|公開日 2017.5.10|最終更新日 2017.10.9


【問 1】 Aを売主、Bを買主として甲土地の売買契約を締結した場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 A所有の甲土地にAが気付かなかった瑕疵があり、その瑕疵については、Bも瑕疵であることに気付いておらず、かつ、気付かなかったことにつき過失がないような場合には、Aは瑕疵担保責任を負う必要はない。

 BがAに解約手付を交付している場合、Aが契約の履行に着手していない場合であっても、Bが自ら履行に着手していれば、Bは手付を放棄して売買契約を解除することができない。

 甲土地がAの所有地ではなく、他人の所有地であった場合には、AB間の売買契約は無効である。

 A所有の甲土地に抵当権の登記があり、Bが当該土地の抵当権消滅請求をした場合には、Bは当該請求の手続が終わるまで、Aに対して売買代金の支払を拒むことができる。

(平成21年 問10)



[解説&正解]

 誤り   [瑕疵担保責任の性質]
売主が負担する瑕疵担保責任は無過失責任である。
つまり瑕疵について、売主の故意・過失を問題とせずに責任を負わせるものである。
売主Aが「気付かなかった」隠れた瑕疵について、買主Bが善意・無過失であれば、Aは瑕疵担保責任を負わなければならない。


 誤り   [解約手付と履行の着手]*557条
解約手付を交付した買主Bは、「自ら履行に着手」していても、相手方の売主Aが「履行に着手していない」場合は、手付を放棄して売買契約を解除できる。


 誤り   [他人物売買]*560条
他人の権利を売買の目的としたときでも、売買契約は有効に成立する。
売主は、他人の権利を取得してこれを買主に移転する義務を負うことになる。


 正しい  [抵当権登記がある場合の代金支払拒絶]*577条
条文そのままの出題である。
買い受けた不動産に抵当権の登記があるときは、買主は、抵当権消滅請求の手続が終わるまで、売買代金の支払いを拒むことができる。

※ ただし、売主の利益も保護する必要があるから、抵当権消滅請求の手続が終わらなくても、買主に対して代金の供託を請求することが売主に認められている(578条)。
なお「抵当権消滅請求の手続終了」であって、「登記が抹消されるまで」などの記述に引っかからないように。

[正解] 4


■しっかり読んでおきたい重要条文
*560条(他人の権利の売買における売主の義務)
他人の権利を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。
*577条(抵当権登記がある場合の買主による代金の支払拒絶)
1 買い受けた不動産について抵当権の登記があるときは、買主は、抵当権消滅請求の手続が終わるまで、その代金の支払を拒むことができる。この場合において、売主は、買主に対し、遅滞なく抵当権消滅請求をすべき旨を請求することができる。


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【問 2】 AからBが建物を買い受ける契約を締結した場合(売主の担保責任についての特約はない。)に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 この建物がCの所有で、CにはAB間の契約締結時からこれを他に売却する意思がなく、AがBにその所有権を移転することができない場合でも、AB間の契約は有効に成立する。

 Aが、この建物がAの所有に属しないことを知らず、それを取得してBに移転できない場合は、BがAの所有に属しないことを知っていたときでも、Aは、Bの受けた損害を賠償しなければ、AB間の契約を解除することができない。

 AがDに設定していた抵当権の実行を免れるため、BがDに対しAの抵当債務を弁済した場合で、BがAB間の契約締結時に抵当権の存在を知っていたとき、Bは、Aに対し、損害の賠償請求はできないが、弁済額の償還請求はすることができる。

 Bが、この建物の引渡し後、建物の柱の数本に、しろありによる被害があることを発見した場合は、AがAB間の契約締結時にこのことを知っていたときでないと、Bは、Aに損害賠償の請求をすることはできない。

(平成11年 問10)



[解説&正解]

 正しい  [他人の権利の売買]*560条、555条、最判昭25.10.26
建物がCの所有で、他に売却する意思がなく、売主Aが、買主Bにその所有権を移転できない場合でも、第三者に属する権利を売る売買契約自体は有効に成立する(原始的不能による無効にはならない)。
売買は、売主がある財産権を買主に移転することを約し、買主がその代金を支払うことを約することによって、つまり双方の合意だけで成立し効力を生じる。
本肢のような場合、売主Aは、契約上、建物の所有権を取得して買主Bに移転する債務を負い、移転できなければ債務不履行責任を負うことになる。


 誤り   [善意の売主の契約解除権]*562条
建物が自己の所有でないことを知らない善意の売主Aが、これを取得して買主Bに移転できない場合、Aは、損害賠償をして契約を解除できる。
しかし、買主Bが、Aの所有でないことを「知っていたとき」(悪意)には、Aは、損害賠償をすることなく、単に移転できない旨を通知して契約を解除できる。

※ 562条は、売主の解除権を定めた規定であって担保責任を定めたものではないが、便宜上、この位置に規定されている。
売主が、自分のものでないことを知らないというのは、ちょっと考えられない事態だが、たとえば、時効によりすでに他人の所有になっているのに気づかなかった場合などが考えられる。


 誤り   [買主が所有権を保存したとき]*567条2項・3項
買主Bが、売主Aの抵当債務を弁済して建物の所有権を保存したときは、Bは、抵当権の存在について善意・悪意に関係なく、
① 弁済額の償還請求、および、
② 損害を受けたときの賠償請求 をすることができる。


 誤り   [担保責任の性質]
売主の瑕疵担保責任については、民法の規定では、瑕疵が生じたことについて、売主の故意・過失は要求されておらず無過失責任とされている。
したがって、売主Aが、契約締結時にしろありによる被害を「知っていたとき」でなくても、買主Bは、損害賠償請求をすることができる。

[正解] 1


■しっかり読んでおきたい重要条文
*555条(売買)
売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
*562条(他人の権利の売買における善意の売主の解除権)
1 売主が契約の時においてその売却した権利が自己に属しないことを知らなかった場合において、その権利を取得して買主に移転することができないときは、売主は、損害を賠償して、契約の解除をすることができる。
2 前項の場合において、買主が契約の時においてその買い受けた権利が売主に属しないことを知っていたときは、売主は、買主に対し、単にその売却した権利を移転することができない旨を通知して、契約の解除をすることができる。
*567条 (抵当権がある場合の売主の担保責任)
1 売買の目的である不動産について存した先取特権または抵当権の行使により買主がその所有権を失ったときは、買主は、契約の解除をすることができる。
2 買主は、費用を支出してその所有権を保存したときは、売主に対し、その費用の償還を請求することができる。
3 前2項の場合において、買主は、損害を受けたときは、その賠償を請求することができる。


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【問 3】 Aを売主、Bを買主とする甲土地の売買契約(以下この問において「本件契約」という。)が締結された場合の売主の担保責任に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 Bが、甲土地がCの所有物であることを知りながら本件契約を締結した場合、Aが甲土地の所有権を取得してBに移転することができないときは、BはAに対して、損害賠償を請求することができない。

 Bが、甲土地がCの所有物であることを知りながら本件契約を締結した場合、Aが甲土地の所有権を取得してBに移転することができないときは、Bは、本件契約を解除することができる。

 Bが、A所有の甲土地が抵当権の目的となっていることを知りながら本件契約を締結した場合、当該抵当権の実行によってBが甲土地の所有権を失い損害を受けたとしても、BはAに対して、損害賠償を請求することができない。

 Bが、A所有の甲土地が抵当権の目的となっていることを知りながら本件契約を締結した場合、当該抵当権の実行によってBが甲土地の所有権を失ったときは、Bは、本件契約を解除することができる。

(平成28年 問6)



[解説&正解]

 正しい  [他人の権利の売買損害賠償請求]*561条
他人物の売却で、売主がその権利を取得して買主に移転することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。
ただし、契約時においてその権利が売主に属しないことを知っていた(悪意)のであれば、解除しても損害賠償を請求することはできない。
権利を取得できないかも知れないときの損害は覚悟すべきだからである。


 正しい  [他人の権利の売買──契約解除]*561条
選択肢1と同様に、他人物の売却で、売主がその権利を取得して買主に移転することができないときは、買主は善意・悪意に関係なく、契約を解除することができる。
Cの所有物であることを「知りながら」契約した悪意の買主Bも、取得できるはずの権利が得られず契約目的が達成できなくなるのだから、解除権は認められるのである。


 誤り   [抵当権がある場合の売主の担保責任]*567条1項・3項
抵当物の売買で、抵当権の実行によって買主Bが抵当物の所有権を失ったときは、Bは、善意・悪意に関係なく、契約を解除することができ、また損害を受けたときには損害賠償を請求することもできる。


 正しい  [抵当権がある場合の売主の担保責任]*567条1項
選択肢3と同様に、抵当権の実行によって買主Bが抵当物の所有権を失ったときは、その善意・悪意に関係なく、契約を解除することができる。

[正解] 3


■しっかり読んでおきたい重要条文
*561条(他人の権利の売買における売主の担保責任)
他人の権利の売買において、売主がその売却した権利を取得して買主に移転することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。
この場合、契約の時においてその権利が売主に属しないことを知っていたときは、損害賠償の請求をすることができない。


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【問 4】 宅地建物取引業者ではないAB間の売買契約における売主Aの責任に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 Bは住宅建設用に土地を購入したが、都市計画法上の制約により当該土地に住宅を建築することができない場合には、そのことを知っていたBは、Aに対し土地売主の瑕疵担保責任を追及することができない。

 Aは、C所有の土地を自ら取得するとしてBに売却したが、Aの責に帰すべき事由によってCから所有権を取得できず、Bに所有権を移転できない場合、他人物売買であることを知っていたBはAに対して損害賠償を請求できない。

 Bが購入した土地の一部を第三者Dが所有していた場合、Bがそのことを知っていたとしても、BはAに対して代金減額請求をすることができる。

 Bが敷地賃借権付建物をAから購入したところ、敷地の欠陥により擁壁に亀裂が生じて建物に危険が生じた場合、Bは敷地の欠陥を知らなかったとしても、Aに対し建物売主の瑕疵担保責任を追及することはできない。

(平成16年 問10)



[解説&正解]

 正しい  [瑕疵担保責任──買主の悪意]*570条、566条、最判昭41.4.14
売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、売主は、買主に対して瑕疵担保責任を負うが、瑕疵には、物質的な瑕疵だけでなく、法律的な瑕疵・制限も含む。
「都市計画法上の制約により当該土地に住宅を建築することができない」という法律上の利用制限という瑕疵を、買主Bが知っていたときは、もはや隠れた瑕疵とはいえないから、売主に瑕疵担保責任を追及することはできない。
瑕疵担保責任は、買主が「善意のときに限り」追及できる。


 誤り   [担保責任と債務不履行責任]*561条、最判昭41.9.8
他人の権利を目的とした売買で、売主の「責に帰すべき事由」によって履行不能となった場合には、悪意の買主は、売主の担保責任としての損害賠償請求ができないときでも、債務不履行を理由に契約を解除し損害賠償を請求することができる。


 正しい  [権利の一部が他人に属する場合]*563条1項
土地の一部を第三者Dが所有していた場合、買主Bがそのことを「知っていた」悪意であっても、売主Aに対して代金減額請求をすることができる。
代金減額請求は、買主の善意・悪意にかかわらず認められている。


 正しい  [瑕疵担保責任]*570条、最判平3.4.2
敷地賃借権付「建物」の買主Bは、「敷地の欠陥」を知らなかったとしても、売主Aに対し「建物」売主としての瑕疵担保責任を追及することはできない。
最高裁は、敷地賃借権付建物の売買について、「建物とともに売買の目的とされたものは、建物の敷地そのものではなく敷地賃借権であり、敷地の欠陥については、賃貸人が修繕義務を負担すべきである」として、敷地の欠陥は、建物の隠れた瑕疵ではないとした。
瑕疵の有無は、契約の目的である物(建物)自体について判断される。

[正解] 2


■しっかり読んでおきたい重要条文
*570条(売主の瑕疵担保責任)
売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。
*566条(地上権等がある場合等における売主の担保責任)
1 売買の目的物に瑕疵がある場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。
3 契約の解除または損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から1年以内にしなければならない。
*563条(権利の一部が他人に属する場合の売主の担保責任)
1 売買の目的である権利の一部が他人に属することにより、売主がこれを買主に移転することができないときは、買主は、その不足する部分の割合に応じて代金の減額を請求することができる。

■ワンランク・アップ  [買主の解除権]
 買主が善意・悪意に関係なく、契約を解除できるのは、次の2つ。
① 権利の全部が他人に属する場合
② 抵当権行使により所有権を失った場合
 買主が善意のときだけ、契約を解除できるのは、次の4つ。
① 権利の一部が他人に属する場合で、残存部分のみでは買わなかったとき
② 数量不足・一部滅失の場合で、残存部分のみでは買わなかったとき
③ 地上権等の制限がある場合で、目的達成できないとき
④ 隠れた瑕疵がある場合で、目的達成できないとき



(この項終わり)