|公開日 2017.5.10


【問 1】 Aは、土地所有者Bから土地を賃借し、その土地上に建物を所有してCに賃貸している。AのBに対する借賃の支払債務に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 Cは、借賃の支払債務に関して法律上の利害関係を有しないので、Aの意思に反して、債務を弁済することはできない。

 Aが、Bの代理人と称して借賃の請求をしてきた無権限者に対し債務を弁済した場合、その者に弁済受領権限があるかのような外観があり、Aがその権限があることについて善意、かつ、無過失であるときは、その弁済は有効である。

 Aが、当該借賃を額面とするA振出しに係る小切手(銀行振出しではないもの)をBに提供した場合、債務の本旨に従った適法な弁済の提供となる。

 Aは、特段の理由がなくとも、借賃の支払債務の弁済に代えて、Bのために弁済の目的物を供託し、その債務を免れることができる。

(平成17年 問7)



[解説&正解]

 誤り   [利害関係を有する第三者の弁済]*474条2項、最判昭63.7.1
弁済は第三者でもすることができるが、「法律上の利害関係を有しない」第三者は、債務者の意思に反して弁済することはできない。いいかえれば、法律上の利害関係を有する第三者は、債務者の意思に反しても弁済することができるのである。
借地上の建物賃借人Cは、借地人(建物賃貸人)Aの借賃支払債務が不履行になれば、土地の賃貸借が解除され、建物を明け渡さなければならなくなり、この点に「法律上の利害関係を有する」ので、Aの意思に反しても、その借賃支払債務を弁済することができる。


 正しい  [債権の準占有者への弁済は有効か]*478条、最判昭37.8.21
債権者の代理人と称して借賃の請求をしてきた無権限者も、真実の弁済受領権限があるかのような外観を有していれば、債権の準占有者とされる。
債権の準占有者に対する弁済は、弁済者Aが善意無過失のときに限り、有効である。


 誤り   [小切手による弁済提供]*493条、最判昭37.9.21
「銀行振出しではない」個人の振出し小切手を提供しても、債務の本旨に従った弁済の提供とはならない。
このような小切手は、取引界において通常その支払いが確実なものとして現金と同様の取扱いがされる銀行の自己宛振出小切手とは異なり、不渡りの危険があって弁済信用力に乏しいからである。


 誤り   [供託原因]*494条
債務者Aは「特段の理由」がない以上、自分の都合で勝手に供託することはできない。
債務者は、法定の供託原因(特段の理由)がなければ、弁済の目的物を供託することによって債務を免れることはできないのである。
供託原因は、
① 債権者が弁済の受領を拒むとき
② 債権者が受領できないとき
③ 弁済者が過失なく債権者を確知できないとき、の3つ。

[正解] 2


■ワンランク・アップ  [法律上の利害関係を有する第三者]
法律上の利害関係を有する第三者というのは、保証人や物上保証人(抵当不動産を提供している者)、抵当不動産の第三取得者などのように、債務者が弁済しないと自分の財産が差し押さえられるなど法律上の不利益を受ける者をいいます。
債務者の友人とか親族は事実上の利害関係はあっても、それだけで法律上の利害関係があるとはいえません。

■しっかり読んでおきたい重要条文
*474条(第三者の弁済)
1 債務の弁済は、第三者もすることができる。
ただし、その債務の性質がこれを許さないとき、または当事者が反対の意思を表示したときは、この限りでない。
2 利害関係を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。
*478条(債権の準占有者に対する弁済)
債権の準占有者に対してした弁済は、その弁済をした者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限り、その効力を有する。
*493条(弁済の提供の方法)
弁済の提供は、債務の本旨に従って現実にしなければならない。ただし、債権者があらかじめその受領を拒み、または債務の履行について債権者の行為を要するときは、弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足りる。
*494条(供託)
債権者が弁済の受領を拒み、またはこれを受領することができないときは、弁済者は、債権者のために弁済の目的物を供託してその債務を免れることができる。
弁済者が過失なく債権者を確知することができないときも、同様とする。


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【問 2】 Aが、Bに対して不動産を売却し、所有権移転登記及び引渡しをした場合のBの代金の弁済に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 Bの親友Cが、Aに直接代金の支払いを済ませても、それがBの意思に反する弁済である場合には、Bの代金債務は消滅しない。

 Aが、Bに対し代金債権より先に弁済期の到来した別口の貸金債権を有する場合に、Bから代金債権の弁済として代金額の支払いを受けたとき、Aは、Bの意思に反しても、代金債権より先にその貸金債権に充当することができる。

 Bが、「AからDに対して代金債権を譲渡した」旨記載された偽造の文書を持参した代金債権の準占有者Dに弁済した場合で、Bが善意無過失であるとき、Bは、代金債務を免れる。

 Bの友人Eが、代金債務を連帯保証していたためAに全額弁済した場合、Eは、Aの承諾がないときでも、Aに代位する。

(平成11年 問5)



[解説&正解]

 正しい  [利害関係を有しない第三者の弁済]*474条2項
債務の弁済は、原則として第三者でもすることができるが、法律上の利害関係を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済することはできない。
たとえ債務者の利益となっても、その意思に反して強制することはできないからである。
「親友」というだけでは、法律上の利害関係があるとはいえないので、親友Cによる弁済も、債務者Bの意思に反する場合には無効であり、Bの代金債務は消滅しない。


 誤り   [弁済の充当の指定]*488条
債権者Aは、別口の貸金債権があっても、弁済者Bから「代金債権の弁済として」支払いを受けたときは、その意思に反して、これを貸金債権に充当することはできない。
数個の債務を負担する債務者の弁済が不足して、債務全部を消滅させることができないときは、まず弁済者が一方的にどの債務の弁済なのかを指定できる。
これは弁済者が最も利害を有しているからである。


 正しい  [債権の準占有者への弁済]*478条、最判昭2.6.22
債権の準占有者に対してした弁済は、弁済者が善意無過失のときに限り、有効とされる。
判例は、偽造の債権証書の所持人Dも、債権の準占有者としており、したがって、弁済者Bが善意無過失であるときは、Dへの弁済は有効となり、Bは代金債務を免れる。


 正しい  [連帯保証人は法定代位できるか]*500条
弁済をするについて正当な利益を有する者は、弁済によって当然に債権者に代位する(法定代位)。
債務者Bの友人Eは、弁済をするについて正当な利益を有する連帯保証人だから、債権者Aの承諾がないときでも、弁済によって当然にAに代位するのである。

※ 保証人、連帯保証人、連帯債務者、担保不動産の第三取得者(買主)などのように、弁済をするについて正当な利益を有する者は、債権者の承諾がなくても、弁済によって当然に債権者に法定代位する。

[正解] 2


■しっかり読んでおきたい重要条文
*488条(弁済の充当の指定)
1 債務者が同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担する場合において、弁済として提供した給付がすべての債務を消滅させるのに足りないときは、弁済をする者は、給付の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができる。
*500条(法定代位)
弁済をするについて正当な利益を有する者は、弁済によって当然に債権者に代位する。


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【問 3】 AはBとの間で、土地の売買契約を締結し、Aの所有権移転登記手続とBの代金の支払を同時に履行することとした。決済約定日に、Aは所有権移転登記手続を行う債務の履行の提供をしたが、Bが代金債務につき弁済の提供をしなかったので、Aは履行を拒否した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 Bは、履行遅滞に陥り、遅延損害金支払債務を負う。

 Aは、一旦履行の提供をしているので、これを継続しなくても、相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内にBが履行しないときは土地の売買契約を解除できる。

 Aは、一旦履行の提供をしているので、Bに対して代金の支払を求める訴えを提起した場合、引換給付判決ではなく、無条件の給付判決がなされる。

 Bが、改めて代金債務を履行するとして、自分振出しの小切手をAの所に持参しても、債務の本旨に従った弁済の提供とはならない。

(平成18年 問8)



[解説&正解]

 正しい  [同時履行と履行遅滞]*415条
「同時に履行する」という約定があるのに、Aが決済約定日(弁済期)に履行の提供をしたにもかかわらず、Bが弁済の提供をしなければ、Bは履行遅滞となるから、損害賠償として遅延損害金支払債務が生じる。


 正しい  [履行の提供継続と解除]*541条、最判昭36.6.22
同時履行の関係にあるAが、決済約定日(履行期日)に履行の提供をした以上、Bはすでに履行遅滞となっており、Aは契約解除できる状態にある
したがって、Aは履行の提供を「継続しなくても」、相当期間の催告後、契約を解除できる。


 誤り   [履行の提供と引換給付判決]*大判明44.12.11
「履行の提供」をしたAが、「代金の支払」(履行)を求める訴えを提起した場合には、無条件の給付判決がなされるのではなく、「Aからの登記移転と引き換えに、Bは代金を支払え」という引換給付判決がなされる。
最終的には、双方がともに履行する債務を負っているからである。


 正しい  [小切手による弁済提供]*493条、最判昭37.9.21
「自分振出しの小切手」を提供しても、債務の本旨に従った弁済の提供とはならない。個人振出し小切手は、銀行の自己宛振出小切手とは異なり、弁済信用力に乏しく、不渡りの危険があるからである。

[正解] 3


■しっかり読んでおきたい重要条文
*415条(債務不履行による損害賠償)
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。
債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。
*541条(履行遅滞等による解除権)
当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。

■ワンランク・アップ
1 受取証書の持参人への弁済
受取証書(領収証)の持参人は、原則として弁済を受領する権限があるとみなされます
したがって、持参人に受領権限がなくても、そのことについて弁済者が善意無過失(過失なくしてその事情を知らなかったとき)であれば、その弁済は、受領権限のある者に対してなされたのと同様に有効となり、債権は消滅します。
2 受取証書の交付請求(486条、大判昭16.3.1)
弁済する者は、受領者に対して受取証書の交付を請求できますが、受取証書は弁済の証拠となるものですから、弁済と同時に交付される必要があります。
つまり、弁済と受取証書の交付とは同時履行の関係に立ちますから、弁済者は、領収証の交付がなされるまで、弁済を拒むことができます。
3 代位の付記登記(501条1号、最判昭41.11.18)
連帯保証人は、弁済によって、主たる債務者に対して当然に抵当権者に法定代位しますが、その弁済後に抵当不動産を取得した第三取得者に対しては、あらかじめ抵当権の登記に代位の付記登記をしておかなければ、抵当権者に代位して抵当権を主張することはできません。
これは、177条と同じ趣旨で、弁済した保証人が代位権を行使するかどうかを登記によって公示しないと、第三取得者に不測の損害を与えるからです。


(この項終わり)