公開日 2017.5.14|最終更新日 2017.12.09



宅建民法の勉強法について──民法の勉強がはじめてという宅建試験初心者の人、民法が苦手で毎年合格点がとれない人、そもそもどんな勉強をしたらいいか分からない人、独学で試験勉強をしている人、そういった人たちが、民法の正しい勉強法・ポイントを身につけて、1回で宅建試験に合格できるように、ご参考になればと思います。

*だいぶ長い記事になっていますので、関心のある個所だけ目次をクリックしてお読みください。

1 民法は学習効率が悪い科目

宅建試験で出題される民法は、宅建業法や法令上の制限にくらべて、内容の点からも範囲の点からも、学習効率が最も悪い科目といえます。

それはどうしてでしょうか?
まずは現状からみておきましょう。

1 民法の出題数と合格点

宅建試験は、四肢択一式の筆記試験(2時間)50問出題されます。

50問の内訳は、次のようになっています。
① 権利関係  14問(民法、借地借家法ほか)
② 宅建業法  20問(主に宅建業法)
③ 法令制限  8問(都市計画法ほか)
④ その他分野 8問(税法、鑑定評価基準ほか)

①の権利関係は4科目で、その内訳は次のとおりです。
民 法    10問
・借地借家法   2問
・建物区分所有法 1問
・不動産登記法  1問

さて宅建試験は何点とれば合格できるのでしょうか

最近16年間の統計をみると、合格点は例年34点前後となっています。合格点36点は3回だけという事実からみて、36点とれば合格はほぼ間違いないでしょう。
なお、直近の平成29年(2017年)の合格点は、35点でした。
詳細は RETIO(不動産適正取引推進機構)の発表(PDF)をご覧ください。

では、民法は何点とる必要があるのでしょうか

たとえば、上記の②③④で8割得点できた場合(これも結構ハードルは高く相当の努力を要しますが……)28点ですから、これだけでは合格できませんね。
9割得点できたとしても32点ですから、やはりこれだけでは不合格です。②③④の合計36問で、たったの4問不正解しただけなのに、ほかの科目でさらに得点しなければ合格できないのですから、思いのほか厳しい試験です。

②③④を全問正解すれば36点(税法2問を含む)で、①権利関係4科目が0点でも合格できますが、現実的に考えて、
「85%の正解率」で30点(36問中不正解は6問)
「80%の正解率」で28点(36問中不正解は8問)あたりでしょう。

②③④で30点(85%の正解率)とれば、あと6点でほぼ合格です。

つまりは、民法10問中6点以上は確実に得点できるようにしなければなりません。(これに、不動産登記法や借地借家法などで1~2点加えれば合格はほぼ確実でしょう)。

民法はだれもが苦労する科目ですが、何とか10問中6点以上の得点をめざしたいものです。

効率の悪い民法こそが合否のカギをにぎっていることに留意しておきましょう。

2 民法は範囲が広く、論点が非常に多い

たとえば、試験範囲(条文数)と出題数をみると、
宅建業法は条文数(令・規則含む)が約100条で、出題数は20問
民法は条文数約1000条で、出題数は10問です。
・100条  20問
・1000条 10問

宅建業法と比較すると、民法は効率のよくない科目だということは納得ですね。単純に数字だけみても、20倍も効率が悪いですね。
宅建業法なんかは、勉強したテーマがほとんど出題されますので、とくに的を絞り込む必要もありません。

民法は、約1000条すべての条文を勉強するわけではないのですが、それでも範囲は広すぎるといわざるを得ません。

さて、平成1年から29年までの29年間、民法で出題された論点・テーマは、出題数により、A~Fの6グループに分類できます。
*選択肢の1肢として出題されたものは入れてませんので、実際の出題数は少しだけ多くなります。

Aクラス|20~23問
[代理][抵当権]

Bクラス|15~19問
[意思表示|虚偽表示・錯誤・詐欺]
[連帯債務・保証債務・連帯保証]
[売買][不法行為]

Cクラス|10~14問
[時効][物権変動][所有権|共有]
[契約解除][賃貸借][法定相続分・遺産分割]

Dクラス|5~9問
[制限行為能力][所有権|相隣関係]
[担保物権|混合][根抵当権][債務不履行]
[債権譲渡][弁済][請負][条文問題]
[相続の承認・放棄][遺言・遺留分]

【Eクラス|3~4問】
[停止条件][同時履行の抗弁権][相殺]
[危険負担][贈与][使用貸借][委任]
[相続|総合][親族関係]

【Fクラス|1~2問】
[占有権][地役権][留置権][先取特権]
[質権][金銭債権][債権者代位権]
[注意義務][詐害行為取消権][代物弁済]
[買戻し][組合契約][不当利得]
[契約終了事由][権利の取得・消滅]
[所有権の移転・取得][債権の発生原因]
[民法の指導原理]

A、B、Cクラスだけでも相当のボリュームですが、これにDクラスを加えると、民法1科目だけでかなりの時間・エネルギーを要することになり、10問という出題数から考えると最も学習効率のよくない科目といえます。

何といってもA、B、Cクラスは、いわば論点中の論点ですから、どうしても力を入れることになりますし、Dクラスも無視はできません。
それぞれの内容も深く、受験校でも市販テキストでも当然のように力を入れて解説している論点・テーマです。

このように出題テーマは、民法総則から相続編まで全範囲に及んでいます。範囲が広く、論点が非常に多い科目なのです。

3 論点が全部出題されるわけではない

これらの論点・テーマが毎年すべて出題されるわけではなく、新出問題も含めて10問です。今回、新出問題は、10問×4肢=40選択肢のうち、15肢(38%)もありました。

また、平成24年には代理が2問出たり、直近の平成29年では法定相続分関係が2問出たりと、偏って出題されることもありますから、油断も隙もあったものではありません。安易な出題予想は禁物です。

さて、平成29年の出題は次のようになっていました。

・Aクラス [代理][抵当権]
・Bクラス [売買][連帯債務]
・Cクラス [所有権|共有][法定相続分]
・Dクラス [条文問題][請負]
・Eクラス   出題なし
・Fクラス [所有権移転・取得][不動産質権]

範囲としては、幅広く出題されています。
内容レベルとしては、今回、A~Cクラスで出題された問題は、どれも拍子抜けするような初歩的・基本的な問題で、テキストだけでも普通に勉強していれば、らくらく5点は取れたでしょう。
合格者の大半は、7点以上正解できたはずです。

一方で、A~Cクラスの[意思表示|虚偽表示・錯誤・詐欺][時効][物権変動][契約の解除][賃貸借][不法行為]は出題されませんでした。
時効と強迫の初歩問題が[所有権|移転・取得]の中の1選択肢として出たくらいです。一生懸命勉強したのに、出ないテーマも結構あるんです。

4 100人受けて85人が不合格になる試験

先日、平成29年度(2017年)の合格発表がありましたが、合格率は15.6%でした(登録講習修了者は19.9%)。例年通りの合格率です。

宅建試験は、100人受けて85人が不合格になる試験です。

この現実を真剣に受け止めて、気を引き締めなければなりません。
合格体験記などでは、3ヵ月で合格したとか、民法は勉強せずにほかの科目で満点をとって合格したとか、そんな記事をたまに見かけますが、何か特別な環境にあったのかもしれません(民法は大学で勉強していたとか、実務で宅建業法は熟知していたとか……)

惑わされてはいけません。
大半の合格者はそんな戦略はとっていないはずです。
ちょっと勉強して合格できるような国家試験ではないことは、受験者であればみんな知っています。

民法は、基礎をマスターするだけでも時間がかかります。範囲が非常に広く、論点も多い科目ですから、6点といってもすぐにとれるものではありません。

まずは、テキストを1ページ1ページ、1行1行ていねいに学習するところからです。最初は時間がかかりますが、この地道な取り組みが合格への第一歩です。
過去問練習はそれからです。
何もわからない時点で、いくら過去問練習をやっても時間のムダです。

「民法」に関していえば、初心者の人は早めに勉強を開始する必要があります。効率が悪い科目だからこそです。遅く始めて利益になることはありません。
初心者の人が、5月のゴールデンウィーク頃から民法を始めて、果たしてマスターできるのでしょうか? 疑問です。

人それぞれの環境がありますので一概には言えませんが、遅くとも3月頃から始めることをお勧めします。
勉強期間は十分に確保するようにしてください。

2 民法に強くなる唯一の勉強法

そんな勉強法があるのでしょうか?

1 暗記では歯が立たない事例問題

民法の試験問題は、ほとんどが事例問題です。

たとえば「Aが甲土地をBに売却する前にCにも売却していた場合、Cは所有権移転登記を備えていなくても、Bに対して甲土地の所有権を主張することが……」というように、具体的な事例で出題されます。

10問のうち、70%前後が「過去問に類似した問題」ですが、必ず別の表現・異なった記述・違った角度から出題されるため、原理・原則や場合分けなどをそのまま丸暗記していてもなかなか応用が利きません。
暗記が必要な部分ももちろんありますが、暗記で乗り切れる科目ではありません。


多くの受験者が民法に強くなれないのは、暗記の勉強に傾いているからです。テキストの記述・説明を全部覚えようとするからです。こうした勉強をいくら続けても、基礎力・応用力は絶対につきません。

原因は、論理的な思考方法にあります。
民法は論理的な法律ですから、論理的な思考を身につけないと民法には強くなれません。
ただ幸いにも、宅建試験の民法は、司法試験や国家公務員試験(一種)などと比べて、それほど高度な論理性を求められているわけではありませんから、決して難しい科目ではないのです。


さて、市販のテキスト類には「民法をマスターするには、制度趣旨や理由を考えながら読むことが重要で、なぜこうなるのかと考えながら勉強することで法的思考力・論理的思考力が養われていきます」などと書かれています。
なんだか難しそうですね。こうした指摘は間違ってはいないのですが、ちょっと具体性に欠けていますね。


ここではひとつの手がかりとして、民法の専門書から探ってみましょう。民法の勉強がはじめてという人には難しいかもしれませんが、民法の講義をしているわけではありませんので、ザーッと目を通すだけで十分です。

代理における自己契約と双方代理に関する説明をとりあげましょう。
専門書にはこう書いてあります。

「同一の法律行為について、当事者の一方が相手方の代理人となることを自己契約といい、また、同一人が同一の法律行為について、当事者双方の代理人となることを双方代理という。
自己契約・双方代理は、原則として禁止される(108条本文)。事実上、代理人が自分ひとりで契約することになって、本人(当事者の一方)の利益が不当に害されるおそれがあるからである。したがって、そのようなおそれがない場合には、禁止する必要はなく、除外してよい。
(a)民法は、債務の履行を除外例としてあげる(108条ただし書き)。弁済期の到来した代金の支払いなどがそれにあたる。しかし、弁済期未到来の債務、争いのある債務、時効にかかった債務などの履行は、右にいう債務の履行にあたらない。本人に不利益をおよぼすおそれがあるからである。
(b)……」(『民法(1)総則 有斐閣双書』)

どうでしょうか、サラッと読んだだけではどこが重要な個所なのか、最初はなかなか分かりませんね。みんな重要個所のように思えて、全部にマーカーしてしまうかもしれませんね。
どこもかしこも暗記するのは骨が折れますよね。

「制度趣旨や理由を考えながら読む」ってどうすればいいんですかね。もちろん、あなたが読まれる宅建試験用のテキストは、もっとやさしい表現で書かれていますが、読み方の基本的なポイントは同じです。

どのような読み方をすれば、無理なく「論理的思考力」が身について、民法に強くなれるのでしょうか。

■改正民法108条1項では「自己契約、双方代理は、代理権を有しない者がした行為とみなす」と改正されていますが、これは従来の判例の見解を明文化したもので、現行民法と改正民法とで結論に差異が生じることはありません。

2 「ので、から説」───今日から使える勉強法

民法に強くなる唯一の勉強法は、「ので、から説」を使って勉強することです。議論の余地はありません。
これこそ、論理的思考力を身につける唯一・最適の方法です。しかも、超簡単です。

「ので、から説」というのは、「~~ので、……である」「~~だから、……である」「~~のために、……である」などの記述から「趣旨・理由」を理解していく勉強法をいいます。
論理的思考力は、この「趣旨・理由」を理解していくことで身についてきます。

つまり、次のような記述に注意するのです。

~~ので、……である。」
~~だから、……である。」
~~のため、……である。」
~~。したがって……である。」
~~である以上、……である。」
「……である。なぜなら~~だからである。」
思うに、~~だからである。」

テキストの記述に、
~~ので」とか、
~~だから
~~のため
~~。したがって
などの「~~(ニョロニョロ)」の個所があれば、この部分こそが、まさに「趣旨・理由」を説明した記述であって、最も重要な個所なのです。

「趣旨・理由」についての説明は、必ず「~ので」「~だから」「~のため」などの表現になりますから、ここをじっくり読み込んで趣旨や理由を理解していきます。

「趣旨・理由」を説明する記述には、ほかにも「~~である以上」「なぜなら、~~だからである」「~~のゆえんは」「けだし(思うに)~~」など、いろいろな表現がありますが、これらを代表してので、から説といいます。

それでは、先ほどの専門書で「ので、から」を確認してみましょう。

「同一の法律行為について、当事者の一方が相手方の代理人となることを自己契約といい、また、同一人が同一の法律行為について、当事者双方の代理人となることを双方代理という。
自己契約・双方代理は、原則として禁止される(108条本文)。事実上、代理人が自分ひとりで契約することになって、本人(当事者の一方)の利益が不当に害されるおそれがあるからである。したがって、そのようなおそれがない場合には、禁止する必要はなく、除外してよい。
(a)民法は、債務の履行を除外例としてあげる(108条ただし書き)。弁済期の到来した代金の支払いなどがそれにあたる。しかし、弁済期未到来の債務、争いのある債務、時効にかかった債務などの履行は、右にいう債務の履行にあたらない。本人に不利益をおよぼすおそれがあるからである。」

お分かりでしょうか。

どうして、自己契約・双方代理が禁止されるのか。
例外は何か、それはどうしてか。

「ので、から」の個所にチャンと説明してありますので、そこをよく読んで理解するようにするのです。
「理解する」というのは、「納得する」ということです。「なるほど、 そういうことか!」とわかれば、しめたものです。民法理解は、この積み重ねです。

趣旨・理由が納得できれば、ムリに暗記しなくても、自然とその結論も記憶することができます。意識しなくてもいいのです。「ので、から説」を使っていれば「論理的思考力」は自然と上達していきます。

むつかしく考えることはありません。要するに、
「ので、から」に注意しながら読んでいく、というだけのことです。

「ココが重要だろう」と当て推量でテキストを読んでいては、永遠に民法をマスターすることはできません。

「ので、から説」──これこそ民法に強くなる唯一の勉強法です。
「ので、から説」──超簡単です。

もう民法の勉強法で悩むことはありません。

キーワードは「ので、から」

3 判例も「ので、から説」を使っている──効果は実証済み

「ので、から説」が法律の現場でどのように使われているか、論より証拠、最高裁判所の判例を少しばかり確認してみましょう。

判決文は読みづらいものですが、ここでは「ので、から説」で判旨が理論構成されていることを確認するだけですから、ザーッと目を通すだけで十分です。

下線部分が「ので、から説」で趣旨・理由を説明している記述、赤字部分が結論を示している記述です。

■最判昭44.5.27■
論点[虚偽の意思表示をした者は、登記のない善意の第三者に対して不動産所有権を対抗できるか]
(判決要旨)
民法94条が、その一項において相手方と通じてした虚偽の意思表示を無効としながら、その二項において右無効をもって善意の第三者に対抗することができない旨規定しているゆえんは、外形を信頼した者の権利を保護し、もって、取引の安全をはかることにあるから、この目的のためにかような外形を作り出した仮装行為者自身が、一般の取引における当事者に比して不利益を被ることのあるのは、当然の結果といわなければならない
したがって、……善意の第三者がその外形を信頼して取引関係に入った場合においては、その取引から生ずる物権変動について、登記が第三者に対する対抗要件とされているときでも、仮装行為者としては、右第三者の登記の欠缺を主張して、物権変動の効果を否定することはできないものと解すべきである。


■最判昭40.9.10■
論点[要素の錯誤による意思表示の無効を第三者が主張できるか]
(判決要旨)
民法95条の律意は、瑕疵ある意思表示をした当事者を保護しようとするにあるから、表意者自身において、その意思表示に何らの瑕疵も認めず、錯誤を理由として意思表示の無効を主張する意思がないにもかかわらず、第三者において錯誤に基づく意思表示の無効を主張することは、原則として許されないと解すべきである。


■最判平5.1.21■
論点[無権代理人が本人を共同相続した場合における無権代理行為の効力]
(判決要旨)
無権代理人が本人を他の相続人と共に共同相続した場合において、無権代理行為を追認する権利は、その性質上相続人全員に不可分的に帰属するところ、無権代理行為の追認は、本人に対して効力を生じていなかった法律行為を本人に対する関係において有効なものにするという効果を生じさせるものであるから共同相続人全員が共同してこれを行使しない限り、無権代理行為が有効となるものではないと解すべきである。


■最判平16.4.20■
論点[共同相続人の1人がその相続分を超えて債権を行使した場合、他の共同相続人は不法行為に基づく損害賠償請求ができるか]
(判決要旨)
共同相続人の1人が、相続財産中の可分債権につき、法律上の権限なく自己の債権となった分以外の債権を行使した場合には、当該権利行使は、当該債権を取得した他の共同相続人の財産に対する侵害となるから、その侵害を受けた共同相続人は、その侵害をした共同相続人に対して不法行為に基づく損害賠償又は不当利得の返還を求めることができるものというべきである。


■最判昭40.11.24■
論点[解約手付が授受された売買契約の履行に着手した当事者からの解除]
(判決要旨)
解約手付の交付があった場合には、特別の規定がなければ、当事者双方は、履行のあるまでは自由に契約を解除する権利を有しているものと解すべきである。
しかるに、当事者の一方が既に履行に着手したときは、その当事者は、履行の着手に必要な費用を支出しただけでなく、契約の履行に多くの期待を寄せていたわけであるから、もしかような段階において、相手方から契約が解除されたならば、履行に着手した当事者は不測の損害をこうむることとなる。したがって、かような履行に着手した当事者が不測の損害をこうむることを防止するためとくに民法557条1項の規定が設けられたものと解するのが相当である。

以上、ほんの一例にすぎませんが、「ので、から説」で理由づけがされていることがお分かりでしょう。

「ので、から説」──法曹界で日常的に使われている最も信頼できる方法です。

■平成20年から29年までの10年間、判決文問題が1問出題されていますので、ついでながら判決文問題もみておきましょう。出題されたばかりの共有に関するホヤホヤの問題です(選択肢は省略)

【平成29年 問3】
「次の1から4までの記述のうち、民法の規定及び下記判決文によれば、誤っているものはどれか。
(判決文)
共有者の一部の者から共有者の協議に基づかないで共有物を占有使用することを承認された第三者は、その者の占有使用を承認しなかった共有者に対して共有物を排他的に占有する権原を主張することはできないが、現にする占有がこれを承認した共有者の持分に基づくものと認められる限度で共有物を占有使用する権原を有するので、第三者の占有使用を承認しなかった共有者は右第三者に対して当然には共有物の明渡しを請求することはできないと解するのが相当である。」

「ので、から説」に慣れてくれば、この判決文問題を読み解くことも難しくはないはずです。

3 民法で勉強するのは、条文

民法を勉強するということは、条文を勉強するということです。勉強の対象は、条文です。
条文を抜きにして、民法の勉強はありえません。
民法の専門書は、すべて「条文の解説書」です。
そして、宅建用民法のテキストも、要するに「条文の解説書」なのです。

しかし、条文を勉強するということは、条文を暗記するということではありません

条文を勉強するというのは、条文が規定された制度趣旨や理由を勉強するということです。
条文は、制度趣旨や理由があって定められていますから、そもそもこれを理解しないと条文、ひいては民法を本当に理解することはできないのです。

ところが条文には、制度趣旨や理由は一切書かれていません。結論だけです

しかしこれでは、国民のみなさんは条文を正確に理解できず、実際の運用に混乱が生じますから、明治から平成の今日まで、民法学者が概説書・解説書で、条文制定の背景や制度趣旨・理由についてくわしく解説してきているわけです。

法律つまり条文は、国家・経済活動・市民生活を支える根本ですから、近代国家建設の初期に多くの法律学校が真っ先に設立されました。現在の有名大学の前身は、多くはこの「法律学校」です。


さて、宅建民法の試験問題は、ほとんどが「民法の規定及び判例によれば、正しい(誤っている)ものはどれか」というふうに出題されます。

民法の規定、つまり条文の正確な知識と解釈をチェックするのが出題の意図ですから、条文を軽視する勉強は不利です。

当ブログ[宅建 民法過去問黙示録]が、さまざまな個所で「条文」を掲載しているのもこのためです。読者の方に少しでも条文に触れてほしいからです。勉強しながらいちいち条文を調べるのは、結構面倒な作業ですからね。

もちろん、「判例」も勉強しなければならないのですが、条文の解説には、必然的に重要な判例にも言及されていますので、「宅建民法」に関しては、その限度で勉強すればいいでしょう。
重要判決の要旨だけをまとめて勉強するのもアリですが、くれぐれも深入りは禁物です。

さて、民法の専門書は、条文が規定されるに至った制度趣旨をはじめ、条文を構成している「原則と例外」「要件と効果」「本人と第三者の権利関係」の3つの要素について解説しています。ほとんどの条文は、この3つの要素で構成されているからです。

そして宅建試験は、この3要素を理解しているかどうかを「事例形式」できいてくるのです。

1 原則と例外を理解する

条文の大半は「原則と例外」で定められていますから、これを理解することが最初の作業となります。この原則と例外を「ので、から説」を使って理解していきます。

9条をみてみましょう。
「成年被後見人の法律行為」についてこう書いてあります。
*成年被後見人というのは、認知症などにより判断能力が欠けている人をいいます。

「成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。
ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。」

原則は、「成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる」ということです。
例外は、「日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない(=取り消すことはできない)」ということです。「ただし」と書いてあったら「例外」という意味ですから。

このように「原則の場合」「例外とされる場合」の場合分けをしながら理解することが、条文理解の基本です。


先ほども言いましたが、このように条文には原則や例外の「結論」だけ書いてあって、どうしてそうなのかという「制度趣旨」とか「理由」は一切書かれていませんね。結論だけなんです。

どうして成年被後見人の法律行為は「取り消すことができるのか」、どうして「日用品の購入など」は取り消せないのか、という「理由」は説明されていないのです。ほかの条文もすべて同じです。

これらを解明しているのがテキストです。
テキストには必ず原則の「理由」、例外の「理由」が説明してありますから、これらを「ので、から説」でおさえていきます。

もう1つあげておきましょう。
今回の試験にも出た条文です。

民法104条では「任意代理人による復代理人の選任」についてこう書いてあります。

「委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。」

原則は、「委任による代理人は、……復代理人を選任することができない」
例外は、「本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるとき」です。

委任による代理人(任意代理人)は、「原則として」復代理人を選任することができないが、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときには、「例外的に」復代理人を選任することができるという規定です。

原則として、任意代理人が復代理人を選任できないのには「理由」があり、例外的に、復代理人を選任できる場合にも「理由」があるのです。
これらの理由を「ので、から」で解明します。

簡単です。先ほども言いましたように、
「ので、から」に注意しながら読んでいく、というだけのことです。

2 要件と効果を理解する

「要件と効果」も条文の核心で、「原則と例外」と密接に関係しています。というのも、多くの場合、原則と例外は、要件と効果で構成されているからです。
大体のイメージはこんな感じです。

[原則]=[要件]+[効果]
[例外]=[要件]+[効果]

先ほどの9条をみてみましょう。
「成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。
ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。」

「原則」の「要件」は、「成年被後見人の法律行為」であることです。未成年者でも、被保佐人でもないのです。
そして、その「効果」は「取り消すことができる」ということです。「無効」となるのではなく「取消し」なのです。

「例外」とされるための「要件」は、「日用品の購入その他日常生活に関する行為」であることです。いいかえれば、建物や土地を買う行為は、この要件には該当しないわけです。
「例外」とされる場合の「効果」は、「取り消すことはできない」ということです。

大変シンプルな条文ですが、仕組みはお分かりでしょうか。それほどむつかしいものではありませんね。

どんな「要件」のときに、どんな「効果」が与えられるのか。こうした「要件と効果」を正確に理解していないと、試験問題に正解することはできません。

3 本人と第三者の権利関係を理解する

これも条文の核心です。
というのも、法律関係とか契約では、[本人と第三者の権利関係]がもっとも問題となり、そして、本人と第三者は常に対立するからです。

たとえば「Aが、その所有地をBに売却し、Bがさらにその土地をCに売却した」という場合では、Aを「本人」、Bを「相手方」、Cを「第三者」といい、図のような流れになります。

本人と第三者
宅建試験で出題されるのは、とくに「本人」Aと「第三者」Cの権利関係です。民法では、本人と第三者の扱いがまったく異なっていますから、この点を常に意識して知識を整理しておく必要があります。

たとえば、相手にだまされて契約した場合について、96条にはこうあります(2項は略)。

「1 詐欺による意思表示は、取り消すことができる。
 3 詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。」

だまされて契約したときは、「本人」はその契約を取り消すことができるけれども、「善意の第三者」に対しては、取り消したんだからもともとの権利は自分にあるとは言えないよ、というわけです。

「本人」を保護すべきか、「第三者」を保護すべきかという場合、もし本人の権利を犠牲にしてまで「第三者」を保護するとしたら、その要件は何か。宅建試験では、ここをきいてきます。

第三者が保護されるための「要件」は、必ずしも一様ではありません。
過失がある場合には保護されないとか、過失があってもいいとか、重過失はダメだとか、登記がなければ保護されないとか、登記がなくても保護されるとか、いろいろです。これらを十分に意識することが大切です。

以上、条文を理解するポイントをあげました。

① 原則は何か、その例外は何か
② それぞれの要件とその効果は何か
③ 本人と第三者の関係はどうなっているのか

「ので、から」に注意して、この3点を勉強してください。

4 過去問レベルの勉強を

こうしてみてくると、なかなか手強い民法ですが、果たして「どんなレベル」の勉強をすればいいのでしょうか?
宅建民法は、民法学の勉強ではありませんから、条文の解釈や判例について細かくやる必要はありません。やるだけ時間とエネルギーのムダです。

ズバリ、過去問のレベルです。
実際に出題された過去問レベルの勉強をすればいいのです。基礎知識から応用まで、範囲においても、内容の深さにおいても、過去問が最適の見本です。

「ので、から説」を武器に、過去問レベルの勉強をしていってください。

過去問練習の有効性は、いまさらここで強調するまでもないでしょう。
過去問は最良のテキスト 

■おまけ ── 図を書く

テキストを読むとき、問題練習をするときに、「A、B、C」が登場する事例が出てきたら、必ず用紙に「A→B→C」と関係図を書く習慣をつけるようにしてください。
事実関係を正確に理解して、正解するためです。

頭ん中だけでイメージしてテキストを読んだりしていては、正解できません。
賃貸人A、賃借人B、転借人C、Aの債権者Dなどとオールキャストが登場すると、図を書かないことには完全にお手上げです。

本試験の2時間という「限られた時間」では、簡単な事例問題であっても、最初に問題を解く際も、後から見直し作業をする際も、図がないと、ちょっとしたパニックになります。

本試験のときは、問題用紙の余白(常にタップリあるわけではありません)に書いて解くことになりますので、小さなスペースでも書けるように、今から慣れておきましょう。

A、B、Cの立場や権利の流れなどが一目してわかりさえすればいいのですから、自分流の図でかまいません。


1回で合格する決意で取り組んでください。
もう1回勉強するのは、時間とエネルギーの浪費です。
ご健闘を祈ります。


(この項終わり)