賃借人Aの債務不履行によりAB間の賃貸借が解除されれば、Aは転借人Dに対して、転貸人としての債務が履行不能となる
そのためAD間の転貸借は、AB間の賃貸借の終了と同時に終了することになる。
転借人Dは、転借権を賃貸人Bに対抗できず、建物を返還しなければならない。


 正しい  [承諾の相手方]*最判昭31.10.5
賃借権の譲渡または賃借物の転貸を行う場合、賃貸人Bによる承諾の相手方は、賃借人でも譲受人でも、また転借人でも有効である。


 正しい  [担保責任と賃料支払拒絶権]*576条、最判昭50.4.25
賃借権の無断転貸があれば、建物賃貸人Bは無断転貸を理由に、転借人Fに対しその明渡しを求めることができる。
この場合、転借人Fが明渡請求を受けたために、転借権の全部または一部を失うおそれがあるときは、それ以後、その危険の限度に応じて、転貸人Aに対する賃料の全部または一部の支払いを拒むことができる。

[正解] 2


■ワンランク・アップ  [賃貸人の承諾]
612条1項は「賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、または賃借物を転貸することができない」と定めています。
承諾を必要としているのは、賃貸借契約が、賃貸人と賃借人の信頼関係に基づいてなされるものであることから、賃貸人が信頼関係ありと認めた賃借人以外の者によって、勝手に賃貸物を利用されることを制限する趣旨なのです。

■しっかり読んでおきたい重要条文
*612条(賃借権の譲渡・転貸の制限)
1 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、または賃借物を転貸することができない。
2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。
*576条(権利を失うおそれがある場合の買主による代金の支払拒絶)
売買の目的について権利を主張する者があるために、買主がその買い受けた権利の全部または一部を失うおそれがあるときは、買主は、その危険の限度に応じて、代金の全部または一部の支払を拒むことができる。


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【問 4】 賃貸人Aから賃借人Bが借りたA所有の甲土地の上に、Bが乙建物を所有する場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。なお、Bは、自己名義で乙建物の保存登記をしているものとする。

 BがAに無断で乙建物をCに月額10万円の賃料で貸した場合、Aは、借地の無断転貸を理由に、甲土地の賃貸借契約を解除することができる。

 Cが甲土地を不法占拠してBの土地利用を妨害している場合、Bは、Aの有する甲土地の所有権に基づく妨害排除請求権を代位行使してCの妨害の排除を求めることができるほか、自己の有する甲土地の賃借権に基づいてCの妨害の排除を求めることができる。

 BがAの承諾を得て甲土地を月額15万円の賃料でCに転貸した場合、AB間の賃貸借契約がBの債務不履行で解除されても、AはCに解除を対抗することができない。

 AB間で賃料の支払時期について特約がない場合、Bは、当月末日までに、翌月分の賃料を支払わなければならない。

(平成26年 問7)



[解説&正解]

 誤り  [借地上の建物賃貸は転貸にあたるか]*大判昭8.12.11
地主Aは、借地の無断転貸を理由に、土地の賃貸借契約を解除することはできない。
判例は、借地上の建物賃貸は「無断転貸」には該当しないと解しているが、それは賃貸人が賃借人に対して、借地上に建物を建築所有して土地利用することを認めている以上、賃借人がその建物に居住しようが、第三者に賃貸して利用させようが、土地の使用方法としては何の問題もなく、両者の信頼関係を損なうものではないからである。

※ ただし、借地権と借地上の建物を第三者に売却することは、賃貸人が予想する利用範囲を超えており、賃借権の無断譲渡に該当するので、賃貸人は、建物収去と土地明渡しを求めることができる。


 正しい  [賃借権による妨害排除請求権]*大判昭4.12.16、最判昭28.12.18
Bは、甲土地の利用を妨害している不法占拠者Cに対して、
① 甲土地所有者Aの有する所有権に基づく妨害排除請求権を代位行使して、妨害排除を求めることができるだけでなく、
② 自ら甲土地の賃借権に基づいて妨害排除を求めることができる。
Bは「自己名義で乙建物の保存登記をしている」から、第三者に対抗できる土地賃借権を有しており、この場合、判例は、その賃借権はいわゆる物権的効力を有するとして、「第三者に対し、直接にその建物の収去、土地の明渡しを請求することができる」としている。


 誤り   [債務不履行と転貸借の終了]*最判平9.2.25
適法な転貸借であっても、AB間の賃貸借契約が賃借人Bの債務不履行で解除されれば、BはCに対する転貸人としての債務が履行不能となり、したがって転貸借は、AB間の賃貸借の終了と同時に終了することになる。
Aは、転借人Cに解除を対抗することができるのである。


 誤り   [賃料の支払時期]*614条
建物や宅地の賃料支払時期について特約がない場合、当月分は、毎月末に支払えばよい。「当月末日までに、翌月分の賃料を支払」う必要はない。

[正解] 2


■しっかり読んでおきたい重要条文
*614条(賃料の支払時期)
賃料は、動産、建物、宅地については毎月末に、その他の土地については毎年末に、支払わなければならない。


(この項終わり)